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改めてルール説明を!

「ジュリア、そろそろ時間だ。準備はできているのか?」


いつまで経っても控室に籠ったままのため、スコットは心配しながら扉をノックした。すると、扉が開いてコハルが顔を出す。


「スコット様。お嬢様は精神集中の最中です。もう少し静かにしていただけませんか」



無表情のコハルだが、まだ血まみれのせいか、いつもより怒っているように見え、スコットは引き下がりそうになる。そう言えば、今朝もジュリアは緊張でなかなか部屋から出られなかったのだ、と思い出す。彼女の負担になるようなことはしたくない。だが、時間が迫っていることも確かだった。



「改めてルールを説明しておきたい。それから……意味があるか分からないが、足の治療も試したいんだ」



コハルは数秒鋭い目で見つめてきたが、スコットの主張が意義のあるものと判断したのか、ゆっくりと扉を開き、中へ招き入れるのだった。



「ジュリア、時間が迫っているが……大丈夫か?」



控室の中に入ると、椅子に座って俯くジュリアの姿が。それは今までスコットが見てきた彼女からは考えれないような、負のオーラに包まれている。しかし、それは一瞬のことで、スコットの声に反応して顔を上げると、彼女らしい明るい顔を見せるのだった。



「まぁ、スコット先輩。ジュリアが心配できてくれたうのですね。どうです、この衣装は!」



そう言って、彼女は立ち上がると衣装を見せびらかすように、くるっと一回転してみせる。前回と違って白を基調としたドレス風の衣装は、一輪の薔薇のようでもあった。



「そ、それよりも……足の調子はどうなんだ?」


「感想はいただけないのですか?」


「僕は足の具合を聞いているんだ」



素直な感想を口にしたくないスコットは、強引に話を逸らそうとするが、ジュリアは眩暈でも感じたように目元を手のひらで覆うと、その場に座り込んでしまった。



「コハル。コハル!」


「どうしましたか、お嬢様」


「先輩が新衣装の感想をくださらないのです。このままだと私は戦えないわ」


「それは困りましたね」


「どうしても感想がほしいの。強引な方法でも構わないから」


「かしこまりました」



すると、コハルが音もなくスコットの背後に回り込み、冷たい刃を喉元に当ててきた。



「なっ、何を!!」


「スコット様。お嬢様の新衣装の感想を」


「……ぐぬぬっ」



躊躇うと、わずかに刃を押し当てる力が強まったような。何よりもコハルであれば平気で喉を切り裂いてしまうのではないか、という恐怖心があった。



「に、似合っている! 美しいよ。まさに戦いの女神のごとくだ!!」


「まぁ!」



納得したのか、ジュリアが立ち上がって喜びを表すように手を組むと、既にコハルの気配は背後から消えていた。冷たい汗をぬぐいながら、スコットは本題に戻る。



「それで、足の具合は?」


「完璧ですわ。攻撃が足一本に制限されたとしても、完勝して見せます」


「強がりを言うな。足を見せてくれ」



スコットはジュリアの前に屈み、怪我をしている右足の甲にキュア・ライト(回復魔法)を当てた。



「気休めでしかないが……これがプロヴィデンス前に僕ができる最後のことだ」


「……十分です。先輩のお気持ち、確かに受け取りました」



気を使ったのか、コハルはいつの間にか控室から消えていた。きっと、廊下で待っているのだろう。



「知っていると思うが、ルールを説明させてくれ」


「はい」



「勝負は公式プロヴィデンスのルール。五分制でサード・プロヴィデンスがファイナルターンだ。後頭部に対する打撃や目潰し、噛み付きといった危険行為はなし。もちろん魔法もダメ。決着はノックアウトか関節技による一本、ギブアップ、裁定者が危険と判断したとき。ファイナル・プロヴィデンスを終えても決着がつかなかった場合は、三人の裁定者による判定。つまりはどっちが勝ったか、多数決で決まる。判定の基準は知っているか?」



「ダメージ、アグレッシブネス、ジェネラルシップですわね?」



「そう。まずは相手に明確なダメージを与えたかどうかが勝敗を左右する。明確なダメージがお互いになかった、もしくは同等だった場合は、どっちが決着を狙う攻撃を行ったのか、その積極性が評価される」

「それすら明確な差がない場合は、プロヴィデンスのペースやポジションなどプロビデンスを優位に進めた支配の割合が評価される、と」



ジュリアの回答に、スコットは微笑みを見せると同時に、治療を終えた。



「完璧だな。さすがと言っておこう」


「もちろんです。そして、先輩の治療も完璧ですわ。私の七の色の足技、先輩に見せて差し上げます」



二人は微笑みを交わす。スコットからしてみれば、これ以上、かける言葉もなかった。



「時間だ。行こう!」


「ええ。最高のプロヴィデンスを先輩に捧げてみせますわ!」



二人は控室を出るのだった。

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