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転落したけど、ナニクソ精神で頑張ります。  作者: ヒコしろう


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新たな季節と訪問者


9歳の春を迎えた村は、ベビーラッシュを迎えております。


ミミちゃんの家には双子の姉妹


葡萄農家のマットさん家には息子さん


牧場のジャークさん家には娘さん


と、安全で食事も安定したからか、村には赤ん坊の声が響いている。


一見のどかな農村だが、全員がかなりの戦闘力を所持する戦闘民族に成っている…


もう、近くの森での日常的な狩りでは物足りない村人が、交代制で近くの山や、近隣の国に遠征に行くようになった。


まぁ、遠征という名の〈婚活〉の一面も有るみたいだが…


〈別に、お嫁さんにでもお婿さんにでも成って村から出るのは構わない、


皆が幸せに成れば…〉


と、思っているのだが、遠征先で誰かを助けたり、盗賊団を蹴散らしたりして、


皆が、惚れられた商人の娘や、助けた猟師の男性…


ヒドイ場合は、この冬が越せそうにない寒村の30名程を丸ごと連れてきたりしている。


〈勝手に他国の領民を連れて来ていいの?〉


と心配していたら、ギーネ領の圧政から逃げ出した難民村らしく…


なんだか、可哀想なので迎えいれたりと、


正直、70名が長屋から農地付きの一軒家に移ったのを見計らった様に、移住者が長屋に入居して、村人が増えた。


そして新しく来た村人は、ビルドの町には無い、ホープ村のだけの秘密を知ることになる。


ジール大司教が中心となり、〈使徒を守り、使徒と歩む鋼の団結力!〉の秘密の超戦闘民族、〈ホープ村〉の一員として、


俺の手によりスキルモリモリにされるのだ…


村人が、増えて子供や赤ちゃんも増えたので、村の一角に〈託児所〉と〈寺小屋〉を作って、村の皆が仕事や冒険に行きやすくし、


職人や、商人も増えて、村が〈町〉と言っても良いくらい大きく成った…


村の中の事は何だか知らない間に、戦士団や、魔法師団、テイマー部隊に騎馬部隊などの部隊長を中心に簡易的な議会が作られていた。


〈あくまでも農村の筈なのだが…〉


軍事大国のような議会で話し合われるのが、〈今期の作物の生産について、〉や〈新たな家畜の模索〉に〈大浴場と公衆トイレの整備について〉など、


何とも平和な議題を話し合っている。


俺は知らない間に、各村のリーダーを束ねる〈長〉に成っていたのだが、


俺の仕事は、各村や町の会議に参加することと、いろいろな場所に顔をだして、悩みを聞くくらいだ。


あとは、趣味もかねて、新たな露店商人の店で買い食いなどをしている。


ビルドの町の新しい露店商などは、


俺の事を知らないようで、


「ぼく、お使いかな?

偉いねぇ、串焼き一本オマケだよ。」


と、おばちゃんがサービスしてくれるのが嬉しい。


「有難う、おばちゃん」


と、軟膏を売って稼いだお小遣いで、新たに町に出来たお店を回るのが、マイブームだ。


残念な事に、三回目くらいには顔ばれしてヨソヨソしく成ってしまう…


そして、


東ビルドで、品種改良を済ませた〈テンサイ〉の栽培と、テンサイ糖への加工までを任せる事にした。


勿論村でも栽培するが、


町に〈スィーツ〉の店を〈ナンディ商会〉の子会社としてオープンする予定なのだ。


西ビルドのミルクと卵と、

東ビルドの小麦やテンサイ糖で作る、


〈プリン〉や〈クッキー〉のお店。


ナンディ商会の行商チームを〈アイテムボックス〉や身を守るスキルをモリモリにして各地に送り出して外貨を稼ぐのだ。


ちなみに、スィーツショップのオーナーはナンディさんの奥さまの〈コリー〉さんで、


〈コリーのお菓子工房〉と看板が出ているが、


ナンディ商会よりも目立つ建物を商会のとなりに建てたので、


裏では〈コリー・ナンディ商会〉と


呼ばれている。


〈陽気な人形が出てくる番組みたいな…〉


最近、徐々に町に、子供も見かける様になったので、


ビルドの町に〈学校〉を建てて、


〈読み・書き・計算〉は勿論、


〈商人〉や〈料理人〉などの専門学科に、


親方の土木技術をまとめて規格の統一を図り、〈学問として、建築学を教えれば〉産業としての窓や扉の木工職人との連結も出来そうだ。


あとは…


騎士学校もそのうちいるかな?


となれば、魔法学校とか…


夢は広がるよね。



学問都市でも産業都市でも看板を掲げなければ、


農業の聖人が治める〈聖地・ビルド〉の名前が消えてくれない。


王国側の〈ビルドの町〉のキャッチコピーらしい…


〈全くもって迷惑な!


俺に()()()はタブーなのに。〉



そして、夏も盛りの蒸し暑い日に、馬車や騎馬の一団が、村に訪れていた。


予め手紙をもらったので、特に問題も無く、お出迎え出来たのだが、


まぁ、来るわ来るわ、


王国の国王陛下から大臣から…


お偉いさんがゾロゾロと、


俺への謝罪やら、アーガスじいちゃんの墓参りやら、


驚いたのが、エレオノーラ師匠の弟子が、俺に喧嘩腰で怒鳴った〈軍務卿〉の奥さんだったらしく、


エレオノーラ師匠が仲人だったようで、エレオノーラ師匠の墓の前で奥さんと泣いていた。


俺の二人の師匠は王都では有名人だったらしい。


隠居のつもりで開拓者をしていたらしいが、


十分都会で気楽な隠居生活でも出来ただろうに…


二人の最後の弟子として、


王国の一団からはお詫びに続いて、


〈王国の一員に成ってくれ〉と頼まれたが、考える余地もなく断った。


村としては、梨やサクランボの苗木や各地の野菜や花にハーブの種が貰えたので満足だ。


俺の生い立ちを聞いた〈軍務卿〉夫婦が泣きながら、〈家の子になれ!〉と騒いでいたが有難迷惑である。


国王陛下がどさくさに、


「では〈伯爵〉に成ってホープ村を伯爵領として…」


と言っているが、


全くもって王国に、魅力を感じないのでパスした。


だけど、


〈仲の良いお隣さんとして宜しくお願いします。〉


という、事で握手をして王国の一団の訪問が終了したが、


俺の知らないところで、何がどうなったのか?


村の広場では、奉仕作業や強制労働の罰を受けて自由になった〈ビビリー〉さんをはじめ、あの日の捕虜の一部やなぜか、俺に金貨を渡した〈元ギーネの騎士団〉の〈オリバー〉さんまで、


村の戦士団に練習試合を挑んで返り討ちにされて、村の回復チームにタンコブに〈ヒール〉をかけてもらっていた。


止めときゃ良いのに〈軍務卿〉が、


「我も一手御指南を」


と、ウチの村の〈木こり〉の〈ネモ〉さんに試合を申し込み、


壮絶な打ち合いの後に、軍務卿もタンコブをつくる羽目になった。


現在は奥さんに甘えて軟膏をヌリヌリしてもらっている。


〈仲の良い事で…〉


軍務卿は落ち着くと、〈ネモ〉さんに


「貴殿、流派は?、いずれの国の騎士団に?」


と聞いている。


ネモさんは、


「なんも、オラ、開拓村の〈木こり〉だぁよ。」


と答えている。


軍務卿も国王陛下も唖然としているが、


〈マジなんだぜ。〉


俺は、


「いゃー、魔物ひしめく開拓村の木こりは皆あんな感じでしょ?」


と誤魔化したが、


「そんな訳あるか!


剣鬼と呼ばれている軍務卿をあしらう〈木こり〉がいてたまるか!


あと、なんだ?


村の女性が、〈当たり前〉みたいに〈ヒール〉をかけてまわっている…」


と国王陛下が騒ぐので、


「魔物ひしめく開拓村では、大工の女将さんや、リンゴ農家の奥さんが〈ヒール〉使うのは普通でしよ?」


と俺が惚けると、


国王陛下はコメカミを押しながら、


「普通な訳があるか…


いったいアーガス先生は最後の弟子に何を基準に〈普通〉を教えたのか…」


とブツブツ言っている。


ただ、他の大臣達は、


「戦にならなくて良かったぁ~」


と口々に呟いていた。





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