439 スキル発動!
四百三十九話 スキル発動!
さぁ、なかなかに大変なことになったぞ。
『私、芸能活動出来る学校に転校しなきゃダメなんだよね』
小畑がこの言葉を発した後、三好は号泣、多田はフリーズ。 そして小畑はこの場の空気に耐えきれなくなったのか目に涙を溜めながら反対方向へと走っていってしまう。
そしてそんなオレたちの感情を表しているかのように急に降り出す強めの雨……
これ、オレが追いかけないといけない感じだよなぁ。
三好や多田は今のメンタル的に戦力外として、エマにはエルシィちゃんがいる……ということはつまり、小畑を追える人間はオレしかいないということになる。
エマに視線を向けると丁度目が合い、「ダイキ、行ける?」と小さく尋ねてきた。
「あぁ、大丈夫だけど……エマたち傘持ってるか?」
「うん。 エマとエルシィは基本ランドセルに折り畳み傘入れてるから、エマはエルシィのを一緒に使って、エマのをカナたちに貸すから問題ないわ。 ダイキはどうなの?」
「フフ……オレだってお姉ちゃんから今朝『降るかもだから持っていった方がいいよ』って言われたからランドセルに入ってるぜ」
「そっか。 じゃあ……お願い出来る?」
「任せろ!! 次世代人気アイドルに風邪なんか引かせるわけには行かねえからな!!!」
とりあえず今傘を差しながら走っても体力の無駄だと感じたオレはそのまま小畑を追いかけることに。
エマに「とりあえずまた連絡するわ」とだけ伝え、小畑の走っていった方向へと走り出したのだった。
◆◇◆◇
とりあえず、どこを探すかな。
小畑の行きそうな場所とか……そういうのがまったく分からなかったオレはとりあえずがむしゃらに探し回ろうとしたのだが……
「あ、いた……」
それはエマたちのいる場所からあまり離れていない……曲がり角を曲がった先。
小畑も特に行きたい場所がなかったのだろう……曲がってすぐの所にあった電柱にもたれながら、ただ呆然と上を向きながら立ち尽くす小畑の姿を見つける。
とりあえずはまぁ……こうするしかないよなぁ。
「お、小畑さん。 風邪引くよ」
オレはランドセルから取り出した折り畳み傘を広げながらそれを小畑の方へ。
するとそこでようやく小畑もオレの存在に気づいたのだろう……「追ってきたんだ」と小さく呟いた。
「まぁその……そうだね。 そもそも小畑さん心配だったし、雨も降ってきて風邪引いちゃうと大変だし」
「でも福田、濡れてるよ?」
「オレはいいよ。 オレなんかよりも将来有望なアイドルの卵の体調を守る方が大事でしょ」
「いや……どんだけ私のこと好きなのさ」
小畑は濡れた腕で目元を拭うと、「そんなことされても私が気にすんでしょ」とうっすら笑みを浮かべながらオレの体を強引に傘の下へと引き入れる。
「うおおお、ちょ、小畑さん。 そしたら小畑さんの肩半分が傘から出ちゃう……濡れちゃうじゃん」
「いいの。 これくらいじゃ風邪なんか引かないし。 それに福田も私のこと好きなんだから嬉しいでしょ」
「あー……まぁその……はい」
「「ーー……」」
えーと……ここからどうすればいいのでしょうか。
小畑はオレを傘の下に引き寄せ腕を掴んだままそこから動こうとしない。
今までなら小畑が泣いたり愚痴を言ってきたりして、オレはそれに対しての返答……受け身な体勢をとっていたのだが、今の小畑は完全に無言。
これはオレから動かないといけない状態……だよな。
オレは意を決して話しかけてみることに。
「あのー……小畑さん?」
「ーー……」
はい、だめだー。 小畑に視線を向けるも小畑は下を俯いたままじっとしてるし先ほどの呼びかけにも返事がない。
あぁ……気まずい!!!
これはどうしたものか。
そういや前に結城が母親問題で絶望してどこかに失踪した時、高槻さんが『あの年の女の子は繊細』って言ってたからなぁ。
ここで的外れなことを言ってややこしくしちゃうのは避けたいし……
ぐああああああああ!!!!! どうすりゃええんじゃああああああああ!!!!!
脳を必死に回転させて考えるも、ベストな方法は思いつかず。
そしてオレが『あぁ……これオレには無理だ』と自分の無力さに絶望し始めたとき、小畑が小さく口を開いた。
「あー、やっぱ無理だわ」
「え」
小畑に視線を向けると、小畑が儚げに微笑みながらオレを見上げている。
一体何が無理なのだろう……オレはそのことについて考え出そうとしていたのだが、それよりも早く小畑が答えを言うこととなる。
「ごめんね福田」
「何が?」
「私……無理だ。 辞退する」
え……
「えっと……一応聞いとくけど、何を?」
「アイドル。 応援してくれたのにごめんね」
ーー……。
「ええええええええええええええええええ!?!?!!??!?」
それは思ってもみなかったまさかの言葉。
その言葉にかなりの衝撃を受けたオレは持ち前のオーバーリアクションスキルを発揮……その場でツルリと足を滑らせオレの腕を掴んでいた小畑も巻き添えに。 完全に濡れていた地面へと綺麗に転倒し尻餅をついたのであった。
そして勿論小畑も尻餅をついてしまったわけで……
「やば……私今日もメンタル保つためにノーパンだったから……これ透けちゃうやつじゃん」
「ぎゃああああああああ!!!! すみませんーーーー!!!!!!!」
ここからだと明らかに小畑の家の方が近い。
オレは小畑に全力で謝りながらも尻餅をついてしまい若干透けているお尻側を他人の視線からガードしながら小畑の家へと向かったのだった。
「いや……ありがたいんだけどさ福田、逆に目立たない?」
「そ、そう!?」
「うん、だってその格好……他人から見たら福田が私を後ろから抱きしめてる感じに見えない?」
「し、ししし仕方ないでしょ見えちゃうんだから!」
「てことはさ、福田からはちょっと体ずらして覗いたら丸見えってことっしょ」
「ーー……」
「まぁいいけどさ、お尻くらい」
え。
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