決められない王様とキレそうなお子様
通信魔法士による通信会議が続くが、
王国の決断がパッとしない…
決定権が有る国王陛下が、大臣達の意見を聞き過ぎて、
あーでもない、こーでもないと…
正直、こんなんだから辺境伯が、ガツンとギーネ男爵に釘を刺すことが出来なくて、上にお伺い立ててからでないと動けないから、アホの制御が遅れるのだ…
俺は、しびれを切らせて、
「国王陛下、罪などに対しての罰は、どうぞそちらで時間をかけて下さい。
我々は、一刻もはやい捕虜の引き取りと、謝罪と賠償を求めます。
その事から先に決めて頂きたい。
即刻死刑にするにしても、そちらでお願いします。
白状した余罪も書類にまとめて報告しますので!」
と苛立ちをぶつけると、
国王陛下が、
「では、一番近いギャベッジが…」
と言い出す…
〈ダメだ話にならない…〉
俺は、キレそうになりながらも、グッと我慢しながら、
「ダメに決まってるでしょ!
ギャベッジ辺境伯も今回の罪の片棒を担いでいる立場です。
少々離れていても、ギャベッジ辺境伯と捕虜や首謀者を別の貴族の方が責任を持って護送するのが道理、
口裏合わせを避ける為に、お互いに接触させないまま事情聴取を行う…
子供でも解りますよ!
国王陛下!
他国の子供の戯言です。
聞き流しても構いませんが、他者の意見を聞くのは良いですが、
陛下の意見を大事にしてください。
全員の意見の中間地点を探すのは王様の仕事では有りません!
行動が遅れる原因です。」
と、お説教してやった。
すると、王国の軍関係の貴族が、
「おのれ、ガキが調子に乗りよって、
我らが王を愚弄するか?
宣戦布告なら我らが受けるぞ!」
と吠えている。
〈こいつもアホだ…〉
「人が我慢して下らない会議に付き合ってるのに、
自分等の立場も解らないのか?!
既に、王国の貴族が宣戦布告も無しに攻め込んで来たあとだよ?!
戦争中なの、
解る!!
小国どころかタダの村と舐めて攻めてくるならどうぞ、
今トンチンカンな事を言った軍関係者だけは刺し違えても泣かしてやるよ、
どうする国王陛下!
既に一度負けている戦の恥隠しにホープ村ごと消しますか?」
と、過ぎた売り言葉に買い言葉だったが、あまりにアホの集まりなのでイライラする。
謝るだけか、
謝らず〈なあなあ〉で済ますか、
徹底的にやるか…
方針もなくダラダラと…ふざけるな!
魔導具の向こうで、
「あーあ、兄上が怒らせたぁ、
ダメじゃないか、兄上、
完全に我らが悪いし、相手方に非はないんだよ?
聞けば武力衝突が有ったのに、死者より、捕虜が多い状態、
よっぽど気を使って〈殺さない〉作戦をしてくれたはずです。
なのに、王国としての方針もなく…
謝罪させるのは誰か、罪を償うのは誰か等、王都に連れてきて、尋問なり拷問なりすれば良いではないですか?
ビル君の…いや、アーガス先生の村を潰したいなら、このまま攻めこめばいい、
でも、そうでなければ、
この瞬間にでも、捕虜の引き取りを、近くの侯爵や、伯爵にでも頼み、
王都の手土産でも持って一旦ご挨拶に行くのが筋でしょうに…
で、良いでしょ?ビル君。
私からも言ってやったよ。」
とヘラヘラと話しているが、
グリム公爵の方がよっぽど〈王様〉適正が有りそうだ…
言われた国王陛下は、ぐうの音も出ないようで、静かになってしまった。
暫く沈黙があり、
国王陛下から、
「1週間以内に誰かを引き取りに向かわせる、
それまで、捕虜を頼む…
全てが決着したら、報告がてら〈アーガス先生〉の墓参りに行ってもよいか?」
との言葉が有った。
俺は、
「どうぞ、いつでもいらして下さい。
武力を使わずとも、〈礼を尽くす〉まともな方には村の門は開けっ放しにしてますので。」
と答えると、
国王陛下が、
「では、礼を尽くす為には、我は何を手土産にお邪魔すれば良いかな?」
と聞いてくる。
俺は、
「こちらではあまり手に入らない、砂糖の原料の作物の種や
香辛料などの種や苗、
果物の苗木…ぐらいですかねぇ?」
と答えると、
陛下は、
「そんな物で良いのか?」
と聞いてくるので、
「そんな物が良いのです。」
と答えて、
ダラダラした会議はようやく終了した。
ー 6日後 ー
檻馬車が三台、村の前に到着した。
小型地竜の引く高速馬車の様だ…
品の良い貴族服姿の紳士が、
「王命により、捕虜の引き取りに参りました。
こちらは迷惑料代わりの品で御座います。
お納めください。」
と、〈テンサイ〉という砂糖が精製出来る作物の種と、
精製法を記した書物を頂いた。
砂糖はお金になり、一般には種が出回らないので、〈ナンディ商会〉も頑張ってくれたが手に入らなかったのだ。
有難い。
護送される際に、ビビリーさんが、
「私自身は悪事に直接手を出していませんが、同行して、止められなかった罪はあります。
しかし、〈ビル様〉…罪を償った後に、私も此方の村の一員に入れてくれませんでしょうか?」
と檻の中から頭をさげる。
俺は、
「行くとこ無い人も誘って村の警備隊にでも成ってよ。
待ってるから…」
と軽く手を振った。
…これで一段落かな…
アイテムボックスの中の〈死体〉も、引き取ってもらえて〈サッパリ〉したよ…
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