141 追放されたユイナ、最強の執事に拾われました
その夜。
ユイナが知らない場所で、
彼女の人生を「最初からやり直す」準備は、
すでに始まっていた――。
私は《クリムゾン・ガーディアンズ》の一員だった。
その日、酒場でメンバー全員に呼び出された。
テーブルの向こうで、リーダーのタツヤンが冷たい目を向けてくる。
「ユイナ。お前をパーティーから追放する」
静まり返った店内に、その言葉が響いた。
リカが腕を組み、私を睨みつける。
「あなた、私たちの経験値を盗んでるのよ」
デナヤンも続ける。
「これ以上、ただ飯を食わせるわけにはいかないな」
ポカッチが鼻で笑う。
「無能のくせに、よく今まで居座れたもんだ」
他の客の視線が刺さる。
喉が焼けるように痛くて、言葉が出なかった。
涙をこらえ、私は店を飛び出す。
「私だって……必死に戦ってたのに……!」
その瞬間、背後からタツヤンの声が飛んだ。
「装備もアイテムも、全部置いていけ」
ポカッチが追い打ちをかける。
「恥知らずが」
デナヤンも嘲る。
「全部、俺たちの物だろ?」
リカが冷たく見下ろした。
「そうね。あなたにもう、何も残ってないもの」
私は唇を噛み、黙って荷物を差し出した。
金も装備も、思い出までも。
――すべて失った。
それでも足は止まらなかった。
街を抜け、森をさまよう。
頬を伝う涙が、止まらない。
「うっ……うっ……」
心が崩れ落ちそうになった、その時――
空が眩しく輝き、世界が一瞬止まったように見えた。
光の中から、ひとりの男性が降り立つ。
整った顔立ちに、深い紅のスーツ。
彼は迷いなく私の前へ歩み寄った。
「……やっと見つけました」
そして穏やかに微笑む。
「お嬢様。昔からセクシーな装備をお好みでしたが、今回は少々……」
「……誰?」
彼はアイテムボックスを開き、上着を差し出す。
「私はリチャード。あなたの執事です。記憶を失われたのですか?」
私は黙って服を受け取り、着替えた。
そして彼を見上げ、かすかに問いかける。
「これから……どうすればいいの?」
リチャードは優雅に一礼した。
「まずは、再会を祝いましょう」
その言葉に、胸の奥で小さく希望が灯るのを感じた。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
続きはスピンオフ作品『最強執事と始める、追放勇者のフルリセットライフ』にて描かれます。




