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155/923

155 滅界のテスタロッサ

世界はひとつでは足りず、交わったその先にほろびがいた。

シルヴァーナの居城。

玉座の間に、金属のつめが床をたたく音が静かにひびいた。


次元竜テスタロッサが姿を現した瞬間、空気の流れが変わる。かすかにれる魔力の層が、境界のまくを押し広げていく。


漆黒しっこくうろこに銀の光をまとった彼女は、シルヴァーナをまっすぐに見た。竜でも人でもない。ことわりから外れた、異界の存在がそこに立っていた。


「来たか、テスタロッサ。」


シルヴァーナの声は短く、らぎを許さない。


「目的は?」


テスタロッサの声は低くみ、奥底から重く響いた。その音には、はかれぬ力の気配が宿っている。


「異世界アザロスとの接続を断つ。奴らがこちらに手を伸ばす道を、完全にふうじたい。」


ロウィンが息をみ、低く言う。


「アザロスの軍は、奪った命を魔物に変え、戦場へ戻している。対話も信義しんぎも通じぬ連中だ。」


「この世界を守るため、すべてを断ち切る。」


シルヴァーナの視線が鋭くなる。ためらいは微塵みじんもなかった。


「ならば、我が力がるな。」


テスタロッサの瞳がかすかに光る。そこに灯るのは、紫電しでんにも似た魔力のきらめき。静かに流れ出したその力に、空間がわずかにねじれた。


「次元のあみき、道を消す。過去も未来も、この瞬間しゅんかんも。代償だいしょうは問うな。」


その言葉が落ちると同時に、天井が光を放つ。魔法陣ではない。言葉にも形にもならない空象こうぞうが、空間に浮かび上がる。


テスタロッサが一歩前に出る。途端とたんに空間の中心がねじれ、焦点を結びはじめた。結界のようでいて、どこにも属していない。それはこの現実にひびを入れる兆しだった。


誰も動かなかった。まるで、空気そのものが動きを封じているかのように。


ただ、世界の在り方が変わりはじめていることだけが、そこに確かにあった。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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