表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

181/181

エピローグ・俺、伝説になる

 夕方になると、酒場も喧騒に満ちてくる。


 どやどやと、若者達の一団が入ってきて店の一角を占領した。

 彼らは料理を注文したり、談笑したりしつつ……。

 ふと、彼らのリーダー格らしき、槍を持った若者が壁際に座す吟遊詩人に気付いた。


「やあ、吟遊詩人さん」


「どうも。一曲どうです?」


「お願いします。オススメのがあれば」


「では、定番の英雄オクノと仲間達の叙事詩を……」


 すると若者は顔をしかめた。


「おや、お気に召しませんか」


「そうじゃないけど……。親父の話は周りの奴らがめちゃくちゃ聞かせてくれたからなあ。本人は笑うだけでなんにも言わないんだけど」


「ほう、あなたはもしや、英雄オクノの?」


「黙っといて。それがバレると、俺のことをそういう目でしかみんな見なくなるんだから……!」


「アズマ、何をしているんだ? もう食事が来ているぞ」


「分かってるよベイカ。ああ、もう、その叙事詩でいいや。流しといてくれる?」


 硬貨を受け取ると、吟遊詩人は「まいどあり」と呟いた。


 若者を呼んだのは、腰に立派な剣を穿いた長身の美少女。

 身のこなしから、育ちがよいのであろうことがよく分かる。


「いざ語らん、かの英雄の物語を。

 英雄は混乱を切り裂き、戦乱を収め、キョーダリアスへと降り立った。

 その名はオクノ。

 万の民を守り、千の戦を鎮め、百の味方とともに邪神を打ち倒す新しき英傑……」


「始まった始まった」


「アズマ、お前まだあの叙事詩嫌いなの?」


「偉大なる父を持ったことの何が悪いのだ。私の父はアズマのお父様に世話になったのだ。だからこうして、辺境伯令嬢でありながら君のとなりにいるというのに」


「あー、うるせえうるせえうるせえ! 耳タコなの!! もうね、いっつも聞いてるの!! うちのおふくろ達がめっちゃくちゃ聞かせてくるし、兄弟達はみんなこれが大好きだし!! それにな。英雄の長男に向けられる期待は重いんだぞ……!!」


「そうそう。アズくんは大変だったねえ」


「うるせえぞおばさん!!」


「あー、ひっどぅーい! 同い年の女の子をオバサン呼ばわりしたらいけないんだぞーっ」


 若者達は五人。

 槍を持った体格のいい若者、アズマ。

 剣を携えた上品な少女、ベイカ。

 呪法を行使するらしい、アズマにおばさんと呼ばれていた少女。

 斧を腰に下げたリザードマン。

 明らかにロボットっぽいの。


「我が師、ダミアンは言った。世の中なるようにしかならんと。適当に生きようぜアズマ」


「なんてロボっぽくないアバウトなことを言うんだ……」


「わっはっは! 両親にドラマがあるだけいいじゃねえか! 俺の親なんぞ、船で仕事してたら世界を救う旅に同行することになってただけだぞ! あ、英雄オクノがな、邪神をぶっ倒して戻ってきたのはちょっとだけ記憶にある。俺はまだちっちゃかったけどなー」


「お前は一番年上だもんなあ」


「製造年月日で言えば、僕が一番年上だが? 古代文明だからな」


「みんなー! お料理冷めちゃうよー!」


「そうだった!」


「食うべ」


「いただくとしよう……時にアズマ」


「んお? なんだ?」


「次の冒険の話だが、六欲天が新しい大陸への道を開いてくれることになったんだろ? イー・ズグラックの本体を倒した褒美として」


「ああ、そうそう。足がなー。船が必要になるんだよなあ」


「人魚の手でも借りちゃう? ロマお姉さまにお願いするとか」


「ロマ母さんかあ……。あの人だけずーっと若いんだよなあ……。俺はなにげに苦手なのだ……」


「人魚はロボを管理しているからな。人魚の保有する技術力は世界一だぞ?」


「船の管理なら任せとけ! リザードマン一族に代々伝わる技がだな……」


 賑やかに盛り上がりながら、料理を平らげていく若者達。

 だがそんな酒場へ、駆け込んでくる者があった。


「た、大変だーっ!! 空から、空から何かが!!」


「お?」


 料理の残りを口に押し込んで、若者達が外へ飛び出す。


 吟遊詩人はそれを、微笑みながら見つめていた。


「かくして伝説は次なる世代に受け継がれ……物語は続いていく。

 いざ語らん。

 新たなる英雄の物語を。

 世界を開き、未知なる大地へと命をつなげる、新しき英雄の名は……」


 外では早速、空から降りてきた者との戦いが始まっている。


「こいつが世界の外から来るって敵か! おら、みんな早速連携行くぜ!!」


「もちろん! いくよお! フタマタちゃん直伝、火の鳥!!」


「ミッタク師匠直伝、撃魔斬!」


「ヤレヤレ、師匠の名前を言わないといけない縛りかな? なら僕はオリジナルだ! 喰らえ、目からビームッ!!」


「一文字斬り!!」


「行くぜえ!! 完成版ッ無双三段ッ!!」


『火の魔ビーム一文字三段』


「うひゃー! また変な名前出たー!」


「まだまだ降ってくるぞ! よーし、めいめい、各個撃破! 無理だったら連携な!」


「いつもの出たとこ勝負だな。陣形は?」


「インペリアルクロスで行くか!」


 賑やかに、そして明るく、若者達は道を切り開く。

 槍が、剣が、斧が、機械が、呪法が炸裂する。


 そして、アズマの頭上に明るく輝くものが現れた。


「来たあっ!」


 ピコーンっ!


 電球の輝きが、世界を明々と照らし出す。


 それこそ、英雄オクノが切り開いた未来を、さらに先へ先へと繋げていくための道標なのだ。






 ピコーン!と技を閃く無双の旅!

~おわり~

これにて完結です!

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
面白かった。
[良い点] とても面白かったです! 深く思い出に残るお話になりました。確実に。 [気になる点] よく織り込んである物語なので、ちょこちょこ読み返すと 「あっ!」ってなる箇所があるんですよね。 軽快さと…
[良い点] 無茶苦茶面白かった
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ