037 ただ、君のそばにいる
「シルヴァーナの本音を聞くべきだろう」
ザルクスの言葉が会場に響くと、拍手と歓声が上がった。その熱気に包まれながら、シルヴァーナは表情を曇らせた。
「はい、わかりました……父上」
目を閉じて心を整えた後、彼女は立ち上がり、会場の皆に向かって言葉を続けた。
「私、決めました」
堂々とした声で、シルヴァーナは宣言する。
「選ぶべき道は、他の誰かに決められるものではない」
その言葉に会場は静まり返り、緊張が走った。三人の婚約者候補、アルヴァス、エリオット、ザイラスは、驚きと戸惑いを隠せない。
シルヴァーナはまずアルヴァスに視線を向けた。
「あなたの力は本当に素晴らしいです。王族として、そして戦士として、私を守ってくれることに感謝しています」
しかし、彼女の言葉は苦しげに続いた。
「正直言うと……その威厳が、私には重くて……一緒に歩むのが、怖いの」
アルヴァスは狼狽した。
「そ、そんな……私はただ、お前を守るだけだ」
シルヴァーナの顔に疲れが滲んだ。
「ありがとう。もう大丈夫です」
シルヴァーナは次に、エリオットを見据えた。
「あなたの情熱は本当に魅力的です。どんな困難も乗り越えようとする姿勢には、感動しました」
シルヴァーナは顔に困ったような笑みを浮かべた。
「ただ、あなたの熱さ……。私が支えられるのか、正直不安で」
エリオットは顔を赤くし、勢いよく立ち上がった。
「俺はいつだってお前を守る!」
その声には熱意がこもっていたが、シルヴァーナは顔をしかめた。
「ありがとう……その情熱に応えられるか、分からないの」
最後に、シルヴァーナはザイラスに目を向けた。
「あなたの知恵には、いつも助けられてきました。これからも多くのダークエルフを救うことでしょう」
警戒しながら、彼女は言葉を続けた。
「それでも、私にはあなたの本心が分からないの」
ザイラスは口元を軽く引き上げながら答えた。
「お前のために全てを捧げるつもりだ」
その言葉に、シルヴァーナの顔が険しくなった。
「……ありがとう。信じきれないところがあるの」
会場が再び静まり返る。
シルヴァーナは深く息を吸い込み、ゆっくりと顔を上げた。
そして、ロウィンをじっと見つめる。
「『ただ、君のそばにいる』って言葉、覚えてる?」
ロウィンは、シルヴァーナを見つめ返した
「あなたは無理に守ろうとせず、ただそばにいてくれる。それだけで、どれほど心強いことか、感謝している」
シルヴァーナはその手を伸ばし、ロウィンはその手を優しく握り返す。
「僕はただ、君の力になりたいだけだよ」
シルヴァーナは微笑み、しっかりとその手を握り返した。
「あなたとなら、どんな未来も一緒に歩んでいける気がする」
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