07-揺らいだ花火のゆくえ。
久しぶりとなってしまいました、すみません。
バチバチバチッ…!!!!
「「「「おおぉ!」」」」
魔法花火がひときわ大きくうねり、驚いた観客からたちまち声があがる。やばい、私としたことが、我を忘れて操作を疎かにしてしまっていた…!このままだとまずい…っ。
「くっ…フレアッ!」
もう一度詠唱を施すも、動揺がそのまま花火へと伝わってしまう。
「ミーク!?どうしたの!」
クレアが焦りの声を上げる。彼女にまで私の不安が伝播したのか、魔力提供量にも揺れが現れ始めた。花火はいよいよ膨れ上がり、もしもの際の火消し役となる先生が一歩踏み出した。
せっかくの魔法花火、あれだけ練習したのに…!私たちの力だけで成功させたかった…!お願い、水の精霊、私に力を貸してっ。お願い、お願い、お願い…!
すると予想だにしなかったことが起こる。
「フロエラ!」
凛とした声が鳴った。同時に、パチパチ音を立てながら花火が凍りついていく。
え…?
「こ、氷魔法…?」
火消し役の先生がやったのではない。なぜならば打ち合わせでは先生の手による空間魔法で酸素を排除する手筈だったから。
では、誰が…?
「わぁ綺麗~!」
「すげー!凍ってるよ!」
「オブジェみたい!」
「キラキラしてるねっ。」
美しさをそのまま閉じ込めたような花火の氷漬けは天井から垂れ下がっている。それはもはや芸術作品のようで、一同の瞳を奪う。
「すげぇ、これ、ミークがやったの?」
「私じゃないわっ!」
ロアの問いかけに首を振ってこたえる。氷魔法といえば、水魔法の上位に位置する。水を形態変化させなければならないため、すごく難しい。私にはできない。
やったのは…おそらく、彼。
「みな。ケガはないか?」
「…先生…、大丈夫です。」
「それはよかったの。それで、誰が凍らせたのかね?君らか?」
「いいえ、違います!」
先生が頷いた。
「そうじゃろうな。見てた限り君らのうちの誰かでも、わしら教師陣の中の誰かでもなかった。強い魔力が発されていたのは、花火を見ていた生徒の方からじゃったからの。」
えぇっ!とクレアが驚いた。明かりがつき、視界が良好になった会場内を見渡す。
「氷魔法なんて高度なこと、できた子いたかしら?」
私は先ほどの彼を見つける。たくさんの生徒の中にいようと、その存在感にはすぐ気づかされた。赤いオーラを纏う彼は私と目が合うと、それは楽しそうに顔を綻ばせる。と、いうか、意味ありげにニヤついている…。
「とりあえず演目は終わりじゃ。放送委員!」
『あっはい!えぇ、見事な魔法花火でしたね!みなさんどうぞ、盛大な拍手を今一度お願いいたします!』
心落ち着かないまま、強制的に階段を降りることとなった私達。私の手には冷や汗だ。
そうして歓迎会がお開きとなり、全生徒が教室へと向かう。もんもんとする私の足取りは少し覚束なかった。
…なんだか、あの彼、とんでもない人な気がするナァ―。




