555 【茜編】愛言葉【挿絵有】
五百五十五話 【茜編】愛言葉
詳しくどこが……とはあえて言わないが、想像を絶する痛みを味わってからどのくらい経っただろう。
オレは早くこの痛みから逃れるため、思考を無理やり痛みとは別の方向へ。 隣で付き添ってくれていた茜との会話に集中していたのだが……
「それにしてもさ、さっきのビックリしたね」
茜が「ふぅ……っ」と息を吐きながら先ほどオレたちが体験した話に話題を振ってくる。
「あー、まぁな」
「でもなんであの女の子の神様は、そこまでして私とダイきちくんの共通点を知ろうとしてたのかな。 数百年ぶりに転生させた理由が気になるとはいってたけど、別にそれを聞いて神様を罰するつもりもなさそうだったし」
「確かにな。 でもこうしてすぐに戻してくてたところからみても、そこまで深刻に考えてたわけでもなかったようだし……単にあのロリが神様のことをもっと知りたかったからじゃねーの?」
オレが適当に返すと茜は「えっ」と少し驚いたような顔をしながらオレを見つめてくる。
「えっと……それはなんで?」
「だってそうだろ。 あのロリが【見回りの神】という立場上、本気で神様がオレたちを転生させた理由を聞き出そうとしていたんならもっと早くに尋問してたはずだし、何よりオレが意識を失ってもまだ茜がいただろ? オレなんか放置して茜から色々と聞き出せば済む話だったじゃねーか」
「そ、それはそうだけど……私だけじゃ信ぴょう性に欠けるからとかもありそうじゃない?」
「だったら今オレはこうして目覚めたわけだ。 本気だったらまた聞きに来てるはずだろ? でもオレ意識戻ってから結構経ってるし……それでも来てないってことはその程度だったってことだよ」
このオレの見解に茜は「なるほどね……」と小さく頷くも、未だスッキリしていないのかその顔はまだ晴れ切ってはおらず。
だからオレはこう続けた。
「だからまぁ、簡単に言うとだな」
「うん」
「あのロリ……神様のこと好きだったんじゃね?」
そう口にした時だった。
『なにを……なにをバカげたことを言っとるのかやあああああああああ!!!!』
『ちょっ……! 今のは本当なのかあああああああ!?!??!?』
まさに同時。
オレの頭上……なにもない空間が波状に揺れたかと思うと、そこからあのロリが再登場。 オレの上へと落下して股間部分をゲシゲシと蹴り始めたのだが、それと同じタイミングで保健室の扉が開けられ、顔を真っ赤にさせたおじいさんVERの神様が勢いよくこちらに詰め寄ってきたのだ。
『か……かやぁ!?!? か、かかかか神!? どうしてここに……先ほど天界に戻ったのではないのかやぁ!?!?』
ロリが顔を真っ赤にさせながら視線を神様の方へ。
かなり動揺しているのか蹴り始めていた足の動きをピタリと止める。
『そうじゃ!! じゃが2人に挨拶しとらんことを思い出して引き返したのじゃ!! しかし……外で話は聞いておったが、これはどういう意味なのじゃああああ!!!』
『ど、どどどどういう意味とは何のことかや!? こやつらの転生に関してのことならワッチは目を瞑ってあげて……』
『見回り役殿、お主……ワシのこと好いておったのかああああああああああ!?!?!?』
『かやああああああああああ!!!!!!!! 聞かれてたのやああああああああ!!!!!!!』
なんという年の差ラブロマンス。
とはいっても神の世界の年齢だとどうなのかは分からないのだが、オレや茜といった人間サイドから見てみれば真っ赤になった幼女に詰め寄っている白髪の老人。
若干引き気味のオレや茜の視線など関係なく、神様は鼻息荒くしながらロリの肩をガシッと掴むと『それは誠なのかああああ!?!?』と目を大きく見開いて尋ねる。
『な、なんでそんなこと聞くのかやあああ!!!』
『だってそうじゃろう!! これも2人の話を盗み聞いていたのじゃが、お主はワシが数百年前に当時の神主の娘・イチコを転生させたことも知っておった……それにここにいるダイキや茜ちゃんのことも。 なのになぜ上の統括神や閻魔様に言わなかったのじゃ! それは見回り役としておかしなことじゃろう!!』
『そ、それは数百年前はそんな一気に報告したらワッチがゲンコツ事案だったから黙ってたわけで……それにこやつら2人のことも珍しかったから気になってただけで……』
『嘘を言うでない!! 正直に言うのじゃ……ワシのことを好いとるんじゃろおおおお!!』
神の必死な形相にロリは困惑。
未だ顔を真っ赤にさせながら『そ、そんなことないのや!』と全力で首を横に振っていたのだが……
『自分の気持ちに正直になるのじゃ!!』
『な、なってるのやあ!』
『結婚しよう!!!』
『か、かやああああああああああああ!!!!!!!!』
先ほどの神様の言葉……いや、プロポーズによりロリは腰が抜けたのかその場でヘナヘナと座り込みノックダウン。
よほど嬉しかったのだろう、ロリは頭から湯気を出しながら掛け布団に顔を埋めたのだった。
◆◇◆◇
数十分後。 あれから神様とロリは二人いちゃつきながら天界へ。
オレの体調も復活したので茜とともに保健室を出たのだが、ここで衝撃の事実を突きつけられることになる。
「あ、ねぇダイきちくん」
「なんだ? 今から屋台行くんだよな。 迷惑かけちゃったし奢るぞ?」
「うん、その気持ちは嬉しいんだけど……」
「なんだよ」
「文化祭もう終わってる」
え。
茜にそう言われ改めて周囲を見渡してみると、確かに校内には一般参加の親族たちは居らず。
というよりも生徒たちの姿も見当たらない。 一体どこにいったのかと考えていると、運動場の方から大きな歓声が聞こえてきた。
「ん、なんだこの盛り上がりは」
「分からないけど……とりあえず行ってみよ!」
こうしてオレたちはお祭り状態に近い盛り上がりを見せていた運動場へ。
そこで行われていたのは……そういえばそんなことやってたな。 学園マドンナ四天王でもある水島・西園寺・エマ・小畑の人気投票の集計が終わり、ちょうど発表されようとしていたところだった。
『それでは下の順位から発表するというような野暮なこと、私は致しません!! 堂々の1位のみを発表させていただきたいと思います!!』
校長がマイクを固く握り締めながら熱いアナウンスを披露する。
「「「うおおおおおおお!!!!!!」」」
いつの間に建てられたのか、仮設ステージにはそれぞれの店をモチーフとした衣装を身に纏ったマドンナ四天王の4人。
ステージ背面には簡易ではあるが巨大なスクリーンが設置されており、そこには【集計完了!! まもなく発表!!】と画面いっぱいに表示されていた。
「まーあれだね! 花ちゃんの実力を改めて分かってもらういい機会かなー♪」
「そうかしら。 エマのところに票を入れたって人、結構いたわよ?」
「私のところだってたくさんの親御さんが応援してるって言ってくれたもんね」
「まーまー、いいじゃん! どーせ1位は私になるんだからー! レッツげこくじょー!!」
なんという自信。
4人は本当に自分が1位だと信じているようで、後ろを振り返りその大スクリーンを見上げる。
そういやあれだ、西園寺は花柄の黒い着物で水島はメイド服、小畑はアイドルっぽい衣装ってことは知ってたけどエマの店は中を覗かないまま移動してたから知らなかったんだ。
エマが身に纏っていたのは水色を基調としたドレス。 まるでシンデレラを彷彿とさせるような、白く透き通った肌を持つ美形なエマにはぴったりの衣装となっていた。
誰が1位を獲ってもおかしくない状況。
皆が熱い視線をスクリーンへと向けているなか、とうとうその時はやってきた。
『それでは発表します!! 総獲得票数、堂々1位のマドンナは……』
◆◇◆◇
色々と大変だった合同文化祭が終わって数日。
放課後オレは茜と予定を合わせて駅で待ち合わせ、神様の祀られているあの神社へと向かっていた。
「そういえばさ、文化祭最後のマドンナ投票の結果凄かったね」
ランドセルを背負った茜が数日前の文化祭を振り返る。
「あー、そうだったな」
「まさか水島さんが1位獲っちゃうだなんて。 やっぱりあの子、凄い子なんだね」
そう、あの文化祭ラストに発表されたマドンナ人気投票。
決して他の3人の投票数が少なかったというわけもなく、西園寺・エマ・小畑の総獲得票数はほぼ同列。 しかしその中で頭1つ飛び抜けていたのが水島だったのだ。
西園寺やエマは「あららー」とあまり気にしていないようだったが、小畑が「くっそーー!!!」と結構悔しんでたな。
「それと聞いたんだけどさ、文化祭の翌日に水島さん、事務所にスカウトされたってほんと?」
「らしいぞ。 まぁ水島は断ったっぽいけどな」
「へぇー、あの参加者の中に芸能関係者がいたなんて……世の中何があるか分からないね」
「だな」
まぁなんとなくはそのスカウトした人物が誰かは察せるんだけどな。
多分あれだ……ユウリたちが来てたことだし、あの鬼マネって呼ばれる人も忍び込んで目を光らせてたんだろ。
そんな話をしているとオレたちは目的地でもある神社に到着。
以前神様を呼び出した場所へと向かったオレたちはそれぞれこのために持ってきたものをランドセルから取り出す。
「おー、茜。 なんか渋そうなお酒持ってきたな」
「うん。 これ、おじいちゃんがお供えするなら持って行きなさいって。 それでダイきちくんはコップだったよね」
「あぁ。 ちゃんと新品持ってきたぞ」
オレたちが今日ここにやってきた理由……それは前回のお礼も勿論なのだが、今回は神様とあのロリとの結婚をお祝いするため。
でも別に呼び出そうとかそんなつもりはないぞ。 なんたって2人のラブラブ空間に足を踏み入れることなんて恐れ多くて出来ないからな。
オレと茜は以前パンツを置いた同じところに酒の入った瓶とマグカップをお供えすると、一度頭を下げてすぐにその場をあとに。
途中本殿へと寄り、改めてお礼の言葉を述べてから帰路につこうとしていたのだが……
「ねぇ、ダイきちくん」
神社の鳥居を潜ろうとした手前、茜がオレの服の袖を掴んで立ち止まったのでオレは何事かと思い振り返る。
「ん、どうした茜」
「うん、あのね」
何か言いにくいことでもあるのだろうか。
茜は一瞬オレから視線を外し口籠る。 しかしすぐに視線をオレへと戻してゆっくりと口を開いた。
「あのね、ダイきちくんは覚えてる? あの見回りの神様が言ってた言葉……私とダイきちくん、お互いがお互いのことを気になってるって言ってたこと」
唐突な話題振り。
あのロリの言葉……覚えていないわけがないじゃないか。 オレは少し戸惑いつつも茜を見つめ返しながら「う、うん」と頷く。
「そっか。 よかった」
「え」
「私ね、あれ言われたときドキっとしたの。 だって私、本当にダイきちくんのこと、いいなー、将来一緒になりたいなーって思ってたから」
ーー……。
「ンン?」
オレは目の前で顔を真っ赤にしている茜を凝視。
先ほどオレに向けて放たれた言葉を脳内でもう1度再生して確認する。
え、今のってどういうことだ?
つまりは茜はオレのことが好き……告白されてるってこと……なのか?
エエエエエエエエエエエエエ!?!?!?!?!?
こういう状況が初めてのオレは茜に視線を向けたままフリーズ。
そんなオレの緊張が伝わったのか、茜はクスッと笑った後にオレの手を両手で優しく包み込んできた。
「あ、茜……?」
「あのねダイきちくん、ダイきちくんは……どうかな」
「え」
「ダイきちくんは私のこと、どう思う?」
「ーー……」
「恥ずかしいのかな。 私だって恥ずかしいけど頑張ってるんだから、ダイきちくんの気持ち……聞かせてほしいな」
そう囁くと茜はゆっくりとオレとの距離を詰めてくる。
「私のこと、好き? 嫌い?」
ぎゃあああああああ!!! 上目遣いでそんな甘々で囁かないでくれ……可愛すぎるんじゃあああああああああ!!!!!!
オレは心臓をバクバク脈打たせながらも必死に……しかし無言で頷く。
「え? それは……どっち?」
「す、好き…………です」
「その好きは友達として? それとも1人の堀江茜として?」
「ほ、堀江茜として……1人の女の子として好き……です」
「ふふ、嬉しいな。 てことは両想いだね。 じゃあ今度は……」
それからもオレはいくつかの茜からの質問に答える羽目に。
ちなみに内容は『どれくらい好きか』やら『もしマドンナさんたちと付き合えるとしたら、私とどっちを選ぶか』やら。
最初の方こそオレはそんな恥ずかしすぎる質問に対してもちゃんと真摯に受け答えしていたのだが、やっぱり……あれだな。 こうも恥ずかしい答えばっかり言わされてると少しずつ耐性がついていくもんなんだな。
新たな質問を茜がオレに投げかけてきたのだがオレはそんな茜からの質問を華麗に無視。 オレの手を包み込んでいた茜の手を逆に掴み返してこちら側に引き寄せると、そのまま強く抱きしめた。
「だ、ダイきちくん!?」
「も、もうそんな回りくどい質問はやめろ! さっきも言ったけどオレは茜が1番す、すすすす好き……そ、それでいいだろ!!」
「ちょ……ちょっと痛い、苦しいよダイきちくん」
「うるせー! この抱きしめてる強さがオレの茜へ好き度なんだよ!! 黙ってオレの愛情受け止めろ!!!」
「ーー……!!!」
恥ずかしさを勢いで吹き飛ばしたような今の台詞。
しかしこれが意外にも茜にオレの愛情が伝わったのか、茜はオレの腕の中で小さく「うん」と頷いた。
うおおおおおおお!!!! 恥ずかしいんじゃあああああああ!!!!
この状況にオレのラブチキンな心臓は爆発寸前。
だがオレはそんな恥ずかしいところを茜に悟られないよう、さらにハイテンションモードで続ける。
「そうか! ならよかった!! 今は精神年齢も学年もオレの方が上なんだからな!! これからはオレを頼ってくれよ!!」
「それは……恋人として?」
「そうだ!! そのこ、ここここ……恋人としてだ!!」
「じゃあ早速……頼っていいかな」
茜が上目遣いでオレを見上げてくる。
ーー……ん、なんだ? もしかしてイジメの他にもオレに頼りたいことがあったのだろうか。
だったら茜はオレにとって人生初の恋人なんだ。 だからなんでもしてあげたいという一心で「任せろ!!!」と答えたわけなのだが……
「恋人同士の好きの証明……して」
ーー……。
「え」
茜はオレを見上げたまま静かにその瞳を閉じる。
「あ、茜?」
「ーー……」
オレの問いに答えない。
茜はただただ顔をオレに向けたままじっとしてるだけ。
こんなの誰かに教えてもらわなくてもわかる。
これって……これってあれだよな!?!?!?
そう……キス待ち!!!
思い返せばオレのファーストキスも以前のとはいえ茜だったっけ。
これは……行くしかないんだよな。
オレは生唾をごくりと飲み込みながら細かく震える自身の顔をゆっくりと茜の顔へ。
茜の唇に触れるまであと少し……人生初のオレからのキスの瞬間が迫り、必死に胸の高鳴りを抑えながら唇を突き出そうとしたのだが……
「ふふ、ちょっとダイきちくん。 緊張して固くなっちゃうのはわかるけど、先にそっちを固くしちゃってどうするのー? 雰囲気ぶち壊しだよー」
「ーー……エ」
突然茜が目を開いて笑い出したので、オレは意味がわからず動揺。
顔の距離を離して茜を見つめる。
「えっと……茜? そっちを固くって……どういうことだ?」
「だーかーら、こーこ」
そう口にした茜は……何を意図しているんだろうな。
自身のお腹のあたりをクイクイとオレに押し付けてくる。
なんて柔らかな感触。
オレはそれが当てられている箇所に快感を覚え、そこでようやく気づくことになる。
「ーー……ア」
どう説明すればいいのか分からないが、オレの魂が先に暴走状態に。
茜曰く、初めのうちは少しずつ変わっていく様に驚いていたらしいのだが、完全モードとなったものを押し付けられているうちにどれだけオレが興奮しているのかが分かり笑いが込み上げてきたらしい。
「でも私小学4年生だよ? そんな小ちゃな女の子に欲情しちゃうなんて、やっぱりダイきちくんは変態さんだねー」
「う、ううううるせええええええ!!! 好きに年齢なんか関係ねえんだよおおおおおお!!!!!」
結局その日はオレと茜が付き合いだしたということだけで、恋人らしいことは何1つ出来ず。
そうだな、唯一変わったことといえば茜がオレのことを『ダイキくん』に呼び方を変えたことくらいだろうか。
「じゃあダイキくん、恋人の証明……いつでも待ってるから」
「お、おう」
「でもその時は緊張しても固くしちゃう順番……間違えないでね」
「ーー……」
果たしてオレは茜に対して恋人の証明……ロマンチックなキスをできる日は来るのだろうか。
オレは電車を降りていく茜の背中を見送った後、あまり人のいない車内……1人小さく呟いたのだった。
「まったく、誰かのイジメを解決するよりも遥かにレベルたけーぜ」
(茜編・完)
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茜編終了ですー!!




