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…窓際には、君が  作者: たかさば


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幼馴染み

 水曜日の朝。


 ゴムグラウンドをぐるっと一周ランニングした後、いつものようにベンチに座ろうとした僕と由香だったけれども、11月半ばということもあってか身体を底冷えさせるような冷たい風が吹いてきたため…、早々に二限目の建築学の授業が行われる教室に向かうことにした。


 先週、自宅の間取り図を書いてくるという宿題を出されたので、提出前に見せ合おうという話になってさ。


 ……由香の家には行ったことがないから、正直かなり興味はある。おばあちゃんの家なら布施さんや森川さんと一緒にお邪魔したことがあるんだけどね。


「リビング、めちゃめちゃ広いね…20畳?!すごいな、スタイリッシュで…動線もちゃんと確保してあって、すごく住みやすそう。……知らなかったよ、由香って良いところのお嬢様だったんだね…」


 A3サイズの方眼紙に、丁寧に几帳面に描き込まれた間取り図を見て…思わず感嘆の声が出る。

 すごいな、こんなに細かく小物とかも描き込むとは。マズいぞ、僕…本当に間取りしか、線しか書いてない!!……追加で何か書き足した方がよさそうだ。由香の図面を見て、参考にさせていただこう。


 3LDKで、ガレージがあって、ウッドデッキがあって…、二階建ての一般的なお宅?

 ずいぶん大きなテレビが…、床下暖房完備…、大きな花壇…、いや、少し、ずいぶん、かなり……高級住宅っぽいぞ。


「違うよ?!ごく普通の家だから!!うちは皆がリビングで過ごすから大きめに作ってあるだけで、個人の部屋は6畳だし、お風呂も小さいし…彼方のおうちの方が大きいじゃない!!」


 ……そう言えば、夏にホテルに向かう途中で僕の家に寄った時に、大きいとか広いとか言っていたような気もする。雑草の伸びた庭にお隣のニワトリが二羽やってきて、森川さんや布施さんも一緒になって大笑いして…あれはかなり愉快だった。


「うちは田舎だし、古い家だし、長兄も次兄もいるし、今はいないけど昔は祖父や祖母も住んでたし、無駄に広いだけなんだよ。空いてる部屋が多いからね、掃除が大変で大変で」


 土間もあるから管理や手入れがかなり負担になってて、いずれ建て替えようという話が出ているけど…つぶすにも相当お金がかかるとかで、家族のだれもが見てみぬふりをしている状態だったりするんだ。曽祖父がかなりお金と時間をかけて建てた家らしくて、長持ちするように作ってあるから容易に壊せないようになっているみたいなんだよね…。地元の大工がさじを投げた、わりと厄介な物件だったり。


「そっかあ…井戸付きだし、いざという時にすごく役立ちそうだけど、維持が大変になっちゃうんだね…。でも、古民家とか好きな人にはたまらないおうちだよね、宮崎先生すごく好きそう」


 建築学の宮崎先生は、日本家屋の研究が専門なんだ。なんでも、大都会のど真ん中にお気に入りの古民家をわんさか集めてテーマパーク化したいらしく、保存や移築、建築などなど、並々ならぬご情熱を傾けているという。

 地味にこの宿題を通じて実家に興味を持っていただいて、どうにか引き取ってはもらえないかと願ってしまう自分がいる。


「好ましく思ってくれればありがたいけどね、住むとなると問題が多いよ。地味にベランダとかが無いから、布団を干すのも大変だし。窓を開けっぱなしにすると、夏なんかは蝉が飛び込んできてうるさいんだ。……いいなあ、由香の部屋にはベランダが…って、こんな大きなテラスが付いてるの?!」

 

 一般的なベランダやテラスというのがよくわからないけど、たぶん部屋と同じくらいのサイズというのは…規格外なのでは?森川さんのアパートにもベランダが付いているけど、せいぜい一畳くらいの大きさしかないし。よく見ると水道もついている…、植木鉢がいっぱい並んでいるみたいだから、水やり用なんだろうか。


「昔在宅で仕事をしていた両親がね、忙しくて公園に行く時間が取れないことが多くて…、家の中に小さな公園を作ろうと思ったんだって。今はもう撤去しちゃったけど、砂場やブランコもあったんだよ。小学生の頃はね、小さなプールを膨らませて遊んだりもしたの。真っ黒に日焼けするまで遊んで…痛くて痛くて!!でもってしばらくたつとそばかすがね?!」


 オータムメイクからウインターメイクに移行し、落ち着いたカラーから温かみを感じる肌色になった由香の顔には、シミ一つ見当たらない。子供の頃に少々無茶をしても、肌というのは再生がきくというか…美しく保てるものなのだなあと驚く。


「それは楽しそうだね。そんなにすごいテラスを独り占めしていたの?友達とか、毎日来て大変だったんじゃない?」


 子供というのは、空き地や遊べる場所を見つけては足しげく通うものだからね。

 今でこそ長兄のファミリーカーや次兄のバイク、ワンボックスカーなんかが並んでいて狭くなっているけど、昔は近所の子供たちが集まってくるレベルで空き地があったんだ、我が家には。船の残骸や土管なんかも無造作に置かれていたから、面白がって遊ぶ子供たちがいっぱい集まってきて騒がしくして、祖父や祖母が機嫌が悪くなって…なんだか嫌な思い出が浮かんできたぞ……。


「友達は…たまに来たかな。毎日、となりに住んでる子たちが来てたから、あんまり呼ばなかったかも?ううん、呼べなかった?だってね、ひどいんだよ、ちょうどテラスの端っこがね、お隣さんのベランダの真横にあって、私がいないのに勝手にブランコで遊んでたりして!!」


 ……もしかして、気が弱いという、幼馴染の事なのかな?

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