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043 ロウィンの決意、シルヴァーナの涙

 ロウィンの番が来た。紫の水晶を見つめ、黙って手を伸ばす。指先が触れた途端、激しい衝撃が全身を突き抜け、意識は闇に吸い込まれていった。



 目の前に現れたのは、崩れゆくダークエルフの王国。


 地は崩れ、空は砕け、天から無数の神々が降り立ち、破壊を拡げていた。王国は、彼らの力によって終わろうとしていた。


 ロウィンは、その只中ただなかに立っていた。


「時空管理局の防衛はエリスとマリスに任せた。ここはもう限界だ。シルヴァーナ、君はザルクス様と娘たちを連れて脱出しろ」


 彼は目を閉じ、深く息を吸う。


「転移魔法で、時空の民に送り届ける。俺の命と引き換えに、クロノスの千年魔法で奴らを止める」


 鋭く、強く、言葉の一つひとつに決意が宿っていた。



 晩餐会の場にいた者たちは、静まり返った。


 シルヴァーナの顔から血の気が引き、ザルクスは険しいまなざしで事態を見つめていた。



「アルテミス、頼んだぞ。ダークエルフたちを……究極結界を……」


 声は弱まり、力尽きる寸前だった。


「サラ……裏切った形になってゴメン……」


 ロウィンは、最後に最も伝えたい言葉を心から絞り出す。


「シルヴァーナ……君と出会えて、本当に幸せだった。……愛している」



 そのとき、彼の身体からまばゆい光が放たれた。空間が震えるように光が広がり、全てを包んでゆく。


 試練の世界は明るく照らされ、ロウィンの意識が現実に戻った。


 シルヴァーナは涙を止められず、ただロウィンを見つめている。その視線には、言葉にならない想いがあふれていた。


 ロウィンは立ち上がる。まだ果たしていない約束が胸に残っていた。次に進むために、彼は動き出す。


 その様子を見ながら、ザルクスが占術師に歩み寄る。


「これは実際に起こる未来なのか?」


 占術師は短く息を吐いた。


「未来は常に揺れている。しかし、ロウィンが見た光景は、強い予知の力によって引き寄せられた可能性が高い。この試練を超えれば、彼は王国を大きく変える存在となるだろう」


 少し間をおいて、さらに続けた。


「ただ、それがすべてではない。大きな力が、彼を試す。最悪の形で終わることもある。だが、今は進むしかない」


 シルヴァーナはこらえきれずひざをついた。そして、泣き崩れた。


「ロウィン……あなたが守ろうとしているもの……私が……抱えるにはまだ弱いよ……」


 彼女はかすれた声で続ける。


「でも、あなたが愛してくれるなら、もっと強くなる。今度は、私があなたを支える」


 その涙は、彼女にとって新たな力となっていた。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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