ウサギと会議と乱入者
ダンジョンマスター、ウサギの〈アリマ〉を連れて、
ジールさんと会議をするために教会に移動する。
俺の横を〈ピョコピョコ〉と、ついてくるワンピース姿のウサギ…
可愛らしいが、親達の〈仇〉である。
物凄く複雑な気分だ…
しかし、なんだか〈恨み〉や〈殺意〉的な感情は薄れてしまった。
教会に入り、ジールさんに、
「ホープ村を壊滅させたスタンピードの元凶と成った、ダンジョンのダンジョンマスター、ウサギの〈アリマ〉ちゃん数百歳です。
名付け親はミミちゃんです。
宜しく。」
と全部の情報をまとめて報告した。
ジールさんは、三秒ほど固まったが、
「理解しました。」
と、言って、〈アリマ〉に
「ようこそ聖都ホープへ、ビル様の代わりにお聞きしたい事が数点御座います。」
と話を始めたジールさんに、
〈えっ、マジで理解したの?
慌てて「えっ、なんですか?」となると思って情報量マシマシで伝えたのに…〉
と驚く俺をよそに、
「では、〈アリマ〉さん、
スタンピードはわざと発生させたのですか?」
と質問する。
アリマは、
「いえ、わざとでは決して在りません。
ただ、私が管理しているダンジョンには、人が来なかったので、魔物も倒されることがなく、溢れてしまい…」
と申し訳無さそうな〈アリマ〉
すると、ジールさんは、
「では、スタンピードが起こらなくする方法は?」
と質問する。
アリマが、
「魔物を倒す〈人〉がくれば…
あと、人が沢山来てダンジョンに居れば居るほど〈ポイント〉が溜まり、
スタンピードが起こらない設定にも変えれます。」
と答えると、
ジールさんは、少し怒った様に、
「では、ナゼその設定をしていないのですか!?」
と問いただす。
アリマはシュンとなり、
「したかったのですが、誰も来ないダンジョンでは、ポイントが貯まらず、
同士討ちの魔物のポイントで細々と数百年凌いでおりました…」
と、説明する。
俺は、益々怒る気にならなかった。
ジールさんも同じ気持ちの様で、
「ふぅー」と、ため息の様な深呼吸をしてから、
呆れたように、
「では、貴方は人間に敵意は無のですか?」
と質問すると、
アリマは、
「不運にもダンジョンに取り込まれ、マスターをしておりますが、
私自身、〈美味しい野菜〉でも有れば基本ハッピーな〈角ウサギ〉でしたから、
ダンジョンの力で知恵をつけて進化しましたが、〈人間を恨む〉とかは全く…
むしろ、ダンジョンポイントが足りずに無法地帯のようなダンジョンにしてしまい、管理が出来ずに〈人〉に迷惑をかけた事が心苦しいくらいで…」
と頭をさげる。
俺は、
「じゃあ、アリマ、俺と友達になってよ。」
と提案してみた。
ジールさんは、何となく俺の行動を理解した様だが、
アリマはキョトンとして、
「私は、あなた様のご両親の仇と伺っております…」
と困惑している。
俺は、
「アリマが、悪い奴ならウサギ鍋にでもしただろうけど、」
と話し始める。
〈ウサギ鍋〉と聞いて青くなるウサギをよそに、
「アリマは、何とかしたいけど出来なかったんだよね?
ポイントがなかったから…
だから、俺たちが友達に成って、ダンジョンに潜るなり、住むなりすれば、
スタンピードは起きない様に出来るんだよね?」
と提案するが、アリマは、
〈はてな?〉と成っている。
暫く考えたが、
「住む?」と首を傾げるウサギに、
俺が、
「ダンジョンの入り口辺りに、魔物が絶対に侵入しないエリアを作って、住むんだよ。
あれでしょ、ダンジョンってゴミすら定期的に消えるんでしょ?」
と俺が話すと、
少し分かり始めたウサギは、
「はい、ダンジョンポイントで出した物以外は同じ位置で地面に触れていれば数日で。」
と答える。
俺が、
「だったらゴミや、汲み取り問題もないね、
じゃあ、畑は?」
と質問すると、
アリマは、
「ダンジョンポイントさえ有れば、畑を設定して、作物も育てられます。」
と、徐々に理解し、興奮する。
俺が、
「年中過ごしやすい気温とかは?」
と質問すると、
アリマは
「可能です、むしろ変えるのにポイントが必要です。」
と笑顔で答える。
最後に、
「俺と友達に成って一緒に〈ポイント生活〉しますか?」
と質問すると、
「はい!」
とアリマは答えて、俺たちは握手した。
すると、
「よがっだぁぁぁ。」
とアリマは泣き始めた。
「許しては貰えないものだとぉぉぉぉ」
と俺にすがって泣いているウサギを〈ヨシヨシ〉となだめていると、
アモール様の神像が光り
「愛です!」
と聞こえてきた…
えっ、このタイミング?
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