465 【三好編】目的地!【挿絵有】
四百六十五話 【三好編】目的地!
「あぁ……なんでオレはツイてないんだ」
校長発案の懇親会。
まさかの結城・エマ・三好・多田・小畑・水島・西園寺がみんな海を選択していたなんて。 オレは皆がどんな水着を選んだんだろうなーと一人悲しく妄想しながら山グループの集合場所・学校の運動場へと向かったわけだがーー……
◆◇◆◇
皆あまり関わったことない人ばかりでつまらなそうだなーとか思っていたオレだったのだが、集合場所で見覚えのある後ろ姿……ポニーテールを発見した。
え、なんでいるんだ?
でもあいつは海を選択したはず……もしかして同じ髪型の似てるヤツなのか?
そうは思ってみたものの背丈も髪の色も全てがあいつ……三好に一致している。
そしてそんなオレの視線に気づいたのか、そのポニーテールがゆっくりとオレのいる方に振り返ってきた。
「あ、福田」
「ーー……え、三好?」
一体どうしたというのだろう。
そこにいるのは正真正銘の三好の姿。 でもあいつ、(A)の海を選択したはずだよな?
「えええ三好、なんでいるんだ!?」
オレが驚きMAXの表情で三好に尋ねると、三好は少し頬を赤らめながら視線をそらす。
「おいなんだよ無視か?」
「う、うるさい!」
「で、なんでいるの?」
「べ、別にいいじゃん! (A)の海にチェックしたつもりだったのに、間違えて(C)の山にチェックしちゃってただけだし!」
三好がフンと鼻息を鳴らしながらそっぽをむく。
「ーー……は? チェックミス?」
「そ、そうだけど」
普通ならあり得ないミスなんだろうけど……そうだな、三好だしなぁ。
オレが力なく三好を見ながら笑っていると三好が「な、何さ」と顔の向きはそのままで視線だけをオレに向けてくる。
「いや……その、三好っぽいなーと思ってな」
「私っぽい? な、なにが?」
「ほら、バカだからなーって」
「は、はあああああああああああ!?!???!?!」
三好が顔を真っ赤にしながら「そ、そんなことないし!!」とオレに詰め寄ってくる。
オレはそれを「あー、分かった分かった。 ただでさえ暑いんだからそう熱くなるなよ」と軽くなだめながら三好の頭に手を当てたのだが……
「ーー……ん?」
三好の頭に当てた手の感覚にオレは若干の違和感を覚える。
「な、なに福田。 そんな私の顔じっと見て。 なんか付いてる?」
「え? あ、いや……お前、顔熱くないか? 風邪でも引いて……」
そう尋ねてみるも三好は「はぁ? そんなわけないじゃん。 確かに今朝はあんま食欲なかったけど……普通に外が暑いから体温上がっただけじゃない?」と首を傾げてくる。
「あーね、なるほどな。 それならいいんだ」
「えーなに? もしかして福田ぁ、私が熱出てると思って心配してくれたのー?」
三好が口元に手を当てニヤニヤしながらオレの胸をツンツン突つく。
こ、こいつ!! すぐ調子に乗りやがって!!!!
心配したことを恥ずかしく感じたオレは、顔が赤くなりつつあるのを悟れないよう三好をイジることに。
「な、なに言ってんだ三好! そんなわけねーだろ!」
「はああ? じゃあなんで私の顔が熱いって思ったのさー」
「そ、そそそそりゃーあれに決まってんだろ! 三好がオレのこと好きすぎて顔が熱くなっちゃったー、とか!?」
「は……はあああああああああああああ!?!??!?!?!?!?!?」
それは最近聞いた中では1番の「はあああああ!?!?!」。
オレはそんな三好の元気さに少し安堵しながらも、目的地へと向かうバスが同じだったこともあり一緒に乗り込んだのだった。
「あれ? 私の隣、福田なんだ」
「おーマジか。 すごい偶然だな」
「本当にね。 席変えてもらおっかなー」
「それはこっちのセリフだ! 隣が三好だと静かに寝ることもできなさそうだ」
「はああああ? なにそれ私がうるさい女みたいじゃん!」
「え、実際そうじゃね?」
「はああああああああああ!?!?!?」
オレたちはバス出発時刻まで指定された席に座りながら、お互いを罵り合いつつも最近の自分たちのクラスのことを話すことに。
そしてそれは出発してからもしばらくは続いていたのだが……
「ーー……うぇええ。 ぢょっど待っで」
「なんだよ急に」
「ぎもぢわるい」
「ーー……」
そうだったーー!!! こいつ……乗り物酔いしやすい体質なんだったあああああああ!!!!!
オレは前回の宿泊学習での行き帰りの出来事を思い出す。
そういや三好のやつ……前もこんな感じでダウンしてたよな。
オレが当時のことを思いだしていると隣から三好の力のない……か細い声が。
「ふぐだ……あれやっていい?」
顔を真っ青にした三好がオレの腕を力なく引っ張ってくる。
「あ、あれ?」
「上……乗るやづ」
「上……?」
「もう無理……ごめん福田」
「え、ちょっ!?」
三好がゆっくりと席を立ち、オレの返答も待たずにオレの左太ももの上に跨り始める。
「おお……おおおおおおお!!!!!」
そうだ、これ……前にもやったぞ! 足の上に座ってバランスとることで、それに集中して酔わないようにするやつだああああ!!!
オレの太ももには、三好のパンツと足の付け根から太ももにかけての生感触!!!
そこから伝わる三好の体温……フォアアアアアアア!!!!!!!!!
それからオレはしばらくの間、三好の下半身の温もりや感触を楽しみながらバスの移動タイムを満喫していたのだがなんだろう……なにかがおかしい。
「おい、三好、大丈夫か?」
「ん? 何が?」
「いや……なんつーか、お前そんなにバランス感覚なかったっけ」
「へ? そう?」
そう……以前も三好を脚の上に乗せたオレだからこそ分かるのだが、さっきから三好の上半身の左右へのブレが激しい……あの時よりもバランス感覚が悪くなっているのだ。
「な、なぁ三好、もしかして本当に体調……」
「んなわけないっしょ。 でも確かに私もちょっとバランスおかしいなって思ってたんだよね」
「だろ?」
「うん。 だからさ、ちょっとでいいからアシストしてくんない?」
「アシスト? まぁいいけどどうやって?」
「そだなー、あ、じゃあ福田、そのまま後ろから手を回して、私のお腹の前でシートベルトみたいにしてよ」
「なるほどな。 おけー」
オレは三好の指示通りにお腹あたりで腕を回し、まるで後ろから抱きしめているような体勢でシートベルト作戦を試してみることに。
その結果三好の左右のブレは少なくはなったのだが、それに比例してオレと三好の口数も一気に減少する。
「み、三好。 この体勢クッソ恥ずかしくないか?」
「う、うん。 私も思った」
「や、やめとくか?」
「だ、だね。 でも落ちそうになったら支えてほしいかな」
「うむ、それは任せろ」
それからは脚に伝わる快感と、いつ三好が大きく傾くか分からない緊張感の連続。
目的地に着いた頃には、オレの精神はかなり擦り切れた状態になってしまっていたのだった。
「ごめんね福田、ありがと」
オレの足から降りた三好が「ほら、行こ」と手を差し伸べてくる。
「あぁすまん」
こうしてオレたちはバス地獄を終えやっと地面の上に。
すると先に周囲を見渡した三好が「へ?」と声を漏らす。
「ん、どうした三好」
「いやさ福田……ここって……」
「ん?」
オレは頭上にはてなマークを浮かばせながらも周囲を見渡してみることに。
「え」
「でしょ!? そうなるよね!?」
三好がそう言うのも無理はない。 その後オレや三好……そして隣町出身以外の生徒が揃ってこう口にしたのだった。
「「「ここ……前来たところじゃん!!!!」」」
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