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異世界に転生したけどファンタジーなのは俺だけらしい  作者: 三十六
探求編

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42話 生活水準向上の為に 4

-オルナの森 開拓予定地-


 引き続き伐採と作業場の設置を続ける。今日からは少しずつ倒した木の処理を進めていかないとだな。


「今日は倒れた木の枝を切り落として下さい。端材はこちらで集めますので」


 要は丸太にする作業だ。端材にしかならない枝は要らないかと思ったら、そこそこの太さの枝には使い道が有るようだ。ボンデに聞いたところでは、この程度の太さなら4mぐらいで切り揃えるとのこと。太い木だと長いまま使うことが多いそうだ。


 正直全く要らないので焼いたって構わないのだが、木工師としては無駄にするのは駄目らしい。ここは職人様に従っておこう。

 彼等は3人一組で器用に枝を落として行く。だいぶ道具に慣れてきた様だ。細い小枝はミランとカーラが鉈と手鋸で落としている。


 俺達はどうするのかというと、適度な大きさに切られた丸太を川岸に集積していく作業に当たる。既に結構な量が辺りに転がっているので運ばないと邪魔なことこの上ない。


「で、アタシらはどうやって運ぶんだい?このままじゃ流石に重くて厳しいね」


 こんなクソ重い物を手で運ぶのは俺達には無理だ。ドランとダリオは出来るかも知れんが、それでも数回が限度だろう。そのための道具を今まで準備していたわけだ。


「タニアさん、そこの丸太で試しにやってみましょう。私と同じ様にやって下さい」


 丸太の両端が少し内側に位置する所で網を跨がせる。網の四隅は輪状に加工しているので、先端を上に持って行ってフック状の突起に引っ掛ける。


「お嬢、これでいいかい。この後はどうするんだい?」


「ドランさん達は川辺に行って、台に上がってロープの傍に立って下さい。私が合図したら指示した向きにゆっくりと引いて下さい」


 ドランとダリオは頷くと小走りで川辺に向かっていった。


 タニアはずっと不思議そうな顔をしたままだ。これが何の道具か想像出来ないらしい。

 ドランが台上でこちらに手を振っている。ダリオがロープを握っているので準備は出来た。こちらも次に取り掛かろう。


「タニアさんはこのハンドルを回して下さい。少し回すと重くなるのでゆっくりで」


「はいよ、ゆっくりね。お、急に重くなったね・・・けど回せなくはないかな」


 丸太が浮き上がって来た。あまり浮かせても危ないからな。この辺でいいだろう。


「そこで止めて下さい。今固定しますね」


 ラチェット機構は作れなかったので棒を通し、ハンドルが逆回転しない様に固定する。


「手を放しても大丈夫ですよ。これで持ち上がりました。これはこういう道具です」


 滑車の組み合わせと歯数の異なる歯車を使ったウインチ擬きをこのために作った。凡そ16倍程度のはずだ。そのために少しばかり大型になってしまったが仕方ない。


「こんなので持ち上がったのかい。いやぁ、大した物を作ったねぇ」


 タニアにはかなり衝撃的だったようだ。まぁ、その反応も分からなくはないな。

 浮き上がったのでドランに合図を送る。丸太がゆっくりと川辺に向かって進み出した。


「へぇ・・・なるほどねぇ。あのロープはそういうことだったのか」


 ダリオが引っ張る速度に合わせて釣られた丸太が進んで行く。実際には懸架装置を引いているわけだがな。最初なので俺は丸太に合わせて川辺に降りて行く。降ろし方を教えないとな。タニアも後ろからついて来ている。

 

「ダリオさんは一旦引くのを止めて。ロープはそこの突起に巻き付けて下さい」


 丸太がズレない様に位置を固定する。降ろすのはこの辺りでいいかな。


「ハンドルを少し戻して、棒を抜きます。重さで回り出すので、抵抗しながら注意して降ろして下さい。手を離すと急に回転して壊れたり怪我したりする元になります」


 逆回転防止の機構までは作れなかった。そもそもベアリングを作るに至らなかったのでいろいろと俺的には不満が残るところだ。クランクとプーリーの技術は既に知られた技術なので使って問題は無い。効果と有用性が広く知られていないだけだ。

 降ろしたら地面を転がして端に寄せる。少し動かす程度なら男二人で余裕だろう。

 

「これで使い方はご理解いただけたと思いますので後は繰り返しです」


 3人共、感心したように頷いている。まぁ、後は使って慣れてくれ。


「ダリオさんはロープの固定を解いて。今度は逆に引いて下さい」


 そう言って俺とタニアは川岸を離れる。さっきの場所に戻って続きだ。懸架装置も上側に引き上げられていくのが見えた。ロープは輪状になって装置に繋がっているので、引く向き次第で上げたり下げたり出来る仕組みだ。

 

「どうです、これならそれほど辛い作業でもないと思いますけれど」


「そうだねぇ。準備にいろいろと掛かるけど、効果を考えたら文句は言えないね」


 少ない人数でやるには機械力でどうにかする他ないからな。機械力の発達した現代なら今の俺達がやっている内容は一人で出来る上に半分以下の時間で済むのだ。重機が使えればこの範囲の開拓など二日もあれば充分完了するだろう。


 まぁ、手に入る訳がない物をどうこう言うのは無意味だ。やめておこう。

 今の俺に作れるのはこの辺りが限界だ。この程度でも無いよりは全然マシだからな。

 とりあえず皆に道具の効果は理解してもらえたようだし、立木の除去は何とか済みそうだ。この後は根株と石の除去だな。ここからは少し時間が必要なんだよな。



 立木の切り倒しと除去が概ね済んだ。川辺には今回作った丸太が山と積まれている。


「随分と切ったもんだね。こんなに早く終わるとは思わなかったけどさ」


「この人数で出来るとも思ってなかったんじゃないの。マリーナの道具の威力だね」


「便利な道具が有るとこれ程違うとはね。俺達も頑張らないとな」


「今準備している水車とクレーンが出来上がればどれほど便利になるのかなぁ」


「何が違うって、これだけやって俺達そんなに疲れてないのが一番だよな」


 いや、そこそこ疲れているはずだぞ。まぁ全部手作業ってよりは遥かにマシだが。


 それぞれに思うところが有った様子だが、技術の重要性は理解出来たらしい。


「でもねぇ、ここからが結構辛いのよ。根っこ剥がすのってかなり手間だし」


「そうだな。流石に力でどうにかなるものじゃない。人手も必要だろう」


 馬鹿を言うな。ちゃんと考えてはある。まともにやる気など俺には無いぞ。


「それについては準備をしてあります。私の説明の通りにやってみて下さい」


 そう言って荷車から用意していた物を取り出す。皆に見せると一様に首を傾げた。


「これって炭で黒くした布と・・・塩?よね。これでどうするの?」


 この布は表面に蝋を塗り付けたものだ。ビニールが無いので代替だ。塩は岩塩だな。


「今から切株に大きく切り込みを入れていきます。そこに塩を詰めて下さい。それが済んだら布で覆います。剥がれないように強めに固定して下さい」


 全員、何を言われているのか理解出来ていない様子だ。分からんでいいから動け。


 促すとボンデ達は切込みを入れて回る。それを追ってミラン達が塩詰めをし、タニア達が布で覆う。難しい作業ではないのですぐに済んだ。出来上がりも確認したが問題無い。


「お疲れ様でした。では片づけて帰りましょう」


「お嬢?言う通りにしたけど切株は取らないのかい?」


「しばらくあのままですね。何度かは見に来ようと思いますが特に触りません」


 釈然としない表情だな。わざわざ疲れる作業をしたいわけでもあるまい。


「用意が出来たらまた手を貸して頂きたいと思います。今回はここまでですね」


「そうか。じゃあまた声を掛けてくれよ。次も必ず来るからさ」


「クレーンが出来たら次はこの道具だな。腕の振るい甲斐が有るってもんだ」


 ボンデ達には今回は良い刺激になった様だな。頑張ってもらいたい。


「何だかお腹空いたなぁ。マリーナ、戻ったら何か作ってよ。この間のアレとか」


 メリッサ、お前なぁ。ホントに遠慮しなくなったな、コイツ。


 他の奴らもそんなの聞いたら期待するに決まってるだろ。御者のミランがこっちを気にしているのが分かる。まぁ、今日はまだ陽も高い。戻っても時間は十分あるか。

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