開拓村と一緒に成長する

四歳になり、

体の成長に合わせて、体力や魔力も上がっているが、

一番の変化を見せているのが体格だ…

と言っても〈太った訳では無い〉成長して服がきつくなっただけだ…ほんとだよ。

なので、母ちゃんに連れられて〈ドノバン工房〉に来ている。

マリーさんに少し大きめの服と、アルフさんに靴を作って貰う為なのだが、

ドノバンさんが、

「俺だけ仲間外れで、ビル坊に何も作ってやれない…」

と、しょんぼりしていたので、

「ドノバンおじちゃん、僕スコップが欲しい！

父ちゃんのは大きすぎるし、お砂場遊びセットのシャベルでは小さいの…

僕ぅ、ジャガイモを育ててみたいんだ。

いっぱいジャガイモ作って、村の皆にあげたいのぉ…

駄目かな？」

と可愛くおねだりしてみた。

ドノバンさんは、ニッコリ笑って、

「町から注文された仕事が終わったところで暇だったんだよ。

材料も余ってるから、軽くて丈夫なスコップをこしらえてやるぞ、ビル坊！」

と、ルンルンで鍛治場に入って行った。

母ちゃんが、

「ビル！ドノバンさんに勝手に注文しちゃ駄目でしょ！？」

と、お叱りを貰ったが、

俺の採寸をしながらマリーさんが、

「当面仕事が無くて暇してる旦那のやる気が出て丁度良いわ。

町の兵士隊からの片手剣制作の依頼が終わったから、

私が、〈仕入れた鉄の残りで村の農具を作って。〉

と言ったんだけど〈やる気が…〉とか言ってグータラしてたのよ。」

と助け船を出してくれた。

母ちゃんは、

「すみませんねぇ」

とマリーさんに言って、渋々ではあるが、息子のおねだりを許してくれたらしい。

マリーさんに続いて、アルフさんが足の採寸を始めながら、

「ビル君は将来何に成りたいの？」

と聞く、

〈正直ノープランだ…

この開拓村が正式な村に成って、一生農園の跡取り息子でもいいが、

父ちゃんみたいに、一度冒険者に成るのも悪くない…〉

「うーん？」

と考えた末に、

「強い魔物もやっつけれる農民！」

と答えた俺に、

アルフさんは笑いながら、

「ビリーさんみたいに、〈Bランク〉冒険者の農家も珍しいけど、

ビル君も、〈強い農民〉かぁ…

五歳になって教会で〈祝福〉を受けたら〈強くなれそうな職能〉か〈農家に有利な職能〉を授かるといいな。」

と頭をなでてくれた。

この世界では、スキルとは別に〈祝福〉が貰える。

と言っても、生えやすいスキルの傾向や、レベルアップ時のステータス補正が変わる程度で、

〈戦士〉の職能持ちが農家に成っても良いし、

〈魔法使い〉の職能持ちが商人に成っても良い。

畑を荒らす魔物を切り裂く農民や、

盗賊を焼き払う商人が出来上がるだけで、〈職能〉が全てでは無い。

俺は、

「うん！」

とアルフさんに笑顔で返事をした。

まぁ、ピオニール様からは、

「気楽に楽しんで。」

と言われているから、たとえ騎士や戦士の職能でも騎士団等には入らないし、

魔法使いや僧侶みたいな職能でも、たまに魔物狩りで小遣いを稼ぐ程度の〈農民〉を目指す予定だ。

多い魔力量と水撒きに最適なスキル、

それに〈豊穣〉という生産力と品質向上を兼ね備えたチート級の農民スキルを使わないのは勿体ない。

父ちゃんと母ちゃんに、俺の〈農民無双〉で楽をさせてやりたいのよ…

日本に残した両親の分まで親孝行して、帳尻を合わせたい自分のエゴかもしれないが、

可能な限り、父ちゃんと母ちゃんには幸せでいて欲しい…

その為にも、強くて何でも出来る農民に成りたいのだ。

〈祝福〉を受けるまでに、もっと頑張って〈出来る事〉や〈必要な物〉を増やしたり手に入れなければ…

まずは、村の為に何か日本の知識で役立つ物を考えて〈村の特産〉にするか、

豊穣スキルで激ウマな作物を作り付加価値を目指すあたりから始めてみよう。

開拓村も７年の開拓期間が満了し、８年目に入れば正規の〈村〉になる、

その時に〈特産〉が有るのと無いのでは集まる村民の数が変わってくる。

出来たばかりの村は土地も安く、開業資金も安いから少しお金の有る入植者は開拓済みの村に来る。

デカイ商会の末っ子等が入植すれば、ウチの村の販路が広がる可能性もある…

村の為に知恵を絞り出すのだ！

死ぬ間際、腹の中身を絞り出せなかった恨みを晴らすかの如く、

惜しみ無く村の為に…