20話 秘密の相方
-リベスタン城塞 マリーナの部屋-
そろそろ稽古で得る物が少なくなってきている。それだけ人の動きが染みついてきているわけで、悪いことではない。問題は加減出来なくなりつつある、という点だ。
本来の力が自然に動きに乗るようになると人間離れした結果になってしまう。人体の機能として有るはずの神経伝達や心理的な保護の働き、骨や筋肉の物理的限界などが俺には存在しないので見た目から想像出来る数倍の力が発揮出来てしまう。
当初の目的は達成しつつあるが、ここから先は周りに見せるべきではないだろう。無駄に目立ってしまうことは避けた方が無難だ。
ただ、それなりに面白くなってきたところでもあるので自分専用の練習相手を用意することにした。弓は相手が居なくても練習可能だが、体術や槍術は相手が居ない練習では限界が有る。何よりも面白くない。
というわけで今俺の目の前には忍者が立っている。元はアルとエクスだ。当初はアルだけ使って弄ってみたが、単純に体積が足りなかったのでエクスを足した。
マリーナを複製してから徐々に大きく形成していき、表面を最大限簡略化したら出来上がりの見た目が思っていたよりもグロかった。なので被り物を用意したのだが、身体全体を覆うことと、目立たない色合いを追求したらこうなった。
全体を鎖帷子で覆い、その上から黒色の布でそれっぽく形造ってある。
素材はほぼステンレスだ。山間部を探索していた際に、人が入れない場所に自分用の採掘場所を複数作っていたので現状ほぼ主要な鉱物の成分は手持ちに在ったりする。
クロムやニッケルだけでなく、エメラルドやサファイアも採れる場所があったのは収穫だ。やはり鉱物資源はまだまだ眠っているようだな。
素材からそのまま形成すると銀ピカになるので表面を薄く酸化させて黒くした。
中身を簡略化したのは反応速度を上げるためだ。見られない前提なら呼吸の所作などする必要が無い。体の動き、武器の運びなどに集中出来る分、動作が鋭くなる。
実際には自分で攻撃と防御を並行して行うので高速の約束稽古に近い。
朝になる前に犬に戻してそれぞれの中に外装を分けて格納すればいいだろう。
アルは自室前での監視とマリーナの警護、エクスは日中は探索に出しているので、これが使えるのは深夜から早朝まで。使うにはエクスを城へ戻す必要が有る。
俺には睡眠が不要なのでこいつで体術の鍛錬が捗る。そもそも普段から武器を持ち歩くことはない。体術を極めておけば問題は無いだろう。一番応用が利くのも体術だし。
試しに動いてみたら忍者の方がかなり速い。普段からしている擬態用の所作が如何にリソースを使っているかが良く分かる。これはこれで別の用途で使えそうだな。
どうせだからそれっぽく小手とか苦無の一式を作ってみよう。いい暇つぶしにもなるしな。




