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異世界に転生したけどファンタジーなのは俺だけらしい  作者: 三十六
探求編

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50話 第二の村 3

-サマリード領 フォート開拓村-


「マリーナ、どういう事なのよ」


 タニアと違ってメリッサは状況を理解出来ていない様だ。


「お嬢、ミランは大丈夫なのかい。何か手は打ってあると思ってはいるけどさ」


 やはりタニアは正確に理解しているな。危機察知・状況判断力が優れている。


 ローガンが着替えて戻って来た時の格好で俺は概ね理解した。若干草臥れてはいるが、あれは旅装束の一部だろう。旅行者や行商人が好む服装だ。普段着よりも頑丈で風雨に耐えるが、その分値段が高く着心地は良くない。村で生活する者にはほぼ需要が無い。当然、ロコナ村の住人が持っているはずがない。


 彼らは村を出てから『それ』を手に入れていることになる。どうやって?ラドクリフが残して行った?現実的な答えは『誰かから奪った』だ。ラドクリフが去った後、彼らの生活は盗賊行為によって賄われてきた。全員では無いかも知れないが、単独犯ではない。複数で何度もやれば気付かれる。見ないふりをして目を背けて来たのだろう。ここまで生産力が低いのに何年も生存出来た理由は恐らくそれだ。そう考えると辻褄が合う。


 問題はここからだ。彼らがこの生活を悔いているなら、様子を見つつ受け入れても構わない。罪の意識が有ればより積極的な貢献をする者も居るからだ。それに弱みが有る方が使い易い。この場合、彼らは低姿勢で村への合流を願い出るだろう。


 そうではなく、盗賊行為を平然と行い、かつ正当化する思考を持っていたら?積み上げる努力を厭い安易に奪って賄うことに抵抗を感じない場合はどう出るか。恐らく力での解決を図るだろう。見たところでは、こうなる確率が高い。


 決めつけるのは良くない。だから彼らに主導権を渡した。穏便に事が進めば使える労働力が増えるので悪い条件ではない。だが身の程を弁えない行動に出るなら用は無い。


 まぁ、こちらは女と子供が4人だし。力での脅しが通じると考えたなら数で向かって来るだろう。あちらは20人近いからな。そうでないことを願おう。



 しばらく待っていると馬車に向かって近づく集団を見つけた。5人。それぞれ手に得物を持っている。縄を持っているから拘束する気なのだろう。どうやらあちらの結論は出た様だ。敵対するのならば仕方あるまい。

 ここでの目的に不穏分子の掃討が加わっただけだ。結果としてこの辺り一帯が使える様になれば良いのだからな。


 忍者で速やかに5人を始末してこちらに向かわせる。残りは十数名になるか。素人と変わらん相手だ。一方的でつまらんな。


「ミランは心配要りません。私たちはここで待機して様子を窺いましょう」


 まぁ、待っていても彼らが来れるかどうかはもう怪しいところだがね。



 彼らの後ろを付けていると3つに分かれた。囲んで捕らえるのが狙いかな。そこそこ慣れた動きをしている。こりゃ黒だな。何度もやってるクチだろう。これは排除で決定だ。


 自分が襲撃されると思っていない奴らを潰すのは非常に容易い。少しばかり離れたところで、それぞれ始末しておく。残りはローガンを含む6人だけだ。


 さて、どうするか。良く考えたらもう彼らと話をする意味が無い。待つ理由が既に無くなった訳だ。であれば、タニア達に忍者を見られる事無く済ませた方が良いだろう。


 俺は忍者の腕を4つにしてローガン達の後ろから飛び掛かった。後ろの4人の首筋目がけて苦無を飛ばす。残りの2人は上から刀で切り伏せる。皆、何が起きたか理解出来ていない顔だ。俺は放心気味の彼らの首を速やかに飛ばして回る。声を上げる余裕など与えない。


 順当に掃討が済んだので残りが居ないかアルとエクスで見て回る。念のためだ。


 さて、こちらは別に確認することがあるな。


「二人共、一緒に来て下さい。この建物を調べて見ましょう」


 予想通りならここは盗品の保管場所だ。何か有益な物が有るかも知れない。


「お嬢、待つんじゃないのかい?」


「もう彼らは来ませんよ。待つだけ無駄です」


 タニア達は怪訝そうな表情をしている。まぁ、分らんでもない。


「付いて来て下さい。中に入りますよ」


 鍵は掛かっていない。物音はしないので中に誰か居ることは無さそうだ。


 扉を開けて中に入る。明り採りの小窓が有るだけなので薄暗い。手前側から6つ、簡素な寝床が並んでいる。奥の左に木箱、右側には何かが無造作に積み上げられている。


「タニアさん、左奥の箱を調べて下さい。私はあちらを見てきます」


 右側の『何か』を指さして、俺は確認のために奥へと進む。


 近くまで寄るとそれが服と鞄の山なのが分かった。ほとんどが旅装と思しき物で村の住人が普段着る類の服ではない。一部は比較的新しく、程度も悪くない。破れたり、血が付いているものも有る。見ていて余り気分の良いものではないな。箱には何が入っているのだろうか。概ね予想は付くが確認はしておきたい。


 振り返るとタニアが呆然として箱の前で立っている。俺は近寄って箱の中を覗き込む。中身は予想通り、指輪・髪飾りなどの装飾品と銀貨・銅貨が適当に入っていた。


「何なのこれは。どういうことなのよ」


 メリッサは頭の整理が追いつかないらしい。タニアは溜息と共に受け入れた様子だ。これだけの物証を見たら疑いようもあるまい。苦り切った表情なのは仕方ないだろう。

 労働力が増えなかったのは痛いが、予定通りにこの地域は使えるので目的は達成だな。



 アルとエクスで一通り回ったが残りは居ない様だ。とりあえず脅威の排除は出来たと見て良いだろう。今は二匹で埋めるための穴を掘っているところだ。放置しておくと疫病の元になってしまう。出来れば火葬したいところだな。灰を畑に撒けば彼らも少しは役に立つというものだ。


 俺達は建物から出て外の椅子に座っている。タニア達が精神的に回復するのを待っているところだ。昔の顔見知りらしいからな、確かに辛い部分が有るのかも知れない。


「・・・マリーナはどの時点で気付いたんだい。警戒し始めたのは分かったけどさ」


 タニアは敏感に俺の変化を感じ取って対応していた。護衛が優秀で有難いね。


「訪れる前から疑問は有りましたよ。可能性の一つとして考えてはいました」


 数年単位で自給自足するには最低限度の必要な施設が無くてはならない。現地に行って条件が確認出来なかった場合は既にどこかの保護下に在るか、誰かの援助を受けている可能性が高いと予想していた。盗賊行為をしている可能性に思い当たったのはだいぶ後のことだ。有り得なくはない程度の話としてだが。


「ローガンが着替えて出て来た時に着ていた服で強い違和感を持ちましたね」


 アレがほぼ決定打になったのは間違いない。敢えて見せているのかと思った程だ。


「丁度その時だね、お嬢の雰囲気が一変したのはさ。アレで何に気付いたんだい」


「碌に収入源が無い村で普段の着替えにアレを使うのは不自然でしょう?」


「さっきからアレって何の事よ。私にはまだ理解出来ていないんですけど?」


「旅装の事だ。普段からあんなの着ないだろ。持っている奴の方が少ないはずだ」


「そうです。硬くて着心地は悪いし何より値が張る。複数持っている人も稀です」


「別に持っていても不思議は無いんじゃないの。格別高いって物でもないし」


「私らにはね。彼らにとっては十分高級品だし、その割に普段着がボロボロだった」


「それに彼を見たマーカスが何も反応しなかった。それ自体が珍しくないという事です」


 タニアは腕組みして考え込んでいる。言われて初めて分かることも有るからな。


「なるほどねぇ・・・アタシもまだまだってことだね。お嬢は大したモンだわ」


 タニアが俺の頭を撫でながら溜息を付いた。俺の変化に気付く時点で充分優秀だよ。


「う~ん、マリーナが気付かなかったら今頃どうなってたのかなぁ」


 仮定の話は好きではないが、メリッサはこういうところが鈍いので教えるべきか。


「元の村に合流せずに生活支援だけ取り付けるように要求してきたでしょうね」


「そんな都合の良い話が通る訳が無いだろう?」


「誰か捕まっていたら?人質を盾に要求されたら断れないかも知れませんね」


 こんな僻地の男所帯に若い娘が捕まれば碌な目に遭わないのは確実だ。


「うへぇ・・・そう考えると怖いねぇ。やだやだ、洒落になってないわ」



 二人が落ち着くのを待って馬車へ向かう。途中で露骨に血痕が広がっているのを見て驚いてはいたが、何が起きたかという現実をしっかり理解した様だ。死体の大半はアル達で穴に放り込んだが、一部はまだ草むらに転がっている。少し先の道路上ではエクスが死体の足首辺りを咥えて道路脇に引きずり込んでいるのが見える。


「アル達は非常に優秀ですからね」


 何か言いかけたタニアにそう言って黙らせる。詮索は今はやめてもらおう。

 奴らの死体は後でまとめて処理しなければな。穴掘って埋めるか焼くか。


 馬車に戻るとミランは中で静かに寝ているところだった。防音効果も有るからな。嫌なモノを見る事が無くて良かった。俺達が乗り込んだ振動で起きた様だ。


「あ、お帰りなさい。上手く行かなかったのですか?皆さん表情が暗いですけど」


「少し問題は有りましたが、解決しました。予定通りにこの地域は利用出来ます」


 結果としては上出来だ。後で生起したかも知れない問題の芽を摘むことも出来たし。


「村へ戻りましょう。ミランさん、お願い出来ますか」


 軽く伸びをしてミランは御者席に向かった。タニア達は気分的に堪えた様で既に突っ伏して寝ている。まぁ仕方ない。俺は馬車の扉をゆっくりと閉めた。



 村への帰り道、誰も何も話さない。二人共、いろいろと考える事が有るのだろう。何事も穏便に平和的に進むとは限らない。今回はそれを思い知ったのではないだろうか。


「マリーナは全然平気そうだね。私はちょっと気分的に疲れちゃったなぁ」


 メリッサは声に元気が無い。今は起き上がる気力も湧かないらしい。


 サマリード領は平和な田舎だからな。争い事自体が滅多に無い。耐性が無いのだろう。

 人が増えて発展すればその分だけ利害の対立が起きて争いは頻発する。どうにも避けられないし、そうなるのが当然なのだ。無秩序に争うことをさせないために法律・警察・軍隊が有る。必然的な流れというもので、これには慣れてもらうしかない。


 今は秩序を司る力が存在しないので、自分でどうにかするしかない。躊躇すれば相手の良い様にされるだけだ。今回だって対抗しなければ揃って慰み物にされていてもおかしくはない状況だったのだから。


「たまたま見に行ったところが実は盗賊の巣で、それを退治しただけの事です」


 単純に考えればそれだけのことなんだがな。見知った顔が居たのが原因か。


「以前は同じ村に住んでいた連中だからな。割り切れないところは在るさ」


 タニアも複雑な表情をしている。心中の整理を付けようと必死なのかも知れない。


 彼らの死体が揃って武器を所持していたのは二人共見たはずだ。襲撃の意図が有ったのは明白で、対処しなければ危険な状況だった。理解はしているはずなんだがな。


「少し寝かせてくれ。休めば気持ちも回復して落ち着くだろう」


 今は時間を置く事が必要か。野生動物相手の狩猟とは根本的に違うからな。自ら手を下していなくても気分の良いものでは無かろうよ。


 程なくして二人共寝入った様だ。まぁ、已むを得まい。寝かせておいてやるか。

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