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異世界に転生したけどファンタジーなのは俺だけらしい  作者: 三十六
探求編

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12話 ここはどこで俺は誰?

-リベスタン城塞 マリーナの部屋-


 ここに来てもう十日になる。少しずつだが状況が分かってきた。


 まず、ここには風呂が無い。毎晩小間使いが水桶と白布を持ってきていた。それが何かは暫く理解出来なかった。布で体を拭いて清めるのが風呂の代わりらしい。

 そしてトイレが無い。部屋の隅に在る桶がその役割のようだ。毎朝小間使いが桶を見て怪訝そうな顔をしていたが、理由に思い当たるまでに至らなかった。たまたま他の部屋を探索していた時に使っているのを見て、用途がようやく理解出来たのだ。


 まぁ、食事も排泄も欲求が無い身の上なので気付くまでに時間が掛かってしまった。

 俺に嗅覚が無いことも原因だな。窓の近くに置かれているのは少しでも臭気を避けるためだろう。おそらくどこかに肥溜めの様な集積場があるはずだ。


 文化レベルとしては相当低い。現代人だった俺には結構な衝撃だったが無いものはどうにもなるまい。とは言え、生理的欲求がほぼ無いので困るような事態にはなっていない。

 若干不衛生な環境だが、俺には影響が無いので気にはならない。

 この地域は雪が降るほどではないが気温がだいぶ低い。そういう季節なのか気候がそうなのか。あるいは標高のせいなのか。常に部屋では暖炉に薪がくべられている。


 俺はこの城塞の主(つまり城主)の娘らしい。名前はマリーナ。本来はもっと活発な娘だったのだろう。周囲の困惑した雰囲気を感じる。しかも全然喋らないしな。俺が言葉分からんだけなんだが、どう接していいか判断しかねて様子見されている感じだ。


 食事の際に毎回専用の大部屋(おそらく食堂だ)に案内されるのだが、いつも面子が同じだ。城主と俺、他には妙齢の女と男の子供。母親と弟だと思われる。

 作法など知ったことではないが今のところ問題は無いようだ。まぁ、正面の女を観察しながらの見様見真似で乗り切っている。会話が無いのはそういう決まりなのか、気を使われているだけなのか。両方かもな。


 建物内をうろつくことに制限は無い。中で見かけるのは給仕や警備兵、小間使いが全部で100人程度。警備兵が一番多い。給仕と小間使いは服装が違うので見分けられる。立場は給仕>小間使いのようだ。まぁ態度で分かり易いが。印象としては給仕がメイド、小間使いは下男かな。俺にはリナという名の12歳ぐらいの女の子が専属で付けられている。そりゃ娘に男性の下男が付くわけないわな。

 


 三日前から城内に犬を片方入れている。部屋の外を視るためだ。普段は扉の前で丸くなっている。要は監視カメラのようなものだ。置いた当初はリナが驚いていたが、今では慣れたらしい。良く連れて回っているので俺の飼い犬と判断したようだ。もう片方は城の外を見て回っている。当初は付近の地形を確認するのに両方使っていたのだが、全体的に森に囲まれた僻地だと分かったので片方を身の回りに置くことにしたのだ。



-リベスタン城塞 回廊 世話係リナ-        


 お嬢様は森で行方不明になってからだいぶ変わってしまわれた。

 無事に戻ってこられたのは私も嬉しい。でも何も話して下さらない。それどころか顔もまともに見ようとしない。ジル様の仰る通り記憶が混乱しているのでしょう。

 聞くところではご家族とも同じ状況らしい。周りの皆とも喋っている様子が無い。

 

「リナ、今のお嬢様は非常に難しい状態なのです。静かに見守るようになさい」


 ジル様に言われた時は意味が分からなかったが、今は理解している。少し寂しいけど、しばらくすれば以前と同様にお喋り出来るようになるでしょう。

 私よりもお嬢様自身の方が大変で、お気持ち的に辛いと思う。

 周りが知らない人だらけというのはかなり心細い。ましてお嬢様はまだ8歳。

 気丈に振舞っておられるのが健気で、お可哀想でならない。

 でも食事も摂られているし、臥せっているわけではない。時間が解決してくれるはずね。


 城内を見て回られる時は、以前のように走り回ったりせず、ゆっくりと歩くようになった。落ち着きのある様子で、何だか違う人を見ているよう。


 変わったところと言えば、何でもご自身で済ませるようになった。着替えはもとより桶の始末まで、私が見た時には済んでいる。朝起こしに来て部屋に入ると既に起きて身支度まで済ませている。今までそんなこと一度も無かったわよね?

 部屋に呼ばれることも全く無い。楽だけどそれはそれで寂しいわね。

 

 何日か前から部屋の前に犬が横になっているようになった。どうも以前ここで飼っていたベンとは違うようね?見た感じは似ているけど雰囲気が全く違う。首輪も無いし、ベンはもっと人懐っこい犬だったはず。私が傍に寄ってもこちらを見もしない。その割には撫でても嫌がらないし、咬まれるような素振りも無い。モフモフなのは同じね。

 お嬢様が中庭の散策に行かれる際は後をついて回っている。吠えることも無く、非常に大人しい。今のお嬢様には精神的な支えなのでしょう。少しでもお気持ちが紛れていると良いのだけれど。



-リベスタン城塞 領主夫人の部屋 ゼベット-


「ゼベット、ジル、マリーナの様子はどう?」


 ここ数日、毎晩同じことを聞かれる。クレア様も今回のことが相当堪えたご様子。


「我々のことも全く分からないようです。未だ難しい状態かと思われます」


 おそらく今後記憶が戻ることはあるまい。そう思える。その上でどうするかだ。


「可哀想なマリーナ・・・何か治す方法は無いものかしら・・・」


 諦めきれないのだろう。お気持ちは理解出来るが、我々にはどうにも出来まい。

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