403 1日目から不穏!?
四百三話 1日目から不穏!?
とうとう始まった新学期・6年生初めてのホームルーム。
担任は運よく5年の時と同じ先生で「小学生最後の年なんだから平和に終わらそう」という言葉で締めくくり1時間目の授業……自己紹介タイムが始まった。
どうやらうちのクラスには隣町出身の生徒が約3分の1。 その中でも飛び抜けてガラの悪そうなのは先ほどの日焼け男子とギャル女子を含めて大体5人といったところか。
自己紹介時もダルそうに立ち上がり名前をボソッと呟くだけで、担任が「もっと何かこう……皆に一言とかないのか?」と尋ねるも「別になーい」とこれまたダルそうに答え座っている。
まぁそれは別にオレからしたらどうでもいいことなのだが……
オレは「はぁ……」と小さく息を吐くと視線をゆっくりと目の前の席へ。
そう……結城の隣の席。 そこにはあの忌まわしきギャル女子が座っていたのだ。
あ、ちなみにギャル女子って言ってもあれだぞ? 『ギャル』がついてるとはいえ、ギャルJK星とは似ても似つかないほどのおブスちゃんだからな。
「ねーねー、なんで君そんなに芋っぽいのー?」
ギャル女子が自身の前髪をクリクリと弄りながら結城に話しかける。
「い、いも?」
「そーそー。 なんかさ、クソダサくない?」
ーー……あん?
オレのギャル女子に向けている視線に『殺意』がプラスされる。
おいおい結城のどこが芋っぽいだとこのやろう?
お前なんかよりも数万倍……いや比べるのも申し訳ないくらいに結城の方が圧倒的に可愛いに決まってんだろこのクズ女。
オレがそんなツッコミを心の中で叫びながら目の前のクズ女に投げかけていると、隣に座っていたエマが「ちょっと目の前の子、ムカつくわね」と小さく呟く。
「あ、エマもそう思ったか」
「当たり前でしょ。 親友がバカにされてるのよ? こっちまでムカついてくるわよ」
「これって止めた方がいいのかな」
「いや……桜子もあまり相手にしたくないようだし、このまま済めば大丈夫だとは思うんだけど……」
確かにそうか。
ここでオレやエマが止めに入ったらそれが発端となってお互いの関係に更に溝が出来る。
……新学期早々に隣町出身生徒vs既存生徒のバトルロイヤル再来になりかねないしな。
オレとエマはそれから状況を見守ることに。
とりあえず自己紹介中はそれ以来あまりちょっかいをかけられなかったようなのだが……
【2時間目】
それは国語の授業中に起こった。
結城が真面目に黒板に書かれてることを自身のノートに書き写していると、それを見た隣のクズ女が「うわー、真面目じゃん」と呟く。
「え?」
「私ノートちゃんと書いたことないんだよねー。 だからノート点とかまったくなかったし。 ねね、私の分も書いといてよ」
クズ女が結城の机の上に自身のノートをポンと軽く投げる。
ーー……あんん?
「え、ええ?」
「いいじゃん別に。 1個書くのも2個書くのも変わんないでしょ?」
「いや、そしたら黒板の全部書くの間に合わなくなるし……」
「だったら家に帰ってからでいいから私の書いといてよー。 別にノート提出ん時にくれればいいからさー」
「え……えええ……」
うわぁ、早速パシりにしようとしてんじゃねえかこいつ。
この女……この1年結城の害になることはほぼ確定したようなものだよな。
オレが近々どうこいつを始末するか考えていると、近くに座っていた日焼け男子にもその会話が聞こえていたようで「じゃあ俺のも書いてって頼んどいてくれや」とノートをクズ女に渡す。
「おけー。 てことでオイモちゃん、よろしくー」
よし、こいつ絶対に許さん。
近いうちに確実に処す。
これはもうあれだ、去年杉浦にやった方法……謹慎パターンが無難そうだな。
もしそれでダメならもう退学コースに変更ということで。
オレはすかさずスマートフォンを取り出し三好・多田にメールを同時に送った。
【送信・三好・多田】早速だけど隣町から来たウザ男女を処す。 ついては2人の協力が必要なため次の休み時間に話したい。
それからすぐに2人から了解の返信が届いたのでオレはホッと胸をなで下ろしてこいつらを潰すプランを脳内で構築していったのだが……
それはオレのプランが大体8割ほど完成した時だった。
未だ結城にクズ女が絡んでおり、オレは結城にもう少しの我慢だぞとこの時間を耐えることを応援していたのだが、ここで痺れを切らしたエマが後ろから結城に声をかけたのだ。
「桜子、無視しなさいそんなの」
「えっ……」
エマの声が聞こえた結城が体をビクンと反応させてチラッとこちらを振り返る。
そして振り返ったのは結城だけでなくその隣のクズ女も同様だ。 クズ女は椅子ごと向きを回転させて「ちょっとなんなんお前」と睨みを利かせながらエマに顔を近づけた。
「なんなんって……そのまんまの意味でしょ。 迷惑してるんだから気づきなさいよ」
「は? 本当に迷惑してんのとか、そんなの分かんなくない?」
「いやわかるでしょ。 あ、それかそんな簡単なことも分からないほどオツムが弱いのかしら」
エマのやつ……マジだ。
エマも親友のピンチにかなりイラっとしているのかピリついたオーラを全身に纏わせながらクズ女を睨み返す。
「オツム……え、私のことバカにしてんの? オイモちゃんは『いや』って言ってないし良いってことでしょ」
「なんで無言だと同意になるのよ。 ほんと低脳……あなたの名前は今後アリのオツムちゃんね」
「アリの……あんたバカにしてんでしょ!!!」
この言葉にクズ女……もといオツムちゃんは大激怒。
大げさに音を立てながら立ち上がるとエマに詰め寄り、自軍のピンチだと察した日焼け男たちもそれに反応……「俺らの仲間バカにしてんじゃねーぞ」とブチ切れながら立ち上がった。
そこからはもう授業どころの騒ぎではない。
担任が「授業中だぞ席につけ!」と叫んでも隣町のやつらからしたらこういうものはどうやら日常茶飯事、まったく聞く耳も持たないまま怒りの言葉をエマに投げかけ始める。
対してエマも負けじと「親友バカにされて黙ってるわけないでしょ!」と真っ向から対抗。 その声に反応したうちのクラス・そしてエマの怒り声が聞こえた他クラスに在籍しているエマの信仰者・エマナイツたちがエマの周囲に集結し、まさに戦争間近な状態となってしまっていたのだった。
ーー……あ、ちなみにこれはうちのクラスだけじゃないぞ。
それからしばらくするとあれは……2組の方からかな。
マドンナ水島の「ちょっともぉー、ウザいんだけどほんとにー!」の声が聞こえたかと思えば各クラスから水島の信仰者・花江ちゃん大好き協会のメンバーたちが。
そして4組の方から西園寺の「あーもううるさい!!」と声が聞こえればエマや水島と同様に西園寺の信仰者・西園寺組がどこからともなく駆けつけ混戦状態になってしまっていたのだった。
結局バチバチになっちゃうのかよ!!!
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