やり過ぎと歩み寄りと握手
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盛大に村人をドン引きさせた後に、
〈やっぱりマズイかな?〉
と反省して、
村の警戒態勢を解いたあとで、新鮮な肉と野菜を用意して、
村から荷馬車を出してもらい、
料理人の助っ人と〈ジール神父〉と一緒に、ビルドの町に移動をはじめる。
多分、追加の食材が無いと、宿屋で兵士さんに出すご飯が無い…
〈さっき、やり過ぎたのもあるし…〉
という理由で、ご挨拶に向かう事にしたのだ。
馬車に揺られて2時間程、夕方前には〈ビルドの町〉に到着した。
料理上手な奥さま方はアイテムボックスの食材と共に、宿屋の助っ人に行ってもらい、
俺とジール神父は、グリム公爵様御一行を探す。
馬車や馬が有るので何処かには居るはずだ。
町と言っても小規模な町のビルド。
しかも、人が少ないほぼゴーストタウン状態で、人の声がする方を探せば御一行もすぐに見つかる、
ビルドの町担当の商人、スキルモリモリの〈ナンディ〉さんが御一行を案内して、親方達が町の外壁を直している現場を視察しているらしい。
〈追い返した手前、ノコノコ出て行くのは恥ずかしいが…仕方ない。〉
説明を受けている御一行にジール神父と二人で近づいて、
「先程ぶりです、公爵様。」
と声をかけた。
急に声をかけたので、兵士達が一瞬殺気立つが、
すぐに6歳児と神父という組み合わせを見て警戒を解く兵士達とは反対に、
身構えるグリム公爵が、
「使徒様…」
と呟く
俺は、ニッコリ笑顔で、
「グリム公爵様、先程は失礼しました。
以前の事もあり、戦える者はおろか、農民と、女性や子供しかいない村に、武器をお持ちの方々を入れる訳にはいきませんので…
しかし、私達が皆様には〈敵意〉が無いという証しに、村で収穫した野菜を今晩召し上がって頂こうと持参し、現在宿屋の厨房で料理しております。」
と頭を下げた。
グリム公爵御一行はゆっくりと俺に近づいて、
「改めまして、ライゼル・フォン・グリムと申します。
使徒様。」
と握手を求めるグリム公爵に、
「使徒様は止めて下さいね。
開拓者、〈ビリー〉と〈チル〉の息子、
お野菜作りが得意な「ビル」です。」
と言って握手を返す俺に、
「ガッハッハ」とご満悦な公爵様は、
「ほれ、言ったであろう、
オリバーが〈ビル殿〉に不審がられておるだろうから、私がはじめに声をかけると…」
と、ギーネと一緒に来てた兵士さんを茶化す。
兵士の〈オリバー〉さんは、
「申し訳御座いません…」
と、シュンと成っている。
俺は、
「オリバーさんが、悪い訳では無いですよ。
全部、〈悪い前例〉を作った〈ギーネ〉が悪いんです。」
と言った。
一瞬、平民が貴族を呼び捨てにしたので、他の兵士が〈ザワッ〉っとしたのを見て、
「ここは、既に王国外の領地と成っております。
私は、暴行を受けて、村の財産を奪った〈ギーネ〉という盗賊の話をしただけですよ。
ギーネが他所で〈貴族〉だろうが、〈盗賊王〉だろうが、
王国の外で産まれ育った〈6歳児〉には関係無い話です!」
と、言ってやった。
グリム公爵様は呆れて、
「ビル殿、普通の6歳児はそんな理論は持ち出さないよ…
ビル殿な中身は同年代に思える、
せめて成人していたら酒を酌み交わしたいよ…」
と言っている。
俺は、
「あと十数年お待ち頂ければ…
本日の所は、お茶を囲んでお話でも?」
と答えると、
グリム公爵は、
「ガッハッハ、愉快、愉快。
早々に夢が叶うとは…
アーガス先生が、手紙で〈ワシの最高の弟子〉と伝えて来たのが解りました。
いずれ我が兄の国王にもビル殿と会って頂きたい。
〈旧、最高の弟子〉では〈現、最高の弟子〉には勝てそうにないので、
兄上の驚く顔が見れそうだ…」
と、ご機嫌でいるが、
俺が、
「えー、王様に会うとか緊張するから嫌だよぉ」
て愚図っていると、
ジール神父が小声で、
「神様に会うよりか、簡単だと思いますよ?」
と真顔で言われた。
静かな町では、小声も良く通るらしく、
一瞬の静寂の後に
「ドッ」っと笑いが起きた。
グリム公爵や、兵士さん達も、
「陛下も、神々と比べられたら形無しだ!」
と笑っている。
…多分、気さくで慕われている王様なのだろう…
和やかなムードのまま、夜遅くまで話し合いが出来た。
なぜ、こんなに話の解る大貴族の下に、あんなクズ貴族が居るのか、
益々解らなくなった…
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