女子会
♪シャンシャンシャン、シャンシャンシャン♪
♪ジングルベール、ジングルベール、鈴が鳴る♪
12月24日、冬休み前の授業の最終日。午前中に冬休みの指導と一月の予定を体育館で聞いた後解散となったので、僕と由香、森川さん、布施さんは柳ヶ橋商店街に繰り出している。今年一年、仲良くさせてもらってありがとうの意味を込めて、みんなで忘年会&クリスマス会を兼ねた親睦会?女子会?を開こうという話になっていてだね。
「うほあ!リア充だらけだwww何このまっかっかなパラダイスwww」
「ねーねー!あっちにもも焼き売ってる、食べたい!ちょっと見て、あんなところに射的が!やりたい!!」
「ちょっとふーちゃん落ち着いて!!イベントは逃げないから!!」
さすが県庁所在地すぐ横にある一大商店街だけあるなあ、アーケードの上はド派手なリボンが所狭しとひしめき合っていて、なんていうんだろ、お祭り騒ぎ感とクリスマスのはっちゃけたオーラ?が入り乱れて、お洒落というよりもやりすぎてお笑いに走っている気がしないでもない。空き店舗の前には箱を持ったリアリティあふれるサンタクロースの等身大オブジェが並んでいて、絶妙にホラー感を感じるぞ…誰だ、この企画をしたのは。チビッ子が怖がって泣いてるじゃないか、みんながウキウキのクリスマスイブに、なんというひどいことをするんだ。
通常の商店街のお店のほかに、出店などもぽつぽつ並んでおり、非常に楽しめる空間が…これ、どこまで続いてるんだ?!ここのアーケードは結構長いからなあ、端っこまで真っ赤で、イベントの端が確認できないぞ……。全部回ってたら夜になっちゃいそうだ。
「どういう順番で攻める?もうじき11時だね、まずは腹ごしらえをしないかい。食べながら計画を練ろうよ。」
「そうだね、この…イベ…ひっ、イベント、ま、マップ貰ってって、チェックしながら考えよっか。」
怪しげなサンタが手に持っている、クリスマスフェアーのチラシを一枚取った由香…びくっとなったの、思いっきり見ちゃったぞ。大概怖がりだからなあ、マネキンと目が合って驚いたに違いない。
「由香。こっちにおいで?…怖かったね、よし、よし……。」
チラシを手に、目が泳いでいるこわがりさんをそっと抱き寄せ、ポン、ポンと頭を軽くタッチしてから、顔をのぞき込む。…目元がほのかにピンク色…あれ、どんどんほっぺが赤くなっていくぞ。
「あ、ありがと…。」
よほど怖かったらしい。いつもならすぐに「もう!」が飛んでくるところなんだけど、おとなしくこちらを見上げているじゃないか。
「ああもー、熱くていいですね!!ハイハイ、カイロいらず!!!あー寒い寒い、ホント独り身は寒いわー!!!」
「石橋君ね、あたしらもいること忘れんなよwww」
「ああ、じゃあ、抱きしめようか?はい、ぎゅー!ぎゅー!」
呆れかえっている森川さんと布施さんを交互に抱きしめる。森川さんはふくふくしていて、布施さんが筋肉質でがっつりしているな、へえ、女子でもずいぶん抱き心地が違うんだなあ、由香はふわふわしてるし……。
「ちょwwwあたしらはいいからwww」
「いつもユカユカはこんな感じなのね…なるほど、これは照れる、うん、照れる!!」
「もう!!!タラシてないで、ケーキバイキングに行くよ?!」
しまったなあ、しおらしい由香なんて久しぶりだったのに、もっとゆっくり堪能しとけばよかった。
「ねね、このスペシャルショートみて♡ここのところが猫になってるの、かわいい!」
「うほあー!!何このパラダイス!!初めて来たけどいいなwwwねえねえ、また絶対来たい!うほー!全種類食おwww」
「ねえねえ、パスタもあるよ、粉チーズたっぷりかけよ!!!」
「み、みんなちょっとは落ち着いたらどうなんだい……。」
クリスマススペシャルメニューの並ぶ由香おすすめのスイーツバイキングのお店は、11:00がオープンらしく、まだお客さんがまばらな状態で入店することができた。誰にも荒らされていない、美しい状態のケーキコーナーを見て、スイーツ好きの由香の目の色が変わったのを、僕はしかと見た。前にここに由香と来たときはさ、絶妙に荒らされててちょっと残念な感じだったんだよね。あの時はスペシャルメニューもなかったし。まあ、テンションが上がるのは、わからないでもない。
僕はまずコーヒーを持ってきて、お皿にスペシャルショートケーキを乗せてきて様子見、かな?とても全種類を攻略するのは無理だからなあ、厳選しておいしいものを食べたい。みんなの表情を見て持ってくるものを選ぼう。
「じゃあ、まず今年一年お疲れ様でしたー、メリークリスマース!来年もよろしくねー!カンパーイ!!」
「「「カンパーイ」」」
布施さんの音頭でクリスマス会?忘年会?新年会?よくわかんないな、まあとにかくパーティーが始まった。
「ヒャア♡このクリーム、むっちゃ美味しい♡食べた事ないよぅ、こんなコクのあるクリーム!」
「ホントだ!めっちゃうめー!!!すげえなケーキバイキング!もぐもぐ、このバスチーうますぐる、神じゃね??」
「・・・!!・・・・・・!!!」
由香は相変わらずかわいい食べ方だな、森川さんが意外とワイルドでびっくりだ、布施さんに至ってはものも言わずにパスタに夢中じゃないか、なんだ、この…おなかいっぱいな感じは。僕は優雅に…ケーキの端っこにフォークを入れて、一口。…ムム、これはおいしい!!!……あとでもう一つ貰ってこよう。
「いやー、あたしさ、この大学入ってよかったわwwwこんな美味いもんも食えるし、甘々ラブラブ間近で見えるし、強い女にノックアウトだし、なんか、ホントみんなありがとwww」
「モーリー何言ってんの!私こそ、いつもいろいろと助けてもらって!!腹が減って倒れそうになった時に差し出してくれたマドレーヌ、一生あの味は忘れないからね?次の試合後もよろしく♡」
「ラブラブ?!してるつもりはないけど、その!!いろいろと私も、ありがと…、来年もよろしくね?!」
「僕はもう少し積極的に行きたいんだけどなあ…、来年はもうちょっと頑張らないとね。」
「ちょwww堂々宣言かよwwwいいぞもっとやれwww」
「カナキュンが野獣化するの?!めっちゃ見たい!ユカユカも大変だねえ……。」
「は、ハイっ?!彼方何言ってるの?!すぐそういうことをっ!!!」
うーん、みんな赤くなってはいるものの、フォークを持つ手とモグモグしてるお口は止まらないという訳か。食欲って言うのは、本当に…罪深いな……。まあ、僕は女の子はちょっとくらいぷくぷくしてた方が断然かわいいと思うタイプなんだけどね。東浦先輩くらいになるとちょっと戸惑っちゃうけど。…いや、あれはあれでかなりかわいいとは思う、ただ、ものすごい爆食がこう、かわいさを蹴散らしているというかなんというか……。素直ににっこり笑っていたら、おおよその女子はみんな……。
「うん…女の子は、みんなかわいいよね……。」
しみじみ僕がつぶやくと…あれ、なんでみんなのフォークが止まっているんだ。
「ひい―!!!天然のジゴロ、スケコマシってこういう奴じゃないのwwwすげえよ、こわいよ、恐ろしいよ……!!!」
「そのイケメン面でそういうこと言うのやめた方がいい!!カナキュンね、もっと自分の顔の良さ自覚した方がマジいいよ?!」
「あ、あの、私ケーキの追加とってこよっかな?!」
お皿が空っぽになった由香が席を立ってしまった。…もっとゆっくりおしゃべりを楽しめばいいのに、おなか空いてるのかな。
「…あのさあ、すごく核心に迫ること聞いていい?」
「うん?何?」
なんか布施さんが体を乗り出してきたぞ。コーヒーを一口飲みながら、質問を…待つ。
「その、カナキュンはさ、恋愛対象は、そのー、女子なの、男子なの、いったい、どっち?」
「ああ、前に…由香にも聞かれたんだけど、僕恋をしたことがなくってさ。よくわからないんだよ。」
入学したての時に見た、少しぎこちない由香の顔を思い出す。あの頃はまだお化粧もちょっぴり背伸びをしていて、初々しさがあってかわいかったんだよね。今はなんていうか、落ち着いているというか、自分の魅力を最大限に前に出せるメイクができるようになったというか。
「あたしゃ偏見はないんで、好きなようにやっちくりwww」
「私もないけどさあ、どこまで応援していいのかわかんなくて!!」
「まあ…見守っていていただけたら?僕はわりとヘタレだからさ、由香にフラれたらけっこう落ち込むと思うんだよね…。その時は、慰めてね?」
「わ、わかった!!がんばって?!」
「りょwww」
「ねえねえ!店員さんがね、余ったフルーツカクテルくれたよ♡四つ貰ってきた…って、何?なんでみんな私の顔見てる?!なにその笑顔ッ?!」
ふふ…めちゃめちゃいい笑顔で、トレイの上に四つグラスを乗せて帰ってきた由香……。まだ出てきていないスイーツをもらえたら、ご機嫌なんだな。戸惑う表情もまた……。
「うん、由香のかわいさに……、みんな、メロメロってことさ。」
「うんwwwメロメロwww」
「うん、メロメロ!」
「ちょっ…、なに!?ど、どうしたの?!」
隣の席に座った、ふわふわの頭をポンとひと撫でして、立ち上がる。
「僕もケーキのおかわりもらって来ようかな?」
「あ、私も行く!今ね、クレームブリュレも出てきたんだよ♡」
座ってすぐにまた立ち上がるとか、ふふ…、ここでまたかわいいとか言ったら、しつこいって言われちゃいそうだ。黙っておこう。
「じゃあ、由香のオススメ教えてよ。僕は今日、ケーキは3つしか食べないつもりだから、もし外したら……、お仕置き、だよ?」
「ええ!?なにそれ!?もう、すぐにそういう事言うんだから!」
プンプンしながらも、やけに表情はにこやかだ。スイーツの力、恐れ入るな……。
僕は、森川さんと布施さんのあたたかーい視線を感じながら、由香と並んでケーキの並ぶオープンショーケースへと向かったのだった。




