表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/923

028 王の器、神の誓い

「シルヴァーナ様、お疲れ様でした」


 従者のダークエルフたちが静かに駆け寄る。整った所作で頭を下げ、報告を始めた。


「前当主ザルクス様より、お言葉を預かっています」


 シルヴァーナは表情を崩さず、かすかに口元を緩めた。


「聞かせて」


「三勇者から面会の要請があり、現当主であるシルヴァーナ様に一任するとのことです」


 しばしの沈黙。シルヴァーナは短く返す。


「分かった」


 やがて彼女は、三勇者──戦神サラ、癒しの神レイナ、星の神かなえ──と対面することになった。勇者養成アカデミー「ソウルヴァース学園」の長、セオドール・グラシアスも同席している。


「こうして再会できたことを嬉しく思う。しかし、ダークエルフの当主として、今だからこそ語っておくべきことがある」


 シルヴァーナは目を閉じ、百年前の出来事に触れる。


「冥界は統治者を失った。最近になって、私に王位継承の話が届いたが──応じるつもりはない」


 サラたちは黙って耳を傾け、セオドールも真剣な面持ちで見守る。


「人々を守るという、私の果たすべき役割は、まだこの世界にある」


 シルヴァーナはさらに口を開く。


「私はノクシリオン──ダークエルフの神に仕える者。偽りなど一切ない」


 セオドールが問いを重ねる。


「学園の秘密について、どう受け止めていますか?」


 シルヴァーナは迷わず答えた。


脅威きょういになることは理解しています。だからこそ、守るべきだと考えています」


 その言葉に三勇者の表情が和らぐ。シルヴァーナが積み重ねてきた年月と変わらぬ誠実さを感じ取ったのだ。


 サラが言葉を選びながら尋ねた。


「あなたほどの存在が、今もバトルリーグに身を置く理由は? 冥界の王にも、神にもなれるのに」


 シルヴァーナは目を細め、笑みを浮かべる。


「戦いに勝つことが全てではありません。大事なのは、自分の力を確かめ、仲間たちと共に歩むこと。そして──かつてロウィンが教えてくれたように、力の在り方を見つめ直すことです。彼が示してくれた道を、この時代で引き継ぎたい」


(……本当は、バトルリーグのあとにロウィンと食事に行くつもりなんだけど……絶対に言えない)


 レイナがわずかに笑みを浮かべながら言った。


「あなたとロウィンは、時を越えても変わらない関係なんですね」


 冗談めいた口調ながら、優しさもにじむ。


 シルヴァーナは軽く目を伏せ、答える。


「そうね。百年の時が経っても、心の奥では変わらない気がする。ただ……以前より少し、素直になれたかも」


 かなえが神妙な顔で口を挟む。


「歴史の記録に、ロウィンと思われる人物がたびたび登場するのが気になります。本当に彼なのでしょうか? あるいは別の誰か……?」


 シルヴァーナは表情を引き締める。


「答えは私にもわかりません。でも、もし本当に彼なら──これからも私たちは、互いに関わっていくことになるでしょう」


 セオドールが重みある声で言葉を重ねる。


「歴史に名を刻む者たちは、真実を覆い隠し、新たな伝承を紡ぐこともある。ロウィンも、そうした存在のひとりかもしれません」


 深く息を吐き、皆の顔を見渡すシルヴァーナ。


「真実は、私たちがこれから築く関係の中で見えてくるものです。過去の絆を大切にしつつ、それに縛られず、新しい関係を築くことが、今の私の役目です」


 そのとき、腹の底から小さな音が鳴った。


(……何か食べたい。せめてチョコでも……)


 もちろん口に出せない。次の音が鳴らないよう、内心でひやひやしていた。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ