477 【三好編】焦がせこの想い!【挿絵有】
四百七十七話 【三好編】焦がせこの想い!
「私……福田のこと、好きなんだよね。 別に返事はしなくていいからさ、私が福田を好きってことだけ分かっててほしいかなって」
三好が優しく微笑みながら純粋な瞳をオレに向ける。
ーー……パンツ越しで。
オレの視界には目の前にブドウ柄のパンツ、捲られたスカート、その先に三好。
「えっと三好……今のは告白……か?」
そう尋ねると三好はコクリと頷く。
「い、いきなりだな」
「いいじゃんいきなりで」
それから訪れるしばしの静寂。
オレと三好は互いに何も言わずに見つめあっていたのだが、それを引き裂くかのように学校の予鈴が鳴り響いた。
「ーー……はい、もうお終い!」
三好が「アハハ」と笑いながらスカートを元の位置に戻す。
「じゃ、じゃあ私はこれで! 別にさっきの私の言葉は気にしないで! そ、それじゃ!」
「えええ、おいちょっと三好!!!」
オレの引き止めも虚しく三好は駆け足で校舎の方へ。
オレはそんな三好の背中を見つめながら、自身の胸に手を当てて心の中でこう叫んでいたのだった。
ガ……ガチだったああああああああああ!!!!
クッソかわEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!!!
それからというものオレの脳内は三好のことだらけ。
「そういやダイキ、山はどうだったわけ?」
給食の時間中、エマがパンを口に運びながら「ねぇねぇ」と尋ねてくるもオレは適当に流すことに。
「んー?」
「その反応は……あんまりだったのね」
「んー」
「エマたちは結構充実してたわよ! ダイキは誰かに写真送ってもらったりした?」
「んー」
「まぁ可哀想だから1枚だけエマが送っといてあげるわよ。 ちょっと待ってて……あ、やば、間違えた!!! ちょっとダイキ、今送ったメールは開かずに消去しなさい!! 家に帰ってからゆっくり選んで送ってあげるわ」
「んー」
オレはエマの顔をぼーっと眺めながら、この約1年ちょっとという短い期間に三好とともに過ごした時間を思い出していたのであった。
「ーー……まさかあのメスガキ感満載でただの奴隷にするはずだったJSとここまでの関係になるなんてな」
「え、ダイキ、なんか言った?」
「ん、あ、ううん、なんでもねーよ」
そうだな、あいつは返事なんかいらないって言ってたけど……するしかないよな。
放課後、オレはメールで三好を再び今朝の裏庭に呼び出すことに。
急いで目的地へと向かうと、先に着いていたらしい三好がこちらに気づく。
「あ、福田……」
「お、おう」
三好は手を胸のあたりで組みながら、なんとも言えないような表情でオレを見つめていた。
◆◇◆◇
「その……話ってなにさ」
いつものような威勢のない三好がモゾモゾしながらオレに尋ねてくる。
「うん、まぁあれだ。 今朝の返事をしようと思ってな」
「は、はああ!? 私あれ返事いらないって言ったじゃん! なんでそんなことすんの!?」
な、ナンダッテエエエエエエエエエ!?!?!?
これは予想外の反応。
三好はオレの発言を聞くなり急にブチギレるとプイッとオレから視線を外し、そのままの勢いで体の向きも回転させてオレに背を向けた。
「ちょ、えええええええええ、なんでそうなる三好!」
「だって別に返事なんか聞きたくないもん!」
「いやいやそういう訳にもいくかよ。 今日の朝のは……オレの人生において初めての告白だったんだぞ!? それを蔑ろにできるはずがないだろ!」
「いいの! 人生初めて……とか、そんなの知らないし!」
三好はかなりの怒りモードでオレの返事を聞く意思がないことを伝えると、「もう私帰る」と静かにオレの隣を通り過ぎようとする。
「お、おい待てよ三好」
「ちょっと……手、離して」
「んなわけいくか! オレは返事をしたいんだよ!」
「私はして欲しくないもん!」
「じゃあなんでオレに『好き』なんか言ったんだよ!」
「それはいいじゃん別に! 私は福田が確かに好き……でもそれで終わり! 別に私はその先なんて求めてないし!」
三好はオレが咄嗟に掴んだ手から逃げ出したいのかブンブンと上下左右に振り回し出す。
「よ、よくねえよ! 返事しないままとかオレがモヤモヤするだろうが!」
「モヤモヤ!? しとけばいいじゃん!」
「ええええ、お前それ勝手じゃね!?」
「勝手で結構だし! だからもう離して……!」
な、なんてやつだ。
ここはもう強行突破しかなさそうだ。
「じゃあオレも勝手にさせてもらおう。 三好、今朝のお前の告白に対するオレの答えなんだけどさ」
「いや……ダメ、やめて!!! 聞きたくない!!!」
三好は全力でオレの腕を振り解くと自身の両耳を塞ぎながらその場でしゃがみ込む。
「ちょ、おい! 聞けっての!」
オレは三好にどうにかして返事を聞かせなければと力づくで三好の手を耳から引き離しにかかることに。
てかこいつ……結構力あるなぁもう!!
「いや!! 無理!! お願いやめて、耳から手を離させないで!! じゃないと私……もう……!!!!」
「まぁーその、あれだ。 オレも三好のこと、好きだぞ。 もちろん恋愛対象として」
「!!!!!!!」
ちくしょう……本来ならオレもギャルJK星に借りた少女漫画のイケメン高校生みたいに爽やかに演出する予定だったのによ。
とんだドタバタな告白……というかその返事になっちまったじゃねーか。
しかもオレのさっきの台詞、あまりの緊張でめっちゃ声震えてたし。 それだけじゃなくて三好の手首を掴んでいる手まで震えてやがる。
うーわ、オレだっせー。
オレは自分のあまりの恋愛経験のなさに絶望。
それにより腕の力も緩まっていき、三好を掴んでいた手をスッと離した。
「ふ……くだ?」
目の前では目に涙を溜めた三好が振り返りながらオレを見上げている。
これは……どっちだ?
返事をしたことにより怒っているのか、はたまたOKを貰えて喜びのあまり声が出ないのか。
オレは唾をゴクンと飲みながら三好の言葉を待つことに。
しかし三好の口から発せられた言葉はそのどっちでもなかったのだった。
「ーー……だめ、無理」
「え」
三好は涙を拭きながらゆっくりと立ち上がると、オレに向かって勢いよく頭を下げる。
「ごめんなさい!! 私、福田とは……付き合えない!!」
「!?!?!?!?!?」
がーーーーーーーーん!!!!!!!
なんでそうなったあああああああああああああ!?!???
え、てか先に好きって伝えてきたの三好の方だよな!? なのに返事でOKしたオレが断られるとか……どういう状況!?
オレの脳はこの突然の出来事にエラー状態。
意味が分からずその場で立ち尽くしていると、三好が体を細かく震わせながら口を開いた。
「ーー……私、怖いの」
え。
怖い? 一体何が……
「お、おい三好、それは一体……」
「無理、付き合えない。 私怖いの! もちろん福田が私のことを好きって言ってくれたことは嬉しいけど……でもまたいつ前の福田に戻っちゃうか分からないもん!! そうなったらって考えたら私……見た目は同じ福田でも、その福田のことは好きになれないから!!」
「!!」
それからも三好はオレのOKの返事を断った理由を心のままに叫ぶ。
どうやら三好はオレが以前『もし今のオレが消えて前のダイキが帰ってきた時はよろしく』とお願いしたことがかなり印象強く残っているらしく、オレがそのことを伝えて以降、なんだかんだで顔を合わせるたびに今日の福田ダイキはいつものオレなのかを気にしていたとのことだった。
「それでも私は……福田がずっと私の好きな福田のままで安心してた。 でも最近の懇親イベントの肝試しで変なお化けから一緒に逃げて、隠れて夫婦になったらって話をして……その後で入院した私のためにわざわざ残ってお見舞いにも来てくれたじゃん? 私、それが本当に嬉しくて……もっと福田のこと好きになっちゃって。 ただそれだけ前の福田に戻ってしまったらって考えたらもっと怖くなっちゃったの」
「三好……お前……」
だからあのオレがビジネスホテルに泊まってた日の夜、三好が電話で『福田が福田のままでいてくれて……本当によかった。 ありがと』とか意味深な発言してたのか。
うーーーわああああああ!!!
なんだそれ、可愛すぎるじゃねえかあああああああああああ!!!!!!!
そんな純粋でピュアピュアな言葉を聞いてしまってはどうしようもない。
オレの中での三好大好きゲージが勢いよく上昇し限界突破。 『これが……これがオレが求めていた青春の1ページなのかああああああああ!!!!』と心の中で叫びながら三好の手を強く握りしめた。
「ふ、福田!?」
「大丈夫だ三好。 あの件だがな、実はもうそんな心配はなくなった」
「え」
三好が目を大きく開かせながらオレを見つめてくる。
「福田……それはどういう……」
「詳しく説明するのは難しいんだけどな、もう前のダイキがこの体に戻ることはなくなったんだ。 嘘じゃないぞ」
「そ、それ……本当?」
「あぁ。 まぁその……あれだ。 そういう系に詳しい人が教えてくれたんだけどさ、この体にはもうオレの記憶しかなくて……今後、前のダイキの記憶が蘇るってことは100パーセントないらしいぞ」
「ほ、本当に本当!?」
「うむ」
「ーー……っ!!!」
オレが力強く頷くと足の力が抜けたのか三好はその場でストンとしゃがみ込む。
「ちょ、おい……三好!? 大丈夫……か……」
「よかった……よかったあああああああ!!! うわああああああああああん!!!!」
それから三好はしばらくの間本気の大号泣。
オレはそんな三好の隣に腰掛けて背中をさすりながらなだめていると、突然三好がオレに抱きついてきた。
「お!? ええええええええ!?!? どうしたいきなり!!!!」
「責任……とってよね」
三好はオレの服に顔を擦り付け涙を拭くと、ゆっくりと顔を上げてくる。
「え」
「私をめっちゃ心配させた責任。 私の恋人になるんだから覚悟してて」
ーー……は?
「はああああああああああ!!?!!?? お前何言って……!」
「だって福田も私のこと好きなんでしょ? もう両想いじゃん」
「そ、それはそうだけど……なんでお前が優位に立ってんだよ!」
「言ったじゃん。 妻の私が引っ張るって」
「それはもしもの話で……ってマジかよおおおおお!!!!」
もうJSの思考回路は理解できねぇ!!
オレは怒涛の急展開についていけず再び脳をフリーズさせていると、三好がオレの胸元についている名札を外して自身の胸元につけ始める。
「ーー……なにやってんのお前」
「そんなの決まってんじゃん」
「?」
「これで私の名前、福田佳奈でしょ? 正真正銘の妻じゃん」
ぐっはああああああああああああああ!!!!!!
ちなみにそれ以降オレは三好から名札を返してもらえず新しく名札を買うことに。
翌日からは三好がいきなりオレの名札をつけて登場したりとオレをヒヤヒヤとさせ、それはそれは刺激的な人生がスタートしたのであった。
◆◇◆◇
「あ、そういえばダイキ、聞きたいことあるんだけど」
「お、おいおい急に名前呼びやめろよ心臓に悪い」
「いーじゃん、今は同じ名札つけてんだから」
「このメスガキ……で、なんだ?」
「聞き忘れてたことあるんだけどさ、ダイキ……前に懇親イベントの時、私の部屋にお見舞いにきてくれてたじゃん?」
「うん」
「なんかあの日持っていってたはずのパンツが1枚消えてたんだけど……知らない?」
oh。
「ーー……シラナイ」
「そっか。 じゃあどこかで落としたのかなー」
拝啓、神様。 あのパンツを最近奉納しましたがお楽しみいただけたでしょうか。
それでお願い……なのですが、三好の脳内からそのパンツの記憶だけを消していただくことは可能でしょうかね。
オレは雲ひとつない青空を見上げながら、その先にいるであろう神様にお願い事をしたのであった。
「そういやダイキにあの時送られてきた水着写真、見せてなかったね」
「あー、それならエマにギリギリの送ってもらったぞ。 消せって言われてたんだけど消せねえわな」
「はあああああ!?!? どれ、見せて!!!」
「え、無理」
しかしオレの抵抗も虚しく三好はオレからスマートフォンを奪取。
すぐに画像フォルダが開かれる。
そしてもちろんそこには最近「消して」と言われたものの己の欲望に従い保存した画像があるわけで……
「ーー……ふーん」
「み、三好?」
ポチ。
【選択された画像は完全に消去されました】
NOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!!!
(三好編・完)
お読みいただきましてありがとうございます!!
下の方に星マークがありますので、評価していってもらえると励みになります嬉しいです!!
感想やブクマ・レビュー等、お待ちしております!!
つ、次の間に挟む話……何書こう 笑




