682 【真・結城編】母と娘withオレ
六百八十二話 【真・結城編】母と娘withオレ
西園寺の願いを聞いた翌日……結城母とのお話の日。
待ち合わせ場所である病院前に集合時間よりかなり早めに到着したオレが若干緊張しながら結城の到着を待っていると、「あれ? 福田くん?」とまさかの結城母が声をかけてきた。
「えええ、結城さんのお母さん……!?」
「やっぱりそうだったのね。 確か桜子は13時くらいに待ち合わせって言ってたけど……かなり早く着いちゃったのね」
「あー、あはは。 緊張してじっとしてられなかったもので」
「そうなの? 実は私も予定より早く検査が終わって近くを散歩しようかなって思ってたんだけど、一緒にどう?」
「え」
どうやら結城母の様態はかなり好調に向かっているらしく、最近までめっきりなくなっていた食欲も完全復活。
「実は最近ハマってる売店のおにぎりがあるの」とのことで、オレは半ば強引に手を引かれながら病院内に併設された売店へ。 結城母チョイスのおにぎりを結城母のおごりで購入してもらい、それを敷地内にある若干広めの広場で食べることにした。
「あそこで風を感じながら食べると美味しいのよー。 ていうかどうしたの福田くん、そんな驚いた顔で私を見て」
「いや、これ言っていいのか分からないんですけど、握力結構強いし声にも張りが出てきて……ほんとに元気になってるんですね」
「うん。 桜子と福田く……ううん、ダイキくんのおかげでね」
「え」
「ダイキ……良い名前だね」
「んん?」
広場に設置されたベンチに腰掛けると結城母が「ほら、食べてみて!」と先ほど購入したおにぎりをオレに渡して早く食べるよう急かしてくる。
渡されたおにぎりは想像していたよりも結構な大きさで……
「これは……爆弾おむすびですか」
爆弾おむすび……そう、いろんな具材がぎっしりと詰められている巨大おにぎりだ。 結城母は「そうなの。 学生の頃はいろんな味が入ってて苦手だったんだけど、ずっと点滴とか病院食だったのが原因なのかな? 口いっぱいにたくさんの味が広がる感覚が病みつきになっちゃって」と嬉しそうに自身のそれを頬張る。
「なるほど」
そういやオレ、こういうのあまり食べたことなかったな。
オレは結城母に見守られながら爆弾おむすびをパクり。 すると結構……いや、かなり美味しく『あれ、こんなに美味しかったっけな』などと考えながらパクパクと食べ進めていたのだが……
「美味しいよね。 ダイキくんもそれ食べてちょっとは元気出してほしいな」
「え?」
「桜子に告白してフラれちゃったんでしょ?」
「ゴフッ!!!!!」
◆◇◆◇
「あららら、ごめんね急にこんな話題出しちゃって」
いきなりのことで喉を詰まらせ咳き込んだオレの背中を結城母が謝りながら摩ってくる。
「ゲホっゲホっ……き、聞いてたんですか!」
「うん、前に桜子からね。 私も聞いてビックリしたのよ? てっきり桜子、ダイキくんとお付き合いするとばかり思ってたから」
「えええ、そうなんですか!?」
「そりゃあそうよ。 だってあの子、今までずっと私のお見舞いに来た時はダイキくんの話題を絶対出してたのよ? 『今日は福田くんがこんなことしてくれたー』とか、『福田くんってすごいんだよ?』とか。 それだけ聞いてれば……『あれ、この子もしかして福田くんのこと好きなのかな?』って思うでしょ?」
「た、確かに」
「まぁでも違ったんだけどね」
「ーー……グハッ」
まさにトドメの一撃。
オレは手に持っていたおにぎりを落とさないよう胸に抱えながらガクリと項垂れ、それからは結城母に励まされつつ会話を交わしたのだった。
「じゃあそろそろ時間だし、桜子も来るだろうから私は先に病室に戻るわね」
スマートフォンの通知を見た結城母が「よいしょ」と立ち上がる。
「あ、もうそんな時間ですか。 オレも一緒に……」
「ううん、ダイキくんは桜子と待ち合わせしてるんでしょ? だったら桜子と一緒に来てほしいかな」
「そうなんですか? あれなら一緒に結城さんと合流しても」
「だめ、そしたら桜子がヤキモチ妬いちゃうでしょー? そうしたら大変よ? あの子、いつもはあんな大人しめだけど、怒ったら怖いんだから」
「あー……それは、はい、なんとなく分かります」
オレの脳内で結城が西園寺に顔面パンチを食らわせた時の光景が……そして高槻さんが隣町生徒に手を出された際、その生徒に対して傘を大きく振り上げた時の光景が浮かび上がる。
確かに結城を怒らせたら結構怖い。
あれだな、ダーク優香を目にしてからそれが一気に加速した感があるよな。
結城母の言葉に納得したオレはそこで一旦解散することに。
時間を確認すると後10分で結城との待ち合わせ時間。 オレは結城母が院内へ戻っていくのを見届けてから待ち合わせ場所へと向かった。
「あ、福田……くん」
「おまたせ。 早いね結城さん」
「うん、福田……くん、今日はありがと」
「いいよ。 気にしないで」
「ママ、きっと喜ぶ。 ママが喜んでるのを見たら私も嬉しい……」
うん、その笑顔を見るだけで結城がどれだけ喜んでくれてるかすぐに分かる。 少し前のオレだったら余計に恋に落ちてそれどころではなかったんだろうな。
オレは喜んでくれている結城に「オレも役に立てて嬉しいよ」とスマートに返事。 軽い雑談を交わしつつ結城母の病室へと歩き出した。
「そういや福田……くん、宿題終わったんだよね。 よかったね終わって」
「助っ人のおかげで予定より早く終わったんだよ」
「助っ人? エマ?」
「ううん、西園寺。 買い物中に偶然会ってさ。 手伝ってくれるって言うからお言葉に甘えたんだ」
「そ、そうなんだ」
「うん。 でも西園寺ってやっぱ凄いよな。 あんなに美人なのにそれを驕ることないし、面倒見いいし……そりゃあモテるわな」
「あ……う、うん。 そうだね」
「ん? どうしたの結城さん」
「え、あ、な、なんでもない。 ほ、ほら、もうすぐ着くよ!」
病室前に着いた結城が扉の取っ手に手をかけてゆっくりと横にスライドさせる。
「ま、ママ。 福田……くん、来てくれたよ!」
中に入ると視線の先には結城母。
ベッドの上で横になりながら優しい笑みを浮かべオレに頭を下げてきた。
「久しぶりだねダイキくん」
「あ、はい。 お久しぶりです。 元気そうですね」
そこで話したのは当たり障りのない……学校での出来事やオレたちの周囲の友の話。
日が暮れるまでオレたちは皆の長所、面白かったエピソードなどを笑いながら話していたのだった。
「へぇ、そうなの。 そこまで人気なんだね、その……マドンナ四天王っていうのは」
「そうだよ。 希もエマも水島さんも美波もみんな美人で輝いてるの」
「そう。 ダイキくんから見てもやっぱりそうなの?」
「まぁそうですね。 ほとんどの男子はその4人の誰かの虜ですね」
「うちの桜子は?」
「えっ」
「桜子も結構可愛いと思うんだけど……どうかな」
「えーーっと、それは……」
「もぉーー!!! ママぁーーーー!!!!!」
◆◇◆◇
賑やかな時間が終わり、夕方だと言うのにまだかなり蒸し暑い帰り道。
オレはボーッと歩いていると、あることを思い出した。
「ーー……あ、修学旅行のこと言うの忘れてた。 やべ、メールせねば」
お読みいただきましてありがとうございます!!
感想や評価・レビュー・いいね・ブクマ、お待ちしております励みになります!!!




