64・俺、海賊王国に突入する
変な船が出てきた。
一言で表すなら、大砲が海に浮かんでる。
「やばいぞ」
オルカがシリアスな声になった。
「何がやばいんだい」
「あの砲は、いわばでかい銃だ。こいつを扱えるやつが王国に一人だけいる。海賊王の側近、ガンホーだ! 奴がとうとう出てきたか。いや、奴を引きずりだすほどに、海賊王国に深く切り込んだわけだな」
でかい銃としての大砲……!
なるほど、威力が大きそうだ。
大砲はキリキリと音を立てて動くと、俺たちに照準する。
あれだな。
一発目を雑に撃って、それで弾着確認をして二発目で当ててくるやつだな?
俺たちの周囲から海賊たちが離れていく。
巻き込まれるのを怖がっているのだ。
そして大砲が、轟音とともに火を吹いた。
こちら目掛けて、砲弾みたいなものが飛んでくる。
銃もだけど、この世界の火砲は呪法で作った弾丸を飛ばす感じなのだ。
砲はギリギリのところで俺たちに当たらない感じだ。
だが甘いぞ。
俺はすでに、技の準備を終えている。
「ワイドガード!! 海!」
砲弾が着弾する海をかばってガードする!
すると、砲弾は俺に当たったことになって、着水しない。
ゴリッとHPが減った。
「癒やしの水!」
アミラが俺のHPをフル回復させる。
「なにぃ……!? オクノ、お前何をやってるんだ!?」
「着弾したところから修正して当ててくるだろ。なら、着弾がよく分からん当たり判定で当たったのか当たってないのか、ずっと定かでない状況だといつまで当たらないんじゃないかと思ったんだ」
「……お前、頭がおかしいな……! だが、その発想は無かった。よし、加速するぞ! コールウィンド!」
追い風が吹き、俺たちのホリデー号が奔り始める。
案の定、大砲の側は動揺しているようだ。
着弾したっぽいものの、船にダメージはなくて、砲弾もなんだかふわっとした感じで受け止められて周囲に一切の影響がない。
つまり、一射目は何の成果も上げられなかったのだ!
さあ、二射目来い!
今度はやや上めに、砲弾がぶっ放されてきた。
発射の感覚は、一分ごとくらいかな?
「ワイドガード! 空!」
またも俺に砲弾が突き刺さる。
「癒やしの水! オクノくん、無茶しすぎだようー!」
アミラがめちゃめちゃ焦ってる。
いやあ、苦労をかけるなあ。
だが、俺がめちゃくちゃやってる成果はあがっていた。
大砲側が、猛烈に動揺してる。
空に放たれたはずの砲弾が消えて、どこにも着水していない。
ぶっ放すための目安が存在しない。
そうこうしているうちに、ホリデー号は大砲の目の前まで到達した。
大砲はどうやら割り切って、真っ向から砲弾をぶち込むつもりのようだ。
だが、遅いぞ。
舳先に、うちの団の最強兵器が立っている。
奴はすでに剣を抜いていて、敵の一撃を待っていた。
大砲から轟音が上がる。
まさに目と鼻の先。
必中の距離から放たれた一撃だ。
これを迎え撃つイクサ。
「望月!!」
イクサ最強の後攻の技、望月。
放たれた攻撃ごと、相手を叩き切る技なのだ。
剣が砲弾を叩き切り、衝撃波を真っ二つに断ち割り、その先にある砲を上下にぶった切った。
砲の後ろに立っていた、大砲使いらしき海賊も首と胴が泣き別れだ。
「ウ、ウグワーッ!!」
相変わらずどうやって発してるんだか分からない断末魔が聞こえた。
大砲の船が爆発を起こす。
その横を、高速で通過していく俺たちなのだ。
これを見て、大砲を避けるために逃げていた海賊船が慌てた。
俺たちを必死に追ってくる。
だが、背後で炎上する大砲の船が邪魔でついてこれないようだ。
しかもホリデー号は、オルカの呪法で加速している。
誰もついてくることはできないぞ。
そして、俺たちの道を塞ぐように現れた数隻の船が、海賊王国幹部のもののようだ。
その戦闘に立っているのは、長いローブを纏い、光り輝く剣をぶら下げた壮年の男だった。
スキンヘッドで眼光が鋭い。
「やあやあ、我こそは光刃剣のジェーダイ! ここから先は一歩も通さ」
「飛翔斬!」
言い切る前に、イクサが斬撃を飛ばした。
だが、こいつをジェーダイと名乗った海賊は、輝く剣で受け止める。
うわ、なんだあの剣!?
ラ◯トセイバーか!?
ここは仮に、ビームサーベルと呼んでおこう。
ビームサーベル使いのジェーダイが、なんと飛翔斬を反射させてくる。
「くっ!」
イクサがこれをギリギリで躱した。
なんと、イクサの攻撃が通用しない敵とは。
「ここから先は一歩も通さん。この俺に呪法や飛び道具は一切通用しないと知れ」
「やるようだな」
イクサが獰猛な顔をする。
好敵手を見つけた顔だ。
ここから、イクサとジェーダイの激しい戦いが幕を開ける……と行きたいところだが時間がない。
海賊船に追いつかれたら困るからな。
「イクサ、悪いけど俺がやっつけてくるわ」
「なにっ!?」
「オクノ気をつけろ。ジェーダイは海賊王国最強の剣士だ! 俺の銃も通用しない!」
「なに、俺の武器はもともとこっちなのだ」
俺は腕まくりして、力こぶを作ってみせる。
「突っ込んでくれ!」
「おうよ! コールウィンド!」
ジェーダイの船目掛けて、ホリデー号の進路が変わる。
俺は舳先目掛けて突っ走った。
そして、双方の船が衝突する寸前で向こうに飛び移る。
「飛んで火にいる夏の虫! 者共、やれい!」
ジェーダイが、私兵を繰り出してきた。
真っ白な鎧みたいなのを着た海賊たちだ。
だが、これには俺の後ろから飛び乗ってきたフタマタが対応する。
「わんわん!(セルフバーニング)」
フタマタの全身が燃え上がる。
そのまま、白い鎧の海賊たちに突っ込み、蹂躙する。
「な、なんだこいつウグワー!」
「燃えてるぞウグワー!」
さらに、船側からはカリナとオルカが海賊たち目掛けて射撃を行う。
応戦しようとする海賊は、フタマタが引きずり倒すのだ。
「小癪な……!! ならば直接、ジェーダイがこの剣のサビにしてくれよう! 光刃剣は錆びないがな!」
「うむ。なんか似たような武器を使うやつを世界的に有名なSF映画で見たことがあるぞ。なので俺はその動きを知っているのだ」
俺は両手を掲げ、グリズリーの威嚇のポーズみたいな格好をしながらジェーダイの周囲をゆっくり回る。
「素手で来るか! 体術が我が光刃剣に通用すると思うな!」
「そうれはどうかな? とあーっ!」
俺は奇声を上げて襲いかかった。
「ふなーっ!!」
ジェーダイもこれを迎え撃つ。
「とあー! ……幻炎術!」
「ぬおーっ! いきなり目の前に炎が! 卑怯なりーっ!!」
わはは!
正面から掛かっていくと誰が言った!
幻の炎で、ジェーダイが一瞬怯んだその隙に、俺は奴の背後に回った。
そこで、閃きが宿る。
ピコーン!
『ドラゴンスープレックス』
ジェーダイの腕をガッチリホールドし、そのままブリッジを作って背後に投げつける!
「ウグワーッ!?」
「もう一丁! ドラゴンスープレックス!」
ここでなんと、俺の体に光の線が宿った。
一人連携だ!
『二連続ドラゴン』
オリジナル名称が出るのだなあ。
「ウグワワーッ!!」
ジェーダイの頭が甲板に突き刺さった。
そのまま、垂直に突っ立っている。
ビームサーベルが光を失い、ぽとりと落ちた。刃の部分が全部ビームなのな。柄だけになってる。
もーらい。
「ジェーダイ様がやられた!?」
「げげえ、化け物!」
「こんな化け物がいる場所にいられるか! 俺は逃げるぞ!」
白い鎧の海賊たちが、次々と逃げていった。
このジェーダイ、個人の武力だけでこいつらをまとめてたっぽい。
凄いやつではある。
ずぼっと引っこ抜いたら、完全に目を回していた。
うーん、この人材、欲しい……!!
イクサの斬撃を反射できるやつなんか、世界広しといえどもほとんどいないぞ。
「オクノ! 行くぜ! ぐずぐずしてねえで戻ってこい!」
オルカの声がしたので、俺はジェーダイを担いで船に戻ることにした。
「げえ!? お前、なんでジェーダイを連れてきやがるんだ!」
「いや、あのビームサーベルの技絶対おもしろいって。こいつ仲間にするわ」
「俺の技を防いだ剣士……。オクノとオルカ以外にもこれほどの強者がいたとはな。面白い」
イクサは賛成みたいだ。
「つるつるだー」
おいルリアやめろそういう話題を口にするのは。
「はいはい。じゃあ、とりあえず闇の支配をかけて船底で縛っておくわね」
ラムハは手慣れたもので、さっさとジェーダイを拘束した。
ジェーダイが敗れたのを見て、他の海賊たちも完全に腰が引けている。
俺は舳先に立って、声を張り上げた。
「道を空けないとお前らもこうなるぞ!」
「裂空斬!」
俺が指し示した先で、イクサがジェーダイの船を破壊する。
「ヒエッ」
海賊船のあちこちから悲鳴が上がり、スッと道が開いていった。
海賊王に忠義立てする奴はいないのかな?
まあ、海賊だもんなあ。
そんなわけで、いよいよ海賊王国の本拠地なのだ!
そして、俺たちが向かう港の辺りで見たことがあるような男が槍を構えてこっちを睨んでいる。
あー、なんかクラスメイトの中にいた気がするなあ、あいつ。
カバーリング対象は人でなくてもいい!
そして、版権的にギリギリなビームサーベル使いのイメージはメイ○・ウィンドウですね!
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