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異世界に転生したけどファンタジーなのは俺だけらしい  作者: 三十六
王都武芸大会編

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88話 サマリード領への帰還 6

-サマリード領内 リベスタン城塞へ移動中の馬車の中-


「これは違いを実感するね。やった方が良いのは間違いないけど、今しても大して利が無いのがねぇ。長い期間使って大人数を拘束しないと出来ない事だし、難しいね」


 トリスタンから出てリベスタン城塞へと向かう道は幅が狭く路面状態も悪い。この馬車でも速度を出すのは厳しい。現区間から明らかに乗り心地が落ちた。その原因がどこに在るのかは明白だ。俺も分かってはいるが、道路整備に手を出せば確実に大赤字になる。収支を考えてやれる内容ではないのだ。そのための領主なんだが、難しいところだな。


「司教にも期待してたところは有ったんだけどさ。来たら変ると皆が思ってたけど全然効果は無かったみたいだし、困ったものだよ」


 なるほどな、村長以下の住民が領主に好感を持っていないのも納得出来る。彼らは隣のトリスタンの話は知っているのだから不満に思わないはずも無い。

 しかし悪政かと言われるとそんなこともない。身の丈に合った内容で住民に負担を掛けない。これはこれで一つのやり方だ。立地条件や情勢で差が出るのは仕方の無い事だし、急進的に何かをすれば成功する例は稀だ。不具合改善と発展目的では得られる住民理解が違う。


 領主は何でも解決出来る存在ではない。運良く、良心的で優秀な幕僚に恵まれれば、長期的視野を持って助言出来る腹心が居れば、もう少し良い状況に変っていたのかも知れない。残念な事にハミルにはどちらも居なかったということなのだろう。あのマイネルが来て変化が出なかったのは疑問が残るが、現状何も良くなってはいないのだ。何かしらの要因で現状維持を選択し、結果として領内はなかなか発展しなかった。しかし、後先考えずに思い付きで、独善的に好き放題やる阿呆じゃないだけマシだ。


 選択の結果として、住民に積極的に排斥しないが期待出来ない存在として認識された。村でも自警団でも良い評価は聞かない。皆、俺の前ではあからさまに言わないがな。

 一部では俺に過剰な期待をしている奴らが居るのも知っている。勝手なもので、何とかしてくれると思っているらしい。そんなに不満が有れば自分達でも出来る事は有るし、隣のカシムーン領に見に行けば幾らでも知見は得られる。創意工夫で幾らでも改善出来たはずだ。でも彼らは何もせず、ただ待った。期待を背負う主体になるのは嫌だからだ。

 何もしないなら文句も言うべきでない。そうは言っても大半の人間はそうしたものだとも分かっているがね。


 サマリード領の次世代領主はアモン。俺は彼が良い状態で領地を引き継げる様に基礎工事をしているだけに過ぎない。それも後数年で道筋が付くだろう。基盤さえ作ってしまえば誰がやっても成果は出せる。彼ら次第で幾らでも裕福な領地に変わるはずだ。


「まだまだやるべき事は多いけどね・・・」


「なぁに、どうしたのよ。急に独り言なんてさ」


「お嬢は先の事を色々と考えてるんだろうよ。いつもの事さ」


 君らは気楽でいいね。まぁ、戻ったら沢山働いてもらう事になる。頑張ってもらおう。



-リベスタン城塞 大広間-


 リベスタン城塞に戻って早々に呼び出された。どうやらマハルの出来事が先に伝わっているらしい。伝書鳩か早馬か分からないが、伝達手段がある様だ。なかなかどうして、この世界も侮れないものだ。


「その年齢で出場し準優勝とはな。しかも圧倒的な勝ち方だったと聞いているぞ」


 ハミルもゼベットも嬉しさを堪えきれない様子だ。現地で誰かに観戦させていたという訳か。たかだか新人戦だ。あの程度ならそれなりに鍛えていれば俺でなくとも充分勝てるだろうよ。少し喜び過ぎじゃないかね。


「本戦では有りませんから、相手が弱かったのでしょう。運も有ったかと思います」


 クレアは複雑そうな表情をしている。まだまだ城に囲っておきたいのが本心だろうな。


「ゼベットも鼻が高いだろう。よくここまで鍛えて上げたものだ」


「いえ、マリーナ様の努力の賜物かと」


「アモンも強くなれると良いな。引き続き、面倒を見てやってくれ」


「はい、お任せ下さい」


 何だかアモンのハードルを爆上げしてしまったかも知れない。弟よ、強く生きろ。

 

 報告が済んで部屋へと戻る途中、ゼベットに聞く事が有るのを思い出した。


「爺、ローランドと言う者を知っていますか?同門の後輩だそうですが」


「はて、門弟が多い流派ですからな。各地に居りますし、正直分かりかねますな」


「その者が言うには爺は高弟だと。そうなのですか?」


「在歴が長いと言うだけの事に御座いますよ。齢だけは大先輩ですからな」


 彼は笑って答える。今が引退気味なら若い頃はどうだったんだって話だ。馬鹿げた強さだったのは間違いない。好々爺然としているがこいつも大概化け物だな。王都で大会を観て一般的な強さの基準が分かった後だから余計にそう思う。


「マリーナ様は武道に関心を持たれたのですかな?」


「いえ、前と変わりません。私の為すべき事は他に有る。少なくとも武の道ではないと考えています」


 俺は身体の動かし方を理解するために彼に学んだだけだ。良い教師ではあったな。


「稽古の相手であれば何時でも応じますぞ」


「ありがとう。今後必要な時が来たら、お願いするかも知れません」


 まぁ、その時は来ないがね。現時点で俺に対抗出来る人間が居るとは思えないし。


 さてと、自警団に行ってノーマに今後の予定を話して来ないとな。作って欲しい物が沢山有る。彼女には存分に腕を振るってもらおうかね。

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じいの強さが気になる( ・`д・´)
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