切り捨てられた町と難民と神様
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馬車で数時間の道のりを
六歳児が歩けば1日ほど掛かってしまう…
早朝から村を出たのに、町に着いたのは夜だった。
到着した町も、スタンピードで壊滅的なダメージを負っている様で、
崩れた壁やテントで暮らす人々が見受けられる。
町の兵士さん達は一人も居ない様で、夜だと云うのに、門すら空いたままで、見張りもいない…
〈まぁ、あの壁では門も見張りも意味はないんだけど…〉
しかし、困ったのは、今夜の宿すらないことだ。
実に困った…夕方迄に到着する予定だったが、思ったより遠かった上に、
知り合いも居ないので一晩の宿もとれない、
…いや、知り合いはギリギリ居るかもしれない…
一度来ただけの町で唯一の知り合い、
〈教会の神父様〉に逢うために、スタンピードの被害が少ない町の端に建っている教会を目指す。
…しかし、到着した教会には多くの人が暮らしている様だった。
さほど大きくない教会には十数名の人が居る、
そのなかの女性が、ひとり
「あらあら、坊や1人かい?
どこの開拓村から来たかしらないが…
お腹空いてるんじゃないかい?
ほとんど具材は無いけどスープ飲むかい?」
と声を掛けてくれた。
俺は、
「有り難うございます。
僕は大丈夫です…皆様の大切な食糧を頂く訳にはいきません。
一夜の宿をお願いしようと訪れただけなので…」
と答えた俺に、〈親切なおばちゃん〉は、
「そうかい、なら神父様を呼んでくるから暖炉の側に座ってて、
夜はまだ少し冷えるからね。」
と、建物の奥に消えて行く
暖炉の側に居ると、
子供の声で、
「お腹空いたよう…」
と聞こえてくる、
それに続いて、その子の母の声だろうか、
「ミミちゃん、ごめんね。
ママ達の村がなくなったから、食べ物も無くなっちゃたの…
神父様が無理して皆を食べさせてくれているから、わがまま言っちゃダメなの…」
と悲しそうな声が聞こえた。
〈わがまま…否!、断じて否!!〉
腹が空いてるのは、その子のせいではない!
俺はたまらず、
「この中に猪を解体出来る方は居ますか?
料理の出来る方は?
食材は僕のアイテムボックスに有りますから、お腹いっぱい食べましょう!」
と提案すると、ちょうどそこに神父様が現れて、俺を見るなり、
「使徒様!おぉ、神よ我らに使徒様を使わして頂けたのですね。」
と神像に祈りはじめる…
教会の避難民はポカンとしているが、
もう、そんなことは関係ない、
「神父様、祈りは後回しにしてください。
皆さんにお腹いっぱい食べて貰いますよ!」
と、声をかけて、
かがり火の中で猪を解体し、アイテムボックスから野菜を取り出して、料理が出来る方々に渡し、
俺は神父様に、この町の状況や俺の村の現状、それと、気にくわない〈ギーネ男爵〉とやらの話をしたのだが、
神父様は、〈祝福〉の後で教会本部に俺の事を報告をしたら、教会本部より
〈神から力を与えられて、飢餓に苦しむ村の民のために、丈夫で沢山収穫が出来るジャガイモを産み出した使徒〉
として俺が認定されている事を知らされたらしいく、俺を〈使徒様〉と呼ぶ、
〈…いやいや、俺も初耳だわ。〉
神父様に、ここにいる人達の事を聞くと、
「スタンピードで開拓村を失った方々です。
町からの伝令で命は助かりましたが、それ以外を全てスタンピードで…
私の私財では、十分な食糧も用意出来ずに悩んでおりました。
この街もお金の有る者は他の町に移り、残された者は、工房を開くお金も無い職人などです。
兵士は引き揚げ、農民の多くは〈ギーネ男爵〉に連れられて、男爵の領地に向かいました。
おかげで、町の農家が殆ど居なくなり、ジワジワと、飢えて死ぬ未来に向かっております…」
と、教えてくれた。
〈ギーネ〉の野郎は、ウチから奪った芋を農家に作らせて儲ける気だな…
ほんと、ろくでもない!
俺は、
「ギーネ男爵とやらは、ウチの村から食糧や種芋を根こそぎ奪って行った、
言わば〈仇〉です。
しかし、神様から収穫時期を短くする力を授かっているので食べ物なら有ります。
村には住む建物は有りませんが、食糧ならば提供できるかもしれません…
なんなら、大工さんが移住してくれたら皆さんも受け入れる事が出来ますよ。」
と提案すると神父様は、
「使徒様、願ってもない事です。
明日一番に町の住人に話をします。
家を潰されテント暮らしの者は、すぐにでも、〈どこかの開拓に参加するか?〉と考えている上に、
今回、潰れた町の復興では無くて、〈切り捨て〉を決定した王国にも不満がある者が多い、
使徒様の元で村を開拓出来れば…
皆が明るい未来に進める気がします。」
と話をしていると、〈親切なおばちゃん〉が、
「難しい話しは後にして、
神父様も〈使徒様?〉も食べましょう。
神父様は特にあまり食べて無いのを知っていますので、
是非…」
と涙を流しながら、おばちゃんが神父様に具だくさんのスープを渡す。
あの神父様は自分の食糧まで削って、この人達を食べさせていたのか…
〈よし、この人達の為に頑張ってみるか!〉
と決意した瞬間に、
四柱の神像が光だす。
教会内の人間は、唖然とする者や祈りだす者、様々である。
優しい声が教会内に響く、
「ビル君…この度の事、何と言ったら良いのか…」
と、残念そうなアモール様の声に、
「アモール様、有り難うございます。
両親や村の皆の事は残念でなりませんが、皆がくれた〈愛〉を本人には返せない分、この場にいる皆さんに、出来る事をしてあげたいと考えております。」
と俺が答えると、
「それこそが〈愛〉です。」
とアモール様の声が響く、
また、俺だけ会話が出来ているのだろうと辺りを診ると、
全員が祈りを捧げながら、俺と石像を交互に見ている。
神父様に至っては、
「アモール様?!」と言いながら、鯉のようにパクパクしている。
〈あー、皆に聞こえるタイプね…〉
と納得していると、アモール様が、
「ここに集いし皆さん、
我らが神々の使い、〈ビル〉君を頼りなさい。
彼を頼り、彼を助け、町を作りなさい。
それと、教会の者は…」
と神父様を呼ぶ、
神父様はアワアワしたまま、
「はい、ここに!」
と上ずった声をあげる。
アモール様は、
「教会をビル君の村に移転しなさい。
彼と神々の橋渡しに任命します。」
と宣言された神父様は泣きそうな声で、
「畏まりました。」
と言って、プルプル震えている。
すると、続いて
「ビル、すまねぇ…
村の皆を助けてやりたかったが、教会も神像も近くに無くて…観ることしかできなかった…許してくれ。」
と、ピオニール様の声がした。
「ピオニール様、有り難うございます。
皆に助けて貰った分、俺は誰かを助ける事にしました。
父ちゃんも母ちゃんも、村の皆も、ソレを望んでくれる気がするので…」
と答えると、
「この場にいる者達にお願いだ。
コイツを〈ビル〉を支えてくれ…」
とピオニール様のお願いに頷く人々、
すると再びアモール様の声が響き、
「ビル君、〈ポイント交換〉の本を出して下さい。」
という、
俺は、「はい。」と答えて、アイテムボックスから取り出した本を両手で捧げると、
本が眩しく光り、徐々に光りが落ち着く…すると、
「はい、オマケの機能を付けました。
頑張って愛を与えて下さいね。」
とアモール様の優しい声が聞こえ、
「ビルさん頑張って!」
「ビルっちガンバ!」
と駆け込む楊に、〈エスティーダ様〉と〈カマラ様〉の声も聞こた。
通話の終了した神像の光りが弱まり…消える。
神父様が、
「最後の声は?」
と聞くので、
「エスティーダ様とカマラ様です。」
と答えると、神父様は気絶してしまった。
アイドルファンが街角で推しのアイドルに出会ったみたいなモノだから仕方ないか…
と、納得し、
気絶した神父様をソッと寝かせて、皆で腹一杯食べてその日は休む事にした。
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