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404 マドンナ・パワー!


 四百四話  マドンナ・パワー!



「あー、なんか2組から4組にかけてめっちゃ声ヤバかったねー」



 休み時間。

 階段の踊り場で三好・多田の2人と集まっていると、多田が「ちょっと教室から覗いてみたけど、あれもう戦争だったね」と冗談ぽく笑う。



「だろ? 多田や三好たちのクラスは大丈夫だったのか?」


「うん。 ウチらのクラスにはそこまで問題児って子は入れられてなかったみたい。 でも元々ウチらの生徒だった男子たちはエマや西園寺さんたちの声に反応して飛び出していってたし、隣町の子達もそれに対抗するかのように飛び出してったからね。 もう授業どころじゃなかったよ」



 この多田の言葉を聞いた三好も「確かにすごかった……」と何度も頷いている。

 ーー……なぜかオレをチラ見しながら。



「なぁ、どうした三好」


「え、なにが!?」



 三好はオレの問いかけに対し体をびくりと反応。

 ポニーテールを可愛く揺らしながらまっすぐ顔をオレに向けた。



「いや、さっきから三好……ずっとオレのこと見てきてなかったか? なんかオレの顔に付いてる?」



 オレは顔全体をサッと触りながら三好に尋ねる。



「んえぇ!? そう!? 私、福田のこと見てた!?」


「うん。 それはもうチラチラと」



 そう答えると何故か多田がニヤニヤ微笑み出し、その隣で三好は顔を真っ赤にさせて自身の両手でその顔を隠しだした。



「ん、なんだ? 結局なんだったんだ?」


「ーー……」



 尋ねてみるも三好は無言。

 両手で顔を覆ったままピクリとも動かない。



「お、三好、無視かー?」


「ーー……」


「おいおーい、三好ー」



 だめだ、やっぱり今日の三好はどこかおかしいな。

 三好の目の前で手を振りながら顔を覗き込むも三好は固まったまま何も話さず。


 これは……やはり小畑とクラスが別々になったことによるショックが大きいのかもしれない。

 そう確信したオレは金銭面にそこまで余裕があったわけではないのだが、とある提案をしてみることにしたのだった。



「なぁ三好……はなんか様子がおかしいから代わりに多田に話すけどさ」


「なに福田」



 多田がわずかに首を傾げながらオレに顔を向けてくる。



「実は今日の放課後、小畑さんにオーディション第1次審査突破おめでとう記念でファミレスでスイーツ奢る予定だったんだけど、2人も来るか? もちろんオレのおごりで」


「え、うん。 それは嬉しいんだけど……さっきメールで言ってた『隣町から来たウザ男女を処す』はどうするの?」



 多田が先ほどオレの送ったメールを表示させてオレに見せてくる。



「あーそれな。 さっきのバチバチでかなり関係が悪化しちゃったんだ。 相手も警戒して簡単には罠にかからないだろうし……しばらく様子を見ることにするよ」



 その後オレたちは休み時間終了のチャイムと同時に解散。

 それからの授業時間はいつまた爆発してもおかしくはない冷戦状態が続き、互いが互いを刺激しないよう……完全に牽制しあって無事初日を終えたのであった。



 ◆◇◆◇



 放課後・ファミレス。 

 やはりここでも始めに話題に上がったのは既存生徒と隣町出身生徒とのバチバチ問題について。


 そこで多田が各クラスから得た情報をオレたちに教えてくれていたのだった。

 流石は多田……もはや情報収集のスピードはプロ並みだぜ。



「まずは2組……美波と水島さんのいるクラスではもうウチら側の生徒が優勢らしいね」


「えええ、そうなのか!?」



 多田の話に小畑が「そだよー」と頷いているあたりマジなのだろう。

 なんでもマドンナ水島の信仰者・花江ちゃん大好き協会のメンバーたちが水島の可愛さ・素晴らしさを布教して隣町男子の3分の1が陥落。 水島には逆らえなくなってんだとよ。



 ーー……おそるべし可愛さの魔力。



「それで4組……西園寺さんのクラスなんだけど、ほら、5年生の最初までは西園寺さん、女子グループの中で最強勢力を誇っていたじゃない? だから西園寺さんの味方をする女子と、新しく設立された男子たちのファンクラブ……西園寺組が力を合わせて数の力で隣町生徒を押さえ込んだらしいよ」


「まじ!?」


「うん。 そのあと西園寺さんが隣町のみんなを許して喧嘩しないって約束して……6年のクラスの中では一番安全なクラスなんだって」


「おお……凄いな西園寺」


「でしょ? だから今回の件で西園寺さんの株が男女問わず一気に上昇したらしいね」


「……そりゃあそうなるわな」



 ていうか水島といい西園寺といい……流石はマドンナとマドンナ候補と言ったところか。



 オレが2人の存在を改めて凄いなと感心していると、多田が「福田とエマのクラスはまだ大変そうなんでしょ?」と尋ねてくる。



「まぁそうだな。 今日も最後までいつ爆発してもおかしくないピリピリムードだったし」


「それキツいねー」


「じゃああれか。 てことは実質……あとはオレらの3組が上手くやったら、オレらの学年は平和になるってことか?」



 そう尋ねると多田が「5組と6組はまだ分からないけど、そういうことなんじゃないかな」とコクリと頷く。



「なるほどなー」


「で、どうなの? 上手くやれそう?」


「んー、まぁさっきの話を聞く限りだと……うちにもマドンナ候補のエマがいるし、エマの信者もいっぱいいるから大丈夫そうなんだけど……」


「あ、エマナイツ?」


「うん。 西園寺や水島ほどではないとしても、なんだかんだでエマを絶対守るマンたちだし」



 ーー……まぁ何かあったらエマナイツたちよりもオレの方が上手く立ち回れるだろうから、その時はオレがエマをサポートするつもりだが。



「早く平和になればいいねー」


「ほんとそれだぜー」



 オレが「はぁ……」とため息をつきながらテーブルに突っ伏すと、隣に座っていた小畑が「まぁ大丈夫だって福田」とオレの背中をパシンと叩く。



「え?」



 ゆっくりと顔を上げて小畑に視線を向けると、小畑はちょうどその手に持っていたパフェ用のロングスプーンをオレに向けるとニコッと微笑んだ。



「福田になんかあったら私が助けたげるから安心しなって」



「んー、ありがとう小畑さん」



 オレが軽く頭を下げると小畑は「気にしないでー」と言いながら再びパフェを口の中に運び出す。



 ーー……え、ていうか今小畑、オレを助けるって言った?


 

 ゆっくりと顔を上げて小畑を見てみるも小畑はいつも通りの表情。

 しかし対面に座っていた三好と多田は互いに真顔で見つめあっていて、そして……



「「ええええええええええええええええ!?!?!?!?!?」」



 先ほどの隣町生徒の話題は何処へやら。

 それからは三好・多田による急な小畑とオレの親密さを問いただす審問会へと移行したのであった。



「ちょ、美波……なんでそうなってんの!?」


「なんでってー?」


「まさか美波……福田のこと好きなんじゃ……!」


「いや、福田は私のこと好きっしょ」


「えええええええええええ!?!?!?」



 目を大きく見開いた三好が顔をグインとオレの方に向けてくる。



「そうなの福田!!!」


「え、いや……ていうか、小畑さんだけじゃなくて、お前のことも好きだぞ三好」


「ーー……!!!!!! うふああああああああああ!!!!!」



 三好……やっぱり寂しかったんだな。 小畑たちと話してるだけでこんなに元気になっちまって。

 まぁでもこの三好のいつも通りな姿を見れて安心したぜ。


 オレはそんな三好たちの姿を目に焼き付け、友達っていいものだよなと心を満たしていったのだった。

 ーー……それと引き換えにオレの財布残高はめちゃめちゃお腹空いちゃったんだけどな。



 今週末は結城とのお出かけもあるし、これは全力でお手伝いしてお小遣い稼ぐしかないぜ。



 ◆◇◆◇



「あー、心も胃袋もお腹いっぱいだぜ」



 ファミレス帰り。

 オレが1人満足しながら帰っていると、少し細めの一本道……どこかで見たことのある女子とすれ違う。

 


「あ」

「あ」



 向こうもオレのことをどこかで見たことがあるのだろう。

 その後オレたちはしばらく無言のままお互いを見つめあい記憶を探っていたのだが……



 ーー……!!!



「あああああああ!!! お前あの隣町のトイレ音バカでか女!!!!」

「あああああああ!!! 変態女子トイレ覗き男!!!」



 正直忘れかけていたぜ。

 今年序盤に行われた隣町の小学校との競技会にて女子トイレで鉢合わせオレが華麗に成敗した……なにがとは言わないが強烈なあの便座下から勢いよく出る水並みの大きさを奏でるトイレ女じゃないか。(確か218話だったかな?)

 トイレ女もそのことを思い出したのか、顔を真っ赤に染め上げながら股のあたりを両手で軽く押さえだす。



「ちょ、ちょっと!! なんの用なわけ!? まさか新学期早々私を脅しに……!?」




 ーー……ほう、それはありだな。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 三好ちゃんがかわいい! 小畑ちゃん……さすが女王だ! 助けてくれるなんて……。 そして! あのときの……!!
[一言] 新しい下僕げっとぉ。 しかしコイツ、ある意味ゲスいな
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