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異世界に転生したけどファンタジーなのは俺だけらしい  作者: 三十六
探求編

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55話 武芸大会へ向けて 3

-商業都市トリスタン 中央通り 馬車の中-


 新人戦出場用のための装備を手に入れるため、再びトリスタンへと来ている。探している店は中央通りに在ったはずだ。


「出場のために装備を作るって、確かにマリーナに合う大きさの鎧は無いけどさ。領主様も相変わらず娘には甘いねぇ」


 今回はハミルの希望でもあるので財布は親任せになった。『装備一式が欲しい』と言った時の彼の反応が実に嬉しそうだったな。横で聞いていたゼベットも苦笑する程に。


 父親としては溺愛している愛娘におねだりされるというのは喜ばしい事なのかもな。親爺の甲斐性を発揮出来たからか、頼られているのが嬉しいのか。


 そう言えば何かを買って貰うのはこれが初かな?このぐらいの女の子が欲しがる物ってどんなのだろう。気にして来なかったが、全く無さ過ぎるのも不自然か。帰ったらリナにそれとなく聞いてみよう。


「まぁ、娘の晴れ舞台だからねぇ。父親ってそういうところ有るものじゃないの」


「狩猟用の恰好で出場するわけにもいきませんから。一応は貴族ですしね」


「それはそうなんだけどさ。で、どんなのにするつもりなんだい?」


「何も分からないので、実際に見てから決めようと考えています」


 貴族風の鎧など俺には見当も付かない。今まで城兵の装備ぐらいしか見たことが無いのだ。さすがに警備兵と似たような恰好ではあるまい。まぁ、サマリード家の格からすれば少しだけ贅沢な造りといったところを選べば無難なのかな。


「この辺りだったはずです。ミランさん、停めて下さい」


 小窓から御者のミランに指示を出す。俺も正確な位置は覚えていないが、少し歩けばすぐに見つけられるだろう。


「しかし、お嬢は良く見てるね。アタシらは覚えてもいないのに」


 いや、それは見ていた対象が違うから当然だ。俺は街並みや住人を観察していたが、タニア達は不審者や兆候を監視していた。彼女達の立場ならそうなるのが当たり前だ。


「それだけタニアさん達がしっかりと警護して下さったという事ですね。いつもありがとうございます」


 軽く頭を下げる。領外に出る時はいつも気を張っているのは見て分かっている。彼女のそういうところは信頼出来る。これはメリッサも同じだ。


「ん・・・まぁ、そういうことにしとこっか。改まって言われると照れくさいね」


 鼻の頭を掻きつつ答える仕草はまんざらでもないのか。いつも呼び出しに応じてくれて有難く思っているのは本当なんだがな。


 少し歩くと目的の店は見付かった。分かり易く鍛冶用ハンマーとアンビル(金床)の絵が描かれた看板が店先に掛かっている。


「ここですね。早速中に入りましょう」


 扉を開けて店内に入ると棚には各種武器防具が所狭しと並んでいる。端の方には調理道具や食器も見える。ここは鍛冶製品なら何でも取り扱っているのだろうか。


「いらっしゃい、お嬢さん方、今日はどんな物をお探しで?」


 声の主は禿げ上がった頭が印象的な恰幅の良い中年の男性。この店の主だろう。人好きのする笑顔が店の雰囲気を良くしている。これは良い店に当たったかな。


「こんにちは。幾つかこちらの品物を見せていただきたいのです。よろしいですか」


「棚に並んでる物なら好きなだけ見てってくれ。どれも腕自慢の逸品だよ」


「ありがとうございます。手に取ってみてもよろしいですか?」


「もちろんだ。実際に手に持って確かめてくれ」


 商品に自信が有るのが見て取れる。彼がここの鍛冶師なのだろうか。


 俺は近くの棚に陳列してある剣を手に取る。所謂【ショートソード】だな。鞘から出して剣本体を眺める。重さ、バランス、握りの具合も悪くない。腕の良い鍛冶師が打ったのだろう。中央通りに店を構えているのだから相応の品質ということか。


 続けて幾つか手に取って具合を確認していると店主に声を掛けられた。


「お嬢さん達、武器が欲しいのかい?」


「はい、今日は私が使う物を探しに来ています」


「ほう、ではそのお二人は付き添いかな。何か希望はあるかい」


 希望と言っても特には無いが、強いて言えば身体の小ささは如何ともしがたいので槍を使ってリーチ差を埋めようと考えているところだ。


「槍で良い物が有れば見せて頂きたいです。それと少し見た目の良い鎧が有ればそちらもお願いします」


 どうやら店先に有る鎧は大人の男性用らしい。明らかに俺には大きすぎる。


「うぅむ・・・お嬢さんの身体に合う大きさとなるとだいぶ打ち直すことになるな」


 そうだろうな、この歳ではなかなか所望する者も居ないだろう。


「多少値は張るが、最初から造った方が良いかも知れないぞ。どうするね?」


 今回は値段は気にしなくても良いだろう。頼めるならその方が安心かな。


「お願い出来るならその方が助かります。注文する上で何が必要ですか?」


「凡その外観と形状の希望は聞く。任せてもらってもいいがね。後は採寸だな」


 具体的な希望は無いんだよなぁ・・・少し贅沢な見た目という条件は有るが・・・。


 う~ん・・・・ん?思案していると机の上に飾ってある像に目が留まった。20cmぐらいの石膏の女神像?だろうか。よく見ると鎧みたいな恰好で槍を構えている。雰囲気も悪くないな。どこかの土産品だろうか。どことなく某社製の北欧神話の戦女神が登場するゲームに出て来そうな感じがする。


「形と外観はそこの像みたいな感じでお願い出来ますか?」


「ほう?そりゃ構わんが・・・本当にいいのかね。連れにも聞いてきたらどうだい」


 何か問題でも有るのかな?とりあえずタニア達を呼んで確認してもらう。


「どうしたんだい、お嬢。え?これに似た感じにするってのかい?う~ん・・・」


「これってアレでしょ?いいのかなぁ・・・見た目は確かに良いんだけど・・・」


 何だ?皆は分かるけど俺は知らない事情が有るらしい。


「で、どうするのかね。これで造って良いなら凡その外観が分かるので早めに仕上がるとは思うが」


 そうか、そもそも出場までに仕上がる必要が有るんだよな。であれば選択の余地もほぼ無いという事に為る。


「どのぐらいで出来上がりそうですか?」


「採寸してみないと細かくは言えないが、二週間程度は欲しいところだね」


 充分日程上は間に合うな。一か月必要と言われたら諦めるところだった。


「分かりました。これでお願いします。採寸をしていただけますか」


 元々の造形案も無かったのだから仕方あるまい。出来上がりが想像し易い分、俺としては気が楽だしな。デザイン的にも見栄えがするし、条件には合致するはずだ。

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