312 楽しい人生!!
三百十二話 楽しい人生!!
あれから数日。
福田祖母も無事退院して今までどおりに家事をこなせるようになったということで、オレと優香は自分たちの家に帰ろうということになったのだが……
「うーー、ダイきち優香ちゃん、もう帰るん?」
病室内。
ヒモのようなもので巻き付けられて絶対安静中の陽奈が寂しそうにベッドの上で横になりながらオレたちを見上げる。
「まぁな。 てかまだ拘束されてんのな陽奈」
「うんー。 手術の糸を抜くのが1週間くらい後なんやってー」
「そうか。 じゃあそれまでは拘束は続くのか」
「そうやよー。 本当ならちょっと動くくらいはいいらしいんやけど、陽奈は元気すぎるけんダメって」
陽奈が「あー、早く動きたいよー」とモゾモゾと身体をくねらせる。
「もう陽奈ちゃん、そんなことしたらまた傷口開いて糸で縫って拘束期間増えちゃうよ」
「んあーー、それは嫌ーーー。 恐いこと言わないでよ優香ちゃんーー」
実はこれは事前に陽奈の母親から聞いた話なんだが、今こうして陽奈は拘束されて身動きをあまり取れないようにしているものの、何をしでかすか分からない……なので看護師さんや巡回医師が重点的に見回りに来ているらしいのだ。
だからちょっとでも怪しい行動をしてればその度に注意されているんだと。
……まぁせっかく快方に向かってるのにまた傷口プシャーで縫うことになったらたまったもんじゃないもんな。
そんな感じでオレが看護師さんや医師たちに同情していると、陽奈が何かを思い出したように「あ、そうだ」と呟く。
「ん、どうした?」
「そういやダイきち、陽奈にお守りくれたんよねー」
陽奈が枕元付近に立てかけてあるお守りに視線を移す。
あれはそう、美香がくれた不動明王の力の込められた身代わりお守りだ。
「あー、あれな。 そうだけどどうした?」
「ダイきち、今度はダイきちと優香ちゃんがこのお守り持ってって」
「「え?」」
オレと優香の声が重なる。
「えーと……陽奈、なんで?」
「だって陽奈、このお守りのおかげで元気になれたんやけん、今度はダイきちと優香ちゃんを守ってもらわないと」
オレが言葉を失っていると陽奈の背後に姉・愛莉が出現。
『本当にこの不動明王様のおかげだよ。 まだ力は残ってるから陽奈ちゃんのお願い聞いてもらえたら嬉しいな』とオレに微笑みかけてくる。
……なるほどな、陽奈にはもうこのお守りの力はなくても大丈夫なのか?
『うん、おかげさまで。 もう大丈夫だよ』
そうか、じゃあお言葉に甘えるとするよ。
オレは隣で「でも……」と戸惑っている優香の袖を引っ張る。
「ん、どうしたのダイキ」
「お姉ちゃん、陽奈が良いって言ってるんだから貰おうよ。 お守りって人からもらった方が効力あるってテレビで言ってたし」
「ーー……そうなの?」
「そうそう。 それにこれは本物だからね! なんたって陽奈の病気を治したって言う実績があるんだから!」
「うーーん、じゃあその……本当にいいの陽奈ちゃん」
「うん!」
「ならお言葉に甘えて。 じゃあ陽奈ちゃん、元気になったらまたウチに遊びに来てね」
「もちろんいくーーー!!!!」
こうしてオレと優香は陽奈の大声での「ばいばーーい!!」を背に受けながら病院を後に。
そのまま駅へと向かい色々あったこの街に別れを告げたのだった。
あ、ちなみに茜はちゃんと以前の自分との決別を果たして今は堀江家で楽しく暮らしているらしい。
もう少し落ち着いたらここを離れて……小学4年生から始めるんだってよ。
てことはあれだな。
これから茜の新しいストーリーが始まる。
それにタイトルをつけるとしたら……
『小四に転生した私は神の創造した身体で青春を謳歌する!』
……ってところだろうか。
ふむ、我ながら良いワードセンスしてやがるぜ。
そんなことを電車内で考えていると優香が「あ、そうだダイキ」とオレの肩を優しく揺らしてきた。
「なにお姉ちゃん」
「家に着いたらもう夕方か夜じゃない? だから今夜は高槻先生が晩御飯をご馳走してくれるんだって」
「ーー……」
え?
「それマジお姉ちゃん!!!」
「うん。 さっき高槻先生から連絡来たから是非ってお願いしといたよ」
「お……おおおおおお」
「桜子、久々にダイキやお姉ちゃんに会えるから『今日は私が作る!』って気合い入ってるんだって。 可愛いね」
「おおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」
結城の手料理……じゅるり。
茜、オレもお前に負けないくらい謳歌してるぜ!!!
お互い楽しい人生にしような!!!!
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