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転落したけど、ナニクソ精神で頑張ります。  作者: ヒコしろう


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最悪な別れと最悪な出会い



凄く嫌な気分で目が覚めた…


真っ暗な地下室の床からゆっくりと体を起こして、出入りの扉を押し上げる。


手探りで階段まで進み、外を目指すが、


階段の上の扉は、5歳児の力ではピクリともしない…


俺は、〈念動魔法〉で扉をこじ開ける。


大量の魔力と引き換えに、光が差し込み、青空が見えた…


〈おかしい、なぜ室内から空が見える?〉


嫌な感じしかしないが、地下室から階段を上がり地上にでた俺は…


地獄の様な光景と、絶望に押し潰されそうになる…


しかし、すぐに気がつき、


〈父ちゃん!母ちゃん!!皆…〉


と叫び、駆け寄る倒れた人影は、とても生存を期待出来る状態では無かった…


俺は、誰の目も気にせず、声を上げて泣きながら瓦礫をどかし、


俺のこの世界での家族とも言える村の皆の亡骸をアイテムボックスで回収していく。


何がどうなったかは解らないが、地下室の扉の側に母ちゃんを守る様に抱きあった父ちゃんの姿を見つけた時は、暫く動けなくなった…


〈二人をこのままにはして置けない!〉


と奮い立ち、作業を続ける。


念動魔法の使いすぎで一度の〈気絶〉をはさみ、2日がかりで皆を瓦礫の山から

掘り起こした。


村は踏み荒らされ、建物はなぎ倒され…


そこには、おおよそ人が住んで居たとは思えない光景が広がる村を歩いて進み、


村を見下ろす〈父ちゃんが切り開いた果樹園〉だった丘の上に登る。


アイテムボックスからスコップを出して、皆を埋葬しようと考えたが、


ファンタジーな世界で土葬にして〈アンデット〉になっては、皆がユックリ休めない…


村から薪や木材を集めて、皆を荼毘に伏すのに〈炎魔法〉を使い続ける。


幾筋の煙が冬の空へと高く、高く昇っていく…


出来れば皆、この煙で天国まで行って欲しい。


この世界の神々に、心から祈り、村の皆の安らかな眠りを願う。


土を埋め戻し、アイテムボックスで運んで来た岩で、目印程度の〈石塔〉を墓石代わりに念動魔法で積み上げていく、


ジェムさんとプリシラさんの…


ドノバンさんとマリーさんとアルフさんの…


アプルさんとパンプさんの…


二人で並ぶのは嫌がりそうだから、少し離してアーガスじいちゃんとエレオノーラ師匠の…


そして、父ちゃんと母ちゃんの…


岩を積み上げながらまた涙が溢れてくる、


「皆、ちゃんとしたお墓は石を加工するスキルが手に入ったら頑張るから、それまでは、これで我慢してね…」


と、呟き、気を失う様にその場で眠りについた。



翌朝、腹の虫が騒ぎ目が覚めた。


〈飯すら食べてない〉


地下倉庫にはジャガイモの種芋が沢山あるし、水は出せる。


餓死はしないだろうが、住む場所がない…


昨夜凍死しなかったのは、皆を荼毘に伏した土の上だったので大丈夫だった様だ…


皆が最後の最後まで守ってくれた様でまた涙が溢れる。


皆が守ってくれたのに、餓死や凍死では合わせる顔がない


その日から村を廻り、住める場所を探すが、まともな居住空間は地下倉庫くらいしか見当たらない


倉庫の瓦礫をどかして、壁代わりにして、


当面の拠点とした。


アイテムボックスに地下倉庫内の食糧などを半分程度しまいこみ、空いたスペースに、家の瓦礫から掘り起こして見つけた布団をひっくり返した木箱に敷いた。


母ちゃんの布団だったらしくて、仄かに母ちゃんの香りに包まれる…


何とか春まで過ごせば、魔物を狩ってポイントを稼ぎ、〈豊穣〉なスキルで作物を大量生産して町に売れば何とかなる…


〈どん底に転がり落ちたが、皆が切り開いた村を守る為に頑張るぞ〉


と心に誓った。



ー 1ヶ月程経ったある日 ー


少し温かくなり始めた朝に、〈ソレ〉はやって来た。


馬車と騎馬に乗った兵士団?


の様な一団が現れたのだ。


先頭の兵士が俺を見つけて、


「村の子供か?」


と聞くので、


「そうです。」


と俺が答えると、


「大人は?」


と続けて質問された。


俺は、首を横に振ると、


兵士は馬車に近づき、何かを報告すると、


馬車から派手な衣装のおっさんが降りてきて、


俺に向かい歩いて来る、


そして、


「小僧、種芋を明け渡せ!

大人も居なくなった廃村には過ぎた物だ。


この、ギーネ男爵様が、〈正規の値段〉で買ってやろう!」


と、〈小銀貨〉を一枚投げてよこした。


アーガスじいちゃんから貨幣の知識は習っている。


〈小銅貨〉が十円程度の価値で、


〈大銅貨〉が百円、


〈小銀貨〉が千円程度だ…


少なくとも木箱一杯の種芋が小銀貨一枚な訳がない…


一万円程度の〈大銀貨〉が数枚の価値はある


倉庫の中の分を合わせると、


十万円の〈小金貨〉どころか、


百万円の価値の〈大金貨〉が必要だ。


俺が、


「男爵様、これでは一袋程度の種芋しかお譲りできませんが…」


と恐る恐る伝えると、


男爵とやらは、


「えーい、がめついガキが…親の顔が見たいわ!」


と小銀貨をもう一枚投げてよこす。


地下倉庫の方から、


「男爵様、芋が有りました。」


と兵士が報告すると、男爵は、


「金は払ってやったから、全て運び出せ!」


と指示をだす。


〈そんな馬鹿な!〉


俺は抗議するために〈男爵〉とやらに近づくと、周りの兵士に蹴り飛ばされた。


痛みは有るが、まだやれる。


皆で作って、皆で守った〈種芋〉を奪われる訳にはいかない…


最初に話しかけてきた兵士が男爵に、


「ギーネ様、いくらなんでも…」


と言っているが、ソレ以外の奴らは呆れた顔で兵士を見つめる。


男爵は、笑いながら


「ここは、開拓村だぞ、

まだ、王国では無い!強い者が正義だ!!


早く運び出せ。」


と言っている。


〈そうか、そうならば…〉


とユックリ立ち上り、


「村の皆が命を掛けて守った物だ!


汚い手で触るな!!」


と叫び、念動魔法で男爵を締め上げて宙に浮かせる。


「何だ、苦しい…降ろせ小僧…不敬だぞ…」


と顔を歪める男爵に


「ふざけるな、ここは王国では無い!

てめぇの爵位なんか、畑の肥料にもならねぇ!


このまま捻り殺されたく無ければとっとと帰れ!」


と怒りをぶつけると、


男爵は、


「やれ!」


と最後の力で指示を出して気を失う、


それと同時に腕に痛みが走り、体が痺れだす。


ニヤニヤ笑いながら、俺に蹴りをくれた兵士がボウガンを片手に近づき、


「ガキが、頑張るねぇ、

馬魔物もひっくり返る麻痺毒なのに、まだ睨んでやがる…


気にくわないんだよ!」


と再び蹴られた。


動かない体を何度も蹴られながら、運び出される種芋を眺めて、


ユックリと意識を手放した…



読んで頂き有り難うございます。


「ちょっと応援してやるか!」と思って頂けた方、


ブックマークを宜しくお願い致します。


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皆様の応援で〈頑張るぞ〉となれますので宜しくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白いですね みんなとの別れがつらいです
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