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23.冒険者登録へ

 アッシュとシャロに軽くからかわれることとなったルキにとっては無事ではなかったが、無事朝食を終えた三人はこれからの予定に関して話をしていた。


「今日はこれからどうするんだ? ハロルドのところで依頼でも探すとか?」


「いや……今日は冒険者ギルドに向かおうかと思ってる。そろそろシャロには冒険者登録をしてもらわないといけないからな」


「冒険者登録、ですか?」


 アッシュが予定として冒険者登録を、ということを口にするとシャロは不思議そうに首を傾げた。

 どうして自分がそれをしなければならないのか、わかっていないからだ。それを察したアッシュは自身のギルドカードを呼び出すとそれをシャロに見えるようにしながら口を開いた。


「冒険者登録の際にこのギルドカードに魔法を使って色々な情報が刻み込まれることになる。依頼に関する情報やランクの情報なんかは冒険者本人でも確認出来るんだ。ただ重要なのはそれじゃなくて、冒険者本人には確認することが出来ないような情報も刻まれてるってことだ」


「その冒険者が確認出来ない情報、というのは……?」


「さて、どんな情報だろうな? ただその情報に関しては冒険者ギルドが門外不出の魔法で登録、閲覧をしてるらしいから冒険者ギルドの極一部、限られた人間じゃないと確認することは出来ないんだとさ」


 アッシュの話を聞けば聞くほどに疑問を深めるシャロに対して、アッシュは軽く肩を竦めて返した。

 この門外不出の魔法に関しては本当に冒険者ギルドの中でも幹部格しかどういった魔法なのかを知らず、一般の職員ではまず知ることはない。

 そうなっているのだがアッシュはその門外不出の魔法について知っている。過去に知識の瞳の加護を用いてどのような魔法が使われているのかを視たからだ。

 とはいえそれを公言することは出来ないのでどんな魔法だったのかはこれから先も口にすることはない。ただ言えることは解析(アナライズ)以上に精密な情報を抜くことが出来る魔法であり、また非常に高度なプロテクトが仕込まれていることもわかった。


「まぁ、何にしても冒険者ギルドで冒険者登録が出来るってことは一定以上の身元、もしくは身分が保証されるってことだ。だから身分証明書みたいなものとして使えるし、そうやって冒険者登録が出来れば仕事には困らないな」


「アッシュはこう言ってるけど別に無理して冒険者登録とかする必要もないんだけどな。憲兵とか騎士とかに絡まれた時に持っておけば割とすんなりと切り抜けられるってくらいだし」


「か、絡まれる……?」


 ルキが事も無げに口にしたその言葉に、どういうことなのかと疑問符を浮かべながらシャロが復唱した。

 それを見てアッシュは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべてからため息交じりに答えた。


「はぁ……仕方ないとはいえ王都の憲兵は警戒心が強くてな。憲兵の目がある場所で少しでも不審な動きをするとすぐに事情聴取されるんだ。その時にギルドカードがあればルキが言ったようにすんなりと切り抜けられる。ただ不審な動きさえしなければそんなことにはならないから確かに無理に冒険者登録をしてギルドカードを手に入れる必要はないかもしれない」


「は、はぁ……でも、主様はそれでも冒険者登録をしておいた方が良いと考えているのですよね?」


「あぁ、あって損をするような物でもないからな。それにある程度は自分で自由に使える金があった方が良いだろ? そういうのは自分で稼げるようになっておいても良いと思うんだ。小遣いが欲しいって言うなら幾らか渡すけどさ」


 アッシュとしてはシャロにお小遣いを渡す。ということ自体には特に忌避感などはなかった。

 現状シャロが自由に使える金銭は大した額ではないと思っているので、流石に王都でそれは不便だろう。という考えからだった。

 だが短い付き合いながらシャロはそうしたお小遣いを渡される。ということを甘んじて受けるような性格をしていない、ということは何となく理解出来ていた。

 だからこそアッシュは自分で稼げるように、という言葉を口にしていた。


「あ、はい、そうですね……主様からお小遣いをもらうようにするよりも、自分で必要な分は稼げるようにしないといけませんからね」


 そしてそれを聞いたシャロは確かに、と一つ頷いてから言葉を返した。


「ってことはやっぱり冒険者ギルドか……ついでに依頼でも受ける。って感じで良いのか?」


「そうなるだろうな。とはいえ、シャロに合わせた依頼になるだろうから楽なもんだ」


「冒険者登録を済ませたばかりなら……討伐系は少ないし、採取系の依頼になるんだっけ?」


「そうなるな。薬草の採取辺りが妥当だろ」


 そう言いながらもアッシュは空になったコップを片付け、冒険者ギルドへと向かうための準備を始めていた。それに気づいたルキとシャロも自分たちの準備を始める。

 だがそうして片付けや準備をしながらも何かを忘れているような気がしていたアッシュは一人で首を傾げ、そしてすぐに思いつかないなら大したことではないな。と判断して気にしないことにした。



 あれから三人は大通りを進み、冒険者ギルドへとやって来ていた。

 やはりと言うべきか、冒険者たちによって非常に賑わっていてシャロはそんな光景に驚いているようだった。


「わぁ……大通りも人が沢山いましたけど、ここはそれとは違った活気? がありますね……」


「無駄に元気な奴らばかりだからな。というか、冒険者の大半はそんなもんだ。とはいえあれくらい元気じゃないと毎日毎日依頼なんて受けていられないのかもしれないけどな」

 

 言いながらアッシュが肩を竦めて見せるとシャロはどう返せば良いのかと言葉に迷い、ルキは呆れたように言葉を返した。


「冒険者ってのは体力勝負なところがあるからなぁ……っていうか、アッシュの場合は元気かどうかじゃなくて依頼を受ける必要がないくらい蓄えてるからだろ?」


「ハロルドから依頼を受けてるからな。面倒な依頼が多いけど報酬は文句なしだ。使い道がないって問題はあるけどな?」


「確かに。あ、チビ。ハロルドに関してはまた今度教えてやるから今は気にすんなよ。あいつの説明って地味に面倒なんだよ。でもその時はちゃんとお前でもわかるように教えてやるからな」


 ハロルドの名前を聞いた時から気にしているようだったシャロに気づいていたルキが釘を刺すようにそう言うとシャロは一瞬言葉を詰まらせ、それから頷くことでひとまず了承の意思を見せた。

 アッシュはそんな二人を見て、いつもは何処までも子供っぽいルキが少しだけお兄さんのような振る舞いに内心で少しだけ感心し、ほっこりしていた。

 ついでにそれによって最近のぐいぐい迫ってくるルキのことを考えないように、軽い現実逃避もしていた。


「あー……とりあえず、さっさと冒険者登録を終わらせようか」


「だな」


「はい、わかりました!」


 そんな現実逃避も置いておいて。アッシュは冒険者登録の為にルキとシャロを促した。

 そして三人で受付カウンターへと向かう。そこにはいつも通りにフィオナの姿があり、だが珍しいことに冒険者は並んでいなかった。これだけ冒険者がいるのだから最低でも数人は並んでいてもおかしくはなかったのに。

 どうしたのだろうか、とアッシュが疑問に思いながら受付カウンターに近づくとその理由が何となくわかってしまった。

 表情はにこやかなのだが、纏う空気が非常にピリピリとしていて怒気を孕んでいた。なるほど、これは人が避けても仕方がないな。とアッシュは思いながらフィオナへと声をかけた。


「おはよう、フィオナ。今日はちょっと冒険者登録を……」


「アッシュさん!! やっと来ましたね!?」


 だが声をかけた途端にフィオナがカッと目を見開き、身を乗り出すようにしてそう言った。というか怒鳴るようにして声を上げた。

 流石にいきなりそんなことをされるとは思っていなかったアッシュは一歩だけ引いて何事かとフィオナを見た。ただルキは逆に一歩前に出てアッシュを庇うようにし、シャロは急なことにビクッと体を跳ねさせていた。


「良いですかアッシュさん!! あれから一度も冒険者ギルドに顔を出さないどころかギルドマスターにすら挨拶をしに来ないとはどういうことですか!!」


 普段から決して声を荒げることのないフィオナがこうして声を上げている。ということもあって周囲の、というよりも冒険者ギルドに訪れている冒険者やギルドの職員たちが何事かと見ていた。

 そんなことには気づかないフィオナは更にヒートアップしていく。


「それに報告はきちんとしてもらわないと困ります!! 何があったのか、あの後ギルドマスターから直接伺いました!! ギルドマスターはアッシュさんであれば問題はないと言いながらも報告しに来ないことからとても心配していましたよ!!」


「待て、待ってくれフィオナ。とりあえず落ち着こうか。な?」


「これが落ち着いていられますか!! アッシュさんは冒険者としては上位になるんですからホウ・レン・ソウくらいはちゃんとしてください! わかりますよね!? ホウ・レン・ソウ!!」


「砲撃・連射・掃討?」


「物騒すぎませんか!?」


 アッシュが完全にふざけて物騒な言葉を並べるとそれを真に受けたフィオナが驚愕の表情を浮かべ、信じられないというように声を上げた。

 だがそんなフィオナに追い打ちをかけるようにルキが少しだけ考えてからこう言った。


「砲撃魔法を連射して魔物を一匹残らず掃討する……あ、割といつものことじゃん」


「アッシュさんの戦い方ってそんな派手な戦い方だったんですか!?」


「ルキ、俺は砲撃魔法なんてほとんど使わないぞ?」


「あー、寧ろ放火だよなー」


「結局物騒じゃないですかぁ!!」


 確かにアッシュは煌々と燃え猛れ(ケオ・フローガ)を使うので放火というのは間違いではない。

 それを聞いてフィオナは更に驚いた、というよりも結局物騒だったことに微妙に混乱した様子で声を上げていた。

 ルキは完全にふざけているだけなのだがフィオナはそれに気づいていないようだった。

 ついでに言えばシャロも少し引いたようにアッシュを見ていて、こちらはこちらでアッシュとルキの言葉を真に受けてしまったらしい。

 ふざけているルキ、混乱しているフィオナ、真に受けて引いているシャロ、それらを見てどうするのが正しいのかと考えているアッシュ。そんな四人を遠巻きに見ている野次馬連中。

 これは一度落ち着いて話せる場所で話をするべきだ、とアッシュは結論付けてとりあえずは、とフィオナへと声をかけることにした。

砲撃・連射・掃討。これやりたかっただけですね、はい。満足。

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