674 【真・結城編】特別編・サプライズ!
六百七十四話 【真・結城編】特別編・サプライズ!
ダイキが同級生のエマ・ベルナール家で開催されるお泊まり会のために家を出てから少し。
ここ……優香の部屋では優香と美咲がただひたすらに紙に記された問題と向き合っていた。
「んあーー!! また前と似たようなところ間違えたぁー! アタシほんと国語苦手だわぁー!!」
2人がやっていたのは1学年下……高校1年生の各教科別総復習テスト。
お互いの答案をお互いに採点し合い、美咲は【75点】と書かれた用紙を顔面に押し付けながら床に倒れこんだ。
「でも美咲、先週より点数上がってるよ」
「んーにゃ、途中の読解問題は勘だったところもあるから微妙だべ。 序盤に絶対ある漢字の問題はなんとか正解するようになったけど、やっぱり指示語……【『このこと』とはどこを指すか答えなさい】系がほんと出来ないわ」
「英語だと正解してるのになんでだろうね」
「んーー。 多分あれさ、英語って直球で書かれてること多いけど日本語って変に回りくどかったりするじゃん? そこでアタシ混乱してるんだと思うんだわ」
美咲が「ほら、アタシって結構直球的な性格じゃん?」と優香にボールを投げるフォームを見せつける。
「えー、なにそれ。 だったら私が性格回りくどいみたいじゃない」
「あはは。 ゆーちゃんは回りくどいっていうよりも自分を器用に抑え込んでるって感じだよねー」
「器用に?」
「そーそ。 だってゆーちゃんって余程のことが起こらない限り嫌な顔……とか、怒りの感情……とか表に出さないじゃん? まぁだからこそモテるんだろーけど」
「いやいや私モテないよ?」
「またまたー。 確かにゆーちゃんが自分からときめいてるところとか見たことないけど、今度チラッと周囲見渡してみ? 絶対誰かと目が合うはずだから」
「ちょっと変なこと言わないでよー。 それで偶然にも目が合っちゃったら気まずいじゃない」
毎回の復習テスト採点後のこの雑談が2人の精神的な休憩タイム。
2人はある程度張り詰めていた精神を一旦緩めると、再び「じゃあ次までに苦手だったところを少しでも克服するとして、今度は……英語でもやる?」と姿勢を正して英語の問題集と向き合った。
◆◇◆◇
ガチャリ
「ん?」
静かだからこそ家の鍵が開く音に気づく。
ダイキが帰ってきたのだろうか……そんなことを考えながら顔を上げると、美咲が「ダイキ、忘れ物でもしたのかねー」と問題集から目を離さずに話しかけてきた。
「う、うん。 そうかも。 ていうか美咲すごいね、全然集中力途切れてないじゃない」
「まぁねー。 さっきの国語では負けたから、英語では絶対勝ってやるって思ってんだわー」
美咲の表情は真剣そのもの。
いつもなら眩しい笑みを向けながら話してくれるのだが、今回に限っては文字通りの無表情。 美咲は唇を若干尖らせながら問題文をシャープペンシルの芯でなぞりつつ読み進めていく。
あぁ……すごいな美咲は。
この受験対策の勉強も私がやろうって決めたことなのに一緒に付き合ってくれて、それで私よりもかなり真剣に向き合ってくれている。
負けてられない。
優香は1人静かに深呼吸。
息を全て吐き切り集中力を整えまっすぐ問題文を見据えた……のだが。
問題に集中していると部屋の扉の外から小さく控えめなノックの音。
ダイキ、どうしたんだろう。
優香は先ほどの美咲同様問題集から目を離さずに「はーい、どうしたのダイキー」と扉の向こうにいるであろうダイキに声をかける。
するとこれは……なんてサプライズなんだ?
優香が返事をするとゆっくりと扉が開かれ、ダイキとは違う声で「お、お姉……ちゃん」と聞こえてきた。
「!」
もちろん優香がこの声の主が誰なのか分からないはずがない。
少しの間ではあるが一緒に暮らし、共に姉妹の契りを交わし合った愛しの妹……
「さ、桜子?」
優香はすぐに問題集から視線を話して視線を扉の方へ。
そこで顔を覗かせていた妹・桜子の姿を視界で捉えると、すぐに近寄りその小さな身体を強く抱きしめた。
「わわっ! お、お姉ちゃん!?」
「桜子ーーー!!!!」
久しぶりの桜子の感触・香り。
もう勉強どころではない……そしてそれは美咲も同じだったようで、「おー! 桜子ちゃんじゃーーん!!」と満面の笑みで近づいてきた。
「お姉ちゃん、久しぶり。 美咲ちゃんも久しぶり」
優香と美咲の歓迎が嬉しかったのか、桜子が若干照れた様子で顔を赤らめる。
その後桜子は鍵をダイキに借りたことを説明。 『どうせならサプライズにしたら?』とアドバイスを貰い、その通りにしてみたことを2人に伝えた。
「ダイキがそんなことを?」
「なかなか面白いこと考えんじゃんダイキー。 てことは案外もう大丈夫そうだべ?」
「うん、そうだね。 私もちょっと安心したよ」
2人は心配していたダイキが大丈夫そうだということにホッと胸を撫で下ろしながらお互いに微笑み合う。
するとそんな様子を見ていた桜子が、「福田……くんが、どうしたの?」と首を傾げながら尋ねてきた。
「あーうん、まぁ別にこれは桜子が心配することでもないんだけどさ、ちょっと前からダイキの様子がなんかおかしかったんだよね」
「おかしい?」
「そう。 お姉ちゃんと一緒にいるときはいつも通りを演じてくれてたみたいなんだけど、少し目を離すとため息をつきながら下を向いてたり……一緒にお風呂に入ってみてもいつもみたいな元気さがなかったんだー」
「えっ……それって理由とかは……」
「ううん、本人が言いたくないんだったらわざわざ聞く必要もないかなって。 お風呂一緒に入ったとき、別に身体にアザがあったわけでもなかったからイジメとかではないと思うんだよね」
それから優香は「多分あれだよ、友達と口喧嘩しちゃったとか……そんなんじゃないかな」と自身の考えを説明。
するとどうだろう……桜子が完全に顔に出しているわけではないのだが、目に涙を薄っすらを滲ませながら下唇を噛み締めていることに気づく。
もしかして何か知ってるのだろうか……。
なんとなくではあるがそう察した優香はとりあえず桜子に「何か知ってる?」と聞いてみることに。
そしてそれは見事にビンゴ。 ただその内容が……
◆◇◆◇
「んーー。 それにしてもビックリしたねゆーちゃん」
エマ家へ戻る桜子を玄関まで見送ってすぐ。
扉を閉めたと同時に美咲が優しく肩を回してくる。
「美咲……」
「よくゆーちゃん、冷静に桜子ちゃんのフォロー出来たね。 アタシはてっきりめちゃくちゃ問いただすもんとばかり思ってたよ」
「そう?」
「そりゃあね。 だってゆーちゃん、極度のブラコンだし」
桜子が口にした言葉……それは『ごめんなさい。 私のせい……かも』。
聞くとことによるとどうやら数日前にダイキは勇気を振り絞って桜子に告白……しかしその想いは桜子には届かず、ここ数日はちゃんと話せていなかったとのこと。 なのでもしかしたらそれが原因かも……ということだった。
「いやー、でもあのダイキが告白とか、勇気出したと思わない?」
「う、うん。 それは私も凄いなって思ったんだけど、でも……」
優香は話を続けようとしていたのだが美咲が優香の脇腹を指先で突いてそれを中断。 「まーまー、とりあえず肩の力抜こうやゆーちゃん」と囁きながら横腹を突いていた指先をゆっくりと上へと這わせ、どことは言わないが……敏感な先端をまるでインターホンを押すように押し込んできた。
「ひゃわわっ! ちょ、ちょっと美咲……! 何するの!」
「もー。 肩の力抜けって言ってんだろー? 脇腹つついて効果ないんだったら、ここか……残りは下しかないべ」
美咲は先端を何度も連打。
ようやく力の抜けた優香が若干息を乱しながらその場で座り込むと、「とりあえずダイキのことはエマちゃんたちに任せようぜ」と頼り甲斐のある笑みを向けてくる。
「エマちゃんたちに?」
「だべ。 だってゆーちゃんがエマちゃんに頼んだんだろー? それでエマちゃんはダイキがなんで落ち込んでるかに気づいた……だからこうしてわざわざお泊まり会を開いてくれたんじゃないのー?」
「ーー……!」
本当だ。
言われてみればそうだ。 確かにフった側の桜子とフラれた側のダイキ……その両方がそんな楽しそうなイベントに参加するだろうか。
普通ならお互いに気まずくて不参加になるはず。 なのに2人とも参加してるということは……
「エマちゃん……ダイキと桜子の関係をもとに戻そうとしてくれてるのかな」
「多分そうじゃないかな? じゃないとおかしい面子じゃん」
「だよね。 で、でもどうしてエマちゃん、そのこと私に教えてくれなかったんだろ」
「そんなのゆーちゃんがショック受けてダイキに変にお節介焼いちゃうかもとか思ったからじゃないの? 現にそのことを知っちゃった今、ゆーちゃんはこうして取り乱してるわけだし」
「ーー……確かに」
「だからダイキの件はエマちゃんに任せるとして、アタシらは知らんふりを貫いてあげよーぜ? そのほうがダイキの尊厳的にもいいだろ」
「うん。 だね、そうだよね」
美咲がいてくれてよかった。
なんとか落ち着くことのできた優香は改めて美咲にお礼。
ただ今日はもう勉強に集中出来るメンタルではない。 2人はそのことを少し話し合い、今日だけは目一杯楽しむ日に変更。
とりあえずカラオケで発散しようということになり、早速準備に取り掛かった。
「てかあれだなー、ダイキに先越されちまったなー」
部屋で髪のセットをしていると、すでに私服姿の美咲が「いやー、負けたわ」と呟く。
「ん、美咲? 何をダイキに負けて……先を越されたの?」
「だってさ、ダイキは自分の恋に正直になって好きな人に勇気出して告白したわけじゃん?」
「うん」
「てことはダイキはもう告白童貞じゃないってことじゃん」
「こ、告白童貞!?」
あまりにもユニークな名前に優香も思わず口に出す。
そしてそんな優香の顔が若干赤らんだことに気づいた美咲が「何ゆーちゃん『童貞』って単語で照れてんのよー」とアハハと笑い出した。
「だ、だって仕方ないじゃない! そんな単語、知ってても使うことないんだもんっ!」
「まぁ確かにねー。 でもアタシらはまだ告白処女だべ?」
「しょ、処……っ!」
「そうそう処女。 実際の身体もそうなんだけどさ、あーー、でもまさか負けるとは」
とはいえ告白したい相手なんか今の2人にはいない。
2人の話題はその後どんなことをされたらときめくか……へと発展。 「やっぱり優しくないと私はやだなー」やら、「アタシは面白さ重視だわー」などと大いに盛り上がりながら準備を終えて家を出たのであった。
「あ、そうだゆーちゃん、御白神社って知ってる?」
「ううん、知らない。 どこ?」
「ここから10駅くらいあるんっぽいんだけど、なんか縁結びで有名だったんだって。 特に昔……20年くらい前は凄かったっぽいぜ」
「えー、そうなんだ」
「確か祀られてるのが狐……お稲荷さんだったかな。 視える人が見たらたまに白い小ちゃな狐が走ってるんだって」
「へぇー、なんか可愛いね。 ちょっと興味あるかも」
「ん、じゃあそこ行く? 恋愛お守りとかあったら買おうぜ!」
「いいね、今の気分的に私も良い出会いしたいし」
「っしゃ! じゃあ御白神社行くべー!! これでご利益もらって脱・処女だー!!」
「わわわーー!!! もう美咲、言葉で誤解される……! ていうか周りに人いるんだからそんなこと言わないのーー!!!」
お読みいただきましてありがとうございます!!
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優香&桜子……そして優香&ギャルJK星……尊い




