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18 ドロップアイテムが出てきた

「エアロアタック!」


 足下で空気の塊を破裂させた俺は、その勢いでグリーン・サーペントの頭上をとる。

 が、敵は巨体に見合わぬ素早さで体を動かし、大きな口をあけて俺を飲み込もうとする。

 なるほど。一層にいるモンスターにしては強い。

 こういうのが何十匹もいてくれたらレベル上げも楽なのに。


 ああ、でも。

 あの凄いトウガラシを沢山投げ込めば、沢山出てくるんだろうな。

 今度、校長先生に入手方法を聞いてみよう。


 ちなみにアイテムを使うと出てくるタイプのモンスターは、アイテムを使った瞬間に生まれてくる。

 奇妙な話だが、実際にそうなのだ。

 おそらくグリーン・サーペントも、普段は湖をくまなく探しても見つからないはず。


『天墜の塔』には、そういう不思議な話が他にもある。


 モンスターの死体がすぐに消えてしまうとか。

 どんなにモンスターを狩りまくっても、しばらくすると、どこからともなく沸いてきて、一定数を保つとか。

 洞窟の奥などにある宝箱を開けてアイテムを回収しても、数日後には宝箱の中にアイテムが補充されていたりとか。


 そもそも、ある日突然、空の彼方から墜ちてきて地面に突き刺さったという出自からして、不思議を極めている。


 そんな不思議の塊だからこそ、俺は『天墜の塔』の最上階に何があるのか見てみたいのだ。


「アイシクルアロー!」


 俺はグリーン・サーペントの口内めがけて、氷の矢を発射する。

 それも五発。

 これが今の俺に同時発射できる最大の数だ。


「しゃぁぁぁぁっ!」


 口内に氷の矢が突き刺さったグリーン・サーペントは悲鳴を上げる。

 そこから更に氷が広がって浸食していったのだが、しかし湖のヌシの名は伊達ではない。

 自らの動きによって、氷を全て砕いてしまった。


「へえ!」


 俺は落下しながら、感心した声を出す。

 口の中に突き刺さった氷を強引に砕いた筋力だけでなく、その思い切りの良さが凄い。

 当然、グリーン・サーペントは口から血を流す。

 見るからに大きなダメージだ。

 それでも凍り付いたままでは、より不利になると判断し、迷うことなく氷が体内を傷つけることもいとわず砕いたのだ。


 着地した俺は、立て続けにアイシクルアローを放つ。

 しかしウロコを貫けず、表面を凍らせるだけ。

 その程度でグリーン・サーペントは止まらなかった。


「……今の俺の魔法じゃ、こいつは倒せないってことだな。まあ、そりゃそうか。一人で挑むのならばレベル5以上が望ましいって書いてたもんな」


 だけど、アラン先生をけしかけたということは、校長はこいつを倒しているはずだ。

 時間をかけて少しずつダメージを与えていけば、ランクGの魔法でも勝てるのか?

 それこそ、体当たりをギリギリで回避しながら剣で百回斬るみたいな。


 うーん……アラン先生にはああ言ったけど、自分でやるとなると面倒だぞ。

 そんなことをしていたら、入学式までにレベル2になれそうもないし……。

 剣で斬っちゃおう。


「魔法使いとしての俺はお前に負けた。敬意を表して、ぶった斬るぜ」


 突進してくるグリーン・サーペントに向かって踏み込み、抜剣。

 まずは頭部を切り落とす。

 残った胴体を五つに分断する。

 更に剣速の衝撃波で肉と骨がズタズタになっていく。


 よし。

 腕は鈍っていないな。


 転生してから常に手加減していたから、久しぶりに思いっきり剣を振り回せて気持ちがいい。


「アラン先生、そんな岩陰に隠れなくても、もう大丈夫ですよ」


「俺はモンスターより君が怖い」


「あはは。アラン先生だって頑張ればそのうち、このくらいのモンスターなら一刀両断にできますって」


「やめろ! マリーさんと同じ笑顔で、恐ろしいことを言うな!」


 すっかり怯えられてしまった。

 ちょっとやり過ぎたかもしれない。


「ところでアラン先生。さっきの凄いトウガラシ。どこで入手できるか、校長先生から聞きませんでしたか?」


「ああ。それなら、あの山のどこかに生えてるらしいぞ」


「あの山ですか……」


 アラン先生は遠くに見える山脈を指さした。

 ……どう急いでも、歩いて三日はかかりそうだ。

 走って行くにしても、流石に持久力が保たない。


 湖にトウガラシを沢山投げ込んで、グリーン・サーペントを沢山狩ることを考えていたのだが……無理のようだ。


 俺がガッカリしていると、グリーン・サーペントの死体が消滅を始めた。

 ……流石に一匹倒しただけでレベルアップはなしか。仕方がない。


 だがレベルアップしなかった代わりに、死体の一部が光の粒子に変わり、そして一カ所に集まった。

 その光が消えたあと、草むらの上に、緑色の水晶のような球体の物が落ちていた。

 モンスターを倒した際、稀に現われる、ドロップアイテムだ。



――――――――――――――――――――――――――――――――――

名前:グリーン・サーペントの宝石

説明:グリーン・サーペントの体内で作られる宝石。わずかに魔力を宿しており、グリーン・サーペントの高い生命力の源である。これをペンダントなどに加工して身につけると、HP+5の効果がある。

――――――――――――――――――――――――――――――――――



 へえ。HP+5かぁ。

 レベル一桁の頃なら心強い効果だな。

 今の俺はHP755なので、それが760になってもさほど嬉しくないが……気休めにはなる。


 あと、この手のアイテムのいいところは、パラメーターが999まで上がっていても、ちゃんと数値が加算されて1004になるところだ。

 +100の効果があるなら、1099だ。素晴らしい。


 もっとも、強力な補正をかけてくれるアイテムは貴重な上、装備中MPを消費し続けるといったペナルティがあったりする。

 レベルが低くてもアイテムで強化すればそれでいい、という話ではないのだ。


「さてと。俺はしばらくこの辺でモンスター狩りします。アラン先生がグリーン・サーペントに背中を向けて逃げたことは校長先生に黙っていてあげるので、モンスターを横取りしないでくださいね」


「そんなことするか! 俺はもう帰るぞ! 君と一緒にいたら、斬撃に巻き込まれて真っ二つになりそうだ」


「あはは。俺が人を巻き込むような真似するはずないでしょう。素人じゃないんですから。俺が何かを斬るときは、自分の意思ですよ」


「怖っ! マリーさんとそっくりな顔なのに怖いっ! 君の担任にだけはなりたくないな! 校長に頼んでこよう!」


 そう言ってアラン先生は帰っていった。

 あの校長にそんなことを頼んだら、逆の結果になる気がするんだが……。

 ま、いいか。

 担任が誰だろうと、各授業を受け持つ人はまた別だろう。

 もし学校が全く駄目な場所だったら、やめればいいだけのことだし。


 さあ。俺はマイペースにモンスターを狩るぞぉ。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] +5程度だろうと、死んだら終わりの世界で 命の重さを軽く見過ぎでは ゲームですら、(生)命の木の実とか貴重品なのに
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