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転落したけど、ナニクソ精神で頑張ります。  作者: ヒコしろう


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ジャガイモの改良と告白



ドノバンおじちゃん特性のスコップを片手に、


家の畑の隅に有る〈ビルの秘密の畑〉に来ている。


だいぶ頑張って三メートル四方に広げた自分専用の畑で行っているのが、ジャガイモの品種改良である。


品種改良といっても、掛け合わせよりもまずは厳選作業といったほうが良いだろう。


〈豊穣〉スキルを使った畑に種芋を植えて、豊穣スキルの効果でスクスク育つ苗に〈植物鑑定〉をかけて、


〈病気に強い〉・〈美味しい〉・〈多く収穫できる〉


等の特性の物を選りすぐり、人工受粉をして種を収穫する。


〈ジャガイモも種が出来るのは知識としては知っていたが、はじめて見た…〉


その種をフルパワー〈豊穣〉スキルで耕した場所に蒔いて、〈植物鑑定〉で、


より良いジャガイモを選りすぐるのを繰り返すと、


〈豊穣〉スキルで出来る芋のクオリティは代を重ねる毎に上がり、


一度品種として確定すれば、

種芋は、他の品種と混ざる事なく美味しい芋のまま使える。


そして、もう1つ、


俺の〈豊穣〉スキルで耕した畑でなければ、徐々にクオリティが戻ってしまうので、旨いジャガイモの種芋は、定期的にこの村から買う必要がある。


父ちゃんと母ちゃんの目を欺く為の普通のジャガイモ畑の一角で〈厳選・配合〉を繰り返す予定だ。


フルパワー〈豊穣〉スキルの畑は一年の成長が一週間程になるので、半年もかからず収穫出来るジャガイモは、3日経てば収穫出来る。


まさか種芋を植えてすぐに収穫しているとは両親も気が付かない…



と、思っていたが、


息子が父ちゃんの真似をして畑を耕しているのが楽しくて、日がな1日母ちゃんに観察されていたのには、


全く気が付かなかった…


四歳の息子が耕して、種芋をうえた一時間後にはニョキニョキと芽が出て、夕方には、ジャガイモの花が咲き、


息子はその芋の株を幾つか残して引っこ抜き、


何食わぬ顔で晩御飯を食べている。


母ちゃんにとっては軽いホラーだった様で、


その日の夜には、父ちゃんにバレて、


次の日の朝…現在、絶賛尋問中である…


俺の畑の前で両親に、


「で、これは?」


と漠然とした質問をされる俺…


「これとは…ジャガイモでしょうか…?」


と俺が答えると、


父ちゃんが、


「ビル、ジャガイモは解るんだが、なんで昨日植えて、もうこんなに育っているのかが解らないから聞いているんだぞ。」


と、ちょっと怒っている。


かと言って、いくら父ちゃんと母ちゃんといえども、


〈お漏ら死〉して爆笑した神様達のお情けで転生したなんて…言えない…。


これは、


〈ピオニール様に一肌脱いでもらおう!〉


と思い付いて、


「父ちゃん、母ちゃん、


今から話す事を信じてくれる?」


と俺が話すと、


両親は顔を見合せ、コクリと頷く。


「何が有ろうとビルを信じるぞ!」


「私もよ、だから教えてビル…」


と、深刻な顔の二人に、


「夢の世界でね、


〈ピオニール〉様っていう神様に逢ってね。


〈頑張ってる、父ちゃんや、母ちゃんの役に立ちたいです。〉


ってお願いしたら、野菜がグングン大きくなる力と、野菜や木が良い子になるか判る力をくれたのね。


それで、父ちゃんや母ちゃんをビックリさせたくて実験してたの…」


と…


〈嘘は言ってない…はず…〉


ポカンとしている両親…


〈イケるか?どうだ!?〉


と、祈る気持ちの俺に、


父ちゃんが、


「ビルの夢の世界で、ピオニール様はどんな方だった?」


と質問されて、


俺が、


「えーっと、たしか…作業着姿の髭モジャの父ちゃんみたいな…」


と言いきる前に、


「でかしたぞビル、


教会で神様の石像も見たことないビルがピオニール様の姿を正確に言い当てた…


つまり、神様に逢った証拠だ。」


と、俺を抱き上げる父ちゃん。


母ちゃんも喜んでくれているようだ…




それからは、家族の協力もあり、


二度目の作付けに間に合った種芋を、父ちゃんがメインの畑に植えて、


普通の畑でも改良の効果が出るかを確認と、


〈豊穣〉スキルを使用した〈ビルの秘密の畑〉では引き続き種芋の栽培を行った。


十分な量の種芋も確保出来たので、


スコップの御礼も兼ねてドノバン工房に、ジャガイモを一箱届けると、


その日の夜に、ジャガイモ料理を持ったドノバンさん一家がウチに来て、


「このジャガイモは何だ?!


こんな旨いジャガイモは、はじめてだ!」


と大騒ぎになり、


翌日、村の全員でジャガイモパーティーをしながら、ピオニール様の夢の話を皆にする事になった。



話を聞いたアーガスじいちゃんが興奮し、


「ピオニール様が、

開拓村の為に使徒を使わして下さった。


この村の名産として、このジャガイモを売りだそう!


ビリーさん、この芋の名前は?」


とまくし立てるが、


父ちゃんはアワアワして、


「まだ、何も決まって無いです。」


と答えると、


アーガスじいちゃんは、


「では、この芋の名前の命名権をワシに譲ってくれぬか?」


と頭を下げる。


父ちゃんは、チラチラ俺を見て助けを呼ぶが、


俺が、ニッコリ笑って頷くと、


「アーガス様におまかせします。」


と父ちゃんが焦りながら答えていた。



アーガスじいちゃんは、すぐに家に戻り、


報告書とジャガイモの現物を王城宛に送っていた。



数ヶ月後に、王様からの手紙が届き、


『この度のジャガイモの品種改良、誠に大義であった。


アーガスの報告を信じない訳ではないが、城の農園にて検証した上で、


報告通りの収穫が有れば、食糧難の他の開拓村の救世主となるだろう。


ビルという少年と神の話も合わせて、開拓村に希望を与えるジャガイモの名前の命名を私にさせてくれるとのことで、感謝する。


私からジャガイモと、アーガスの開拓村に〈ホープ〉の名を与える。


無事に開拓期間を終えて、ホープ村として王国に加わってくれる事を楽しみにしておる。』


と書いてあったそうだ。


開拓の最中に王様から名前を賜る事は稀らしく、名産のジャガイモも相まって、かなり注目されているらしい。


開拓期間が終って〈村〉になれば、移住者も増えて、発展が見込める…


父ちゃんの農園は勿論、


村の皆もお客さんが増えるから安泰になる可能性が高いので、


王様からの手紙の内容を聞いて喜んでいる。


〈ホープ〉村かぁ~、


なんだか凄い名前の村になったな…




読んで頂き有り難うございます。


「ちょっと応援してやるか!」と思って頂けた方、


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