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キスしないと出られない部屋

BL注意。R-15も注意。

 アッシュが眠りから目を覚ますとそこは自分の部屋ではなく、見たこともないような部屋だった。

 本来であれば見覚えのない場所で目が覚める、ということがあればアッシュは即座に警戒態勢に入るのだが今回は部屋の様相をざっと見ると大きな大きなため息を一つ零した。


「イシュタリアの神性が強すぎる……」


 部屋中からイシュタリアの神性を感じることから今回の事態はイシュタリアが引き起こしたことだと理解しているアッシュは嫌そうな表情を浮かべてベッドから抜け出そうとした。


「んー……」


 すると小さくそんな声が聞こえたと思うと、ベッドの中にいた誰かがごそごそと動いた。

 この誰か、というのは考えるまでもなくアッシュと同じベッドで眠るようになっているルキであり、眠りながらにクンクンと匂いを嗅ぎ、普段とは違うせいか目を覚ました。


「……何処だよここぉ……」


 何処だ、と言いながらも半分寝惚けた状態でアッシュに抱き着くとぐりぐりと顔を押し付けてから深呼吸をした。

 もはやルキにとっては大切な日課となっているその行為を終えてからルキは顔だけ離し、そして部屋の様相を見てから一言。


「あの駄女神、何やってんだよ」


 こちらもすぐにイシュタリアの仕業だと判断して呆れたようにそう零した。


「おはよう、ルキ」


「おう、おはよう、アッシュ」


 とはいえ朝の挨拶は大切なものだ。

 互いにイシュタリアに対する呆れはありつつも、おはよう、と言葉を交わす。


「で、どうなってんだこれ」


「俺も目が覚めたばかりだからよくわからないな。まぁ、イシュタリアがまたバカなことをしてるんだと思うけど」


「またかよ」


 そう言いながらも部屋の中を見渡していたアッシュは、先ほどまではなかったはずの張り紙が扉に貼り付けられていることに気づいた。

 ルキもそれに気づいたようで、何が書いてあるのかと二人で見に行くと張り紙にはこう書かれていた。


『キスしないと出られない部屋♡』


 それを見た瞬間、アッシュは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、ルキは何かを考え込むように黙ってしまった。


「随分とふざけたことをするよな……」


 アッシュの脳内には面白いことを思いついた! と得意げな表情を浮かべているイシュタリアの姿が浮かんでいた。

 尚、実際にこの部屋を思いついた際のイシュタリアはアッシュの想像通りの表情を浮かべていた。それと、流石私ね! という自画自賛もついてくるのだが。


「なぁ、アッシュ」


「どうした?」


「キスしないと出られないんだよな?」


「らしいな」


「ってことはキスしなければアッシュと二人きりで過ごせるってことで良いんだよな!?」


 ルキにとってはアッシュと二人きりで過ごせる部屋、という認識になっているようだった。

 最近は近い未来での敵であるシャロは良いとして、既に敵になっているクロエとカルナのせいで苛立つことも多いルキ。

 邪魔が入らずアッシュを独り占め出来るこの部屋は端的に言って最高の部屋なのでは? ということを考えていた。


「気楽なもんだな」


「仕方ねぇだろ。最近はアッシュを独り占め出来る時間とかほとんどないんだからさ」


 ルキの中ではこのまま部屋から出ずにアッシュを独り占めする。ということが確定していた。

 それにアッシュが早く部屋を出たいと思うならアッシュの方からキスしてくれることになるからそれはそれで良いよな! というどちらにしてもルキにとっては得しかない状況だったりする。


「はぁ……イシュタリアが何をしたいのかわからないけど、時間が経てば解放される。とかはないんだろうな……」


 ため息をついたアッシュに反応するように張り紙には言葉が追加された。


『時間経過による解放はありません』

『お手洗いやお風呂は部屋に備え付けられているので安心してください』

『食事に関しては隣にキッチンが併設されています』

『外との時間の流れは違うのでゆっくりしていってね!』


「楽しそうだな、あいつ」


「これは思う存分アッシュを独り占め出来るってことだよな!」


「ルキはルキで楽しそうだな……」


 実は裏で二人が結託してるんじゃないよな? と思いながらアッシュはどうしたものかと考える。

 イシュタリアのことだから本当にキスするまではこの部屋から出られないだろうな、となれば仕方がないのでさっさとルキにキスをして部屋を出れば良いか。

 死にゆく目で結論を出しつつ取り合えず、と顔でも洗ってくるか。ついでにやらないといけないなら歯を磨くことも必要だよな。

 と、現実逃避していた。つまるところ、問題の先送りである。



 アッシュの現実逃避も終わり、それに付き合っていたルキはベッドに腰かけると自分の隣に座るように、とアッシュを促した。

 それに従ってアッシュが同じように腰かけると、ルキは二人の間に出来た僅かな距離を詰めてアッシュにぴったりくっついた。

 いつもとは少し違う様子にアッシュが戸惑っているとルキはアッシュの手を取り、そのまま手首にキスを落とした。


「ルキ?」


「んー……やっぱ無理か、そうだよな」


 ルキは張り紙の方を見ていて、そこには新しく『不可』とかかれていた。


「あれは……イシュタリアの判定か?」


「たぶんな。これで開くわけないよなー、って思ってたけどやっぱりダメか」


「なるほど……何処にキスしろ、とは書かれてないから手とかでもいける可能性はあるのか」


「そういうこと。ってことで他のところにもキスしてみようぜ。あ、俺がするのも良いけどアッシュがしてくれても良いんだぞ!」


 さぁ、来い! とルキは期待するようにアッシュを見る。


「そうだな……手から少しずつ上げていくか?」


「それやってもどうせ不可、ってなるだけだと思うんだけどなぁ……」


 アッシュはルキの言う通りだとは思いながらも、僅かな希望を抱きながらルキの手を取るとその手の平に唇をつける。

 手の甲とか気障すぎてないよな、と思いながら。

 勿論その結果は『不可』だった。


「ほらな?」


「まぁ、そうだよな……」


 イシュタリアがこの程度で良しとするわけがない。とアッシュは内心でため息をつきながらどうしたものかと考える。

 たぶんこれは本当にキスしないとダメだよな。いやでもそれはルキに手を出すことになるのでは?

 そんなことを考えるアッシュとは違い、ルキはこれは間違いなくチャンスなはずだ! と気合いを入れていた。

 というわけでアッシュが考え事をしていることなどお構いなしに攻めることにした。


「よし、どんどんいくぞー」


 そんな言葉と共にルキはアッシュの首元に手を伸ばし、サッと器用にボタンを外すと普段は隠れている鎖骨の辺りに唇を寄せた。

 アッシュはいきなりのことに驚きながら、もっと楽な場所があっただろ、と思った。


「ルキ、別にそこじゃなくても……っ!?」


 何やってんだよ、と声をかけようとした瞬間。

 アッシュは僅かな痛みを感じた。

 それと同時に何をされたのか、すぐに察して苦い表彰を浮かべる。


「んー……よし、しっかり痕がついたな!」


 ルキの言葉通りにアッシュの鎖骨には赤い痕がしっかりと残っていた。

 それを満足そうに見てからルキはそのまま襟をつかむと今度は首筋に唇を寄せ、同じように、というよりも先ほどより強く吸い付いた。


「痛っ……」


 そして痕を付けるとすぐにそれに舌を這わせ、ついてしまった自身の唾液を嘗めとる。

 それからすぐに今度は喉元に噛みつくようにキスをする。

 勿論、こちらにも痕を残すべく吸い付くのだが首元のそれよりも強く吸われたアッシュは流石に文句の一つでも言わなければ、と口を開こうとした。


「んっ……これなら隠せないよな」


「ルキ、やりすぎだ。普通に痛かったぞ」


「これくらいへーきだろ? それよりもアッシュはしてくれないのかよ」


 自分の鎖骨、首元、喉を人差し指でなぞり、示しながらルキが言えばアッシュはため息を零す。


「あのな……普通はこんなのつけようとしないだろ」


「良いじゃん、もしかしたらこれでイシュタリアが外に出してくれるかもしれねぇだろ?」


「いや、ないだろ。イシュタリアだし」


 アッシュがありえないな、と思いながら言えば二人の間にひらひらと紙切れが降ってきた。


「なんだこれ?」


 ルキが手に取ったそれには『前向きに検討したいと思います』と書かれていた。


「これ絶対にダメな奴だろ」


「良いから良いから!」


 もしかしてイシュタリアと結託してるのでは? と思いながらアッシュはもうどうとでもなれ、と投げやりにルキの鎖骨にキスをする。

 とはいえ後をつけるようなことはなく、適当に回数をこなせばイシュタリアも満足する可能性にかけて何度もキスをする。

 鎖骨、首筋、喉、頬、と順番にキスをしながらまだダメか? と視線だけを張り紙に向ける。

 残念なことに『不可』だった。


「ダメか……」


「アッシュ、交代しようぜ」


「はいはい……もう好きにしろ……」


 あれこれ考えてもダメなんだろうな、と投げやりになるアッシュとは違い、ルキはやる気になっていた。というかヤる気になっていた。

 イシュタリアに見られているのは少し気に入らないがいざ事が始まればそっと見るのをやめるはず。

 ルキはそう考えて、疲れたように脱力するアッシュを押し倒した。

 そしてそんなルキの瞳には決意と覚悟が宿っていた。


「は? お、おい、ルキ?」


「俺はアッシュのことが大好きだ」


「え?」


「だからさ、ちゃんと行動で示そうと思うんだ」


「ルキ、ちょっと落ち着こうか」


「これくらいじゃダメかもしれないけど……お、俺! 頑張るからな!」


 決意も覚悟もある。

 とはいえ、スキンシップのようにキスをするのと、これからするキスはまったくの別物だ。

 そのせいかルキは赤くなりながら、少しだけ恥ずかしそうにしながらそう言い切った。


「待って、何を頑張る気なんだ!?」


 アッシュの言葉にルキは何も答えない。

 大丈夫、俺ならやれる! ってか赤チビがやりやがった以上は俺はそれ以上頑張らないと! そういえばあいつは舌がどうとか言ってたし……い、良いぜ! やってやるよ!!

 ルキはそんな風に自身を奮い立たせながら意を決したようにアッシュを見つめる。

 そして抜け出そうとするアッシュの手を押さえてからルキはそっと唇を重ねた。


 アッシュはルキのことについて知らないことの方が少ない。

 サラサラとした髪の手触りや尻尾のモフモフ感、滑らかな肌の感触、微かだが甘い匂い。その他諸々。

 でもルキの唇がこんなに柔らかいとか知らなかったし、知らなくても良かったはずなのに……!

 内心でそんなことを考えつつ、これは俺が手を出されたことになるのでは? 前にイシュタリアに食べられる側って言われたけどあれは本当だったのか? 思考が回る。

 そしてそんなことを考えている間にルキはキスをすることをやめて赤くなったままアッシュを直視しないように視線を泳がせた。


「…………こ、これだけなのに、めちゃくちゃ恥ずかしいっていうか、照れるな……」


 そう言いながらも嬉しさを隠しきれないルキはふにゃっと破顔した。

 そんなルキを見て文句の一つでも言ってやろう、と考えていたアッシュは毒気が抜けてしまった。


「はぁ……まったく、そんなに真っ赤になるくらいなら無理にしなくても良かっただろ」


「無理じゃねぇし! 赤チビが出来て俺が出来ないわけないだろ!」


「いや、その状態で言われても説得力ないぞ」


 呆れたようにアッシュが言えば、ルキはむっとしたような表情を浮かべた。

 そして未だに押さえたままの手に力を込める。


「だったら無理してないって証明してやるよ」


「証明?」


 何をする気だ? とアッシュが思っているとルキは一度深呼吸をしてからゆっくりとアッシュに顔を近づける。


「まさか……」


「無理してないってアッシュがわかるまで、何度だってしてやるからな」


 言い終わると同時に二度目のキスをする。

 しかし今度はすぐに唇を離して恥ずかしさからか、はたまた嬉しさからか。僅かに潤んだ瞳でアッシュを見つめる。

 アッシュはそんなルキに心臓が一際大きく跳ねた。どうやらアッシュはルキの雰囲気に完全に飲まれてしまったようだった。

 キスの技巧などないにしても、たったこれだけのことでそういう雰囲気を作り上げてしまうのはルキの天性のセンスなのか。

 それともアッシュがルキに対してあまりにもちょろいせいなのか。


「本当は少し恥ずかしいけど……その、アッシュに俺の気持ちが伝わって、アッシュが俺に応えてくれるようになってくれたら嬉しいなって思うんだ」


 ルキはそう伝えてゆっくり距離を詰めるとぺろっと舌先でアッシュの唇を舐めた。


「!?」


 アッシュはそれに驚くがルキは止まらない。


「ん……」


 二度、三度とルキはアッシュの唇を舐める。それも同じ場所ではなく唇の端から端まで、何度も何度も。

 唇の触れ合う柔らかな感触とは違う、ルキの舌の濡れた感触にアッシュの背筋にはぞくぞくとした痺れが走る。

 それに抵抗するように口を強く結ぶアッシュだったが、ルキはそれを察して自身の体をアッシュに預けるように密着させ、押さえた手を動かし指を絡めた。

 そうして密着したことによって、より強く感じられるようになったルキの匂いにアッシュはくらくらとするものを感じていた。

 その何処か煽情的な全てがアッシュの理性をがりがりと削っていく。


「く、ぁ……」


 そして強く結ばれた口が僅かに開いて声が漏れた瞬間。

 アッシュが唇に感じていた滑らかで柔らかく、温かい、そして何よりも脳髄に甘い痺れを生むルキの舌が僅かな隙間から口内へと侵入した。

 舌と舌が触れ合う感触と共にもっと味わいたい、と思えるような甘さをアッシュは感じていた。

 そんなアッシュなどお構いなしにルキの舌はアッシュの口内を蹂躙していく。


「ん……ふ、ぅ……ぁ」


 ルキの舌先はゆっくりと歯茎をなぞっていく。

 上下の唇の裏側の粘膜を嬲るように刺激しながらアッシュの口内の全てを味わうように止まることは一切ない。


「ちゅ……ん、ぁ……」


 それが終わると今度はせめて、と逃げようとしたアッシュの舌を絡めとる。

 またその際に声を漏らし、音を立て、今度はアッシュの聴覚までも犯していく。


「んー……ぢゅるる、ちゅっ……」


 思う存分にアッシュの口内を蹂躙、堪能してから最後にアッシュの舌を吸ってルキはアッシュから顔を放した。

 そしてお互いに呼吸を整えながら見つめ合う蕩けた瞳のルキと、焦点の合わない荒い呼吸を繰り返すアッシュ。

 それからルキはアッシュの手を放して両手で頬を挟むようにして持ち、再度キスをしようと顔を近づけるがアッシュは抵抗する様子はなくそれを受け入れた。


「ん、ちゅ、ちゅっ……ん、ふ、んん~♡」


 最初は触れるだけのキスをして、それから深く深く舌を差し込むルキと無意識にそれに応えるように舌を絡めるアッシュ。

 顔の向きを変えながら互いに相手の口内を、絡め合う舌を味わうように。

 そうすることによって酸素が足りなくなり、意識が朦朧とするが二人は関係ないとばかりに相手を求め続ける。


「む、ぅん……れ、ぁ……」


「ん、く……ごくっ……」


 互いに激しく貪り合った最後にルキは唾液をアッシュの口に流し込んだ。

 アッシュにとってそれは何よりも甘い蜜のように感じられ、拒むことなく飲み干した。

 そしてアッシュの脳にこれがルキの味なのだと強く刻み込まれた。


「はぁ……はぁ……あっしゅ……♡」


「ふ、ぅ……ル、キ……」


 互いに限界が近くなり、離れたアッシュとルキの舌からは唾液の糸が繋がっていて、それが非常に煽情的で、蠱惑的で。

 もはやアッシュもルキも、理性など完全に働いていない状態だった。


「ん……あっひゅ……」


 充分に、とはいかないが呼吸を整えてからルキは口を開いて舌を出した。

 濡れて蕩けた瞳と紅潮した頬。そして先ほどまで互いに貪り、絡ませ合った舌。

 アッシュはたったそれだけの行動で、ルキが何を望んでいるのか、わかってしまう。


「ぇあ……」


 アッシュはそれに自身の舌を伸ばして触れ合う。と、同時に互いに舌を絡ませ、互いの距離が零になる。

 ルキはアッシュの舌を甘噛みしたり、根元から先端までを舌でしごいたり。

 完全にルキがアッシュを攻め立てている状態で、アッシュはただルキから与えらえる物を全て享受するだけだった。


「ぅ、ふ、っぁ……」


「ん~……ぢゅる、るるるる~……ぷはぁっ♡」


 そして一方的な蹂躙と征服を終えたルキはうっとりと蕩けた瞳でアッシュを見る。

 アッシュは酸素不足に陥っているのか、大きく荒い呼吸を繰り返していた。


「まだ終わりじゃねぇけど、俺に全部任せてくれよな、アッシュ♡」


 情欲を孕んだ声でそう告げたルキの眼は肉食獣が獲物を前にした時の眼であり、それを見たアッシュは朦朧とする意識の中でイシュタリアの言葉を思い出していた。

 それは冗談抜きでルキに食べられる側だ、という言葉だ。

 あれは本当だったんだな、と思うと同時に服を脱ぎ始めたルキの姿がやけに色っぽく見えてこれは今から喰われるな、と悟る。

 そしてルキがアッシュの服に手をかけた時、小さくカチャリ、と鍵の開く音が部屋に響く。

 とはいえ、それは捕食者(ルキ)被食者(アッシュ)には届かず、また新たな蹂躙が始まろうとしていた。



 「!?」


 バッとアッシュは体を起こす。

 そして自分の姿、というよりも服を確認する。

 大丈夫、ちゃんと着ている。

 そのことにほっ、と安堵の息をついて次に部屋を見渡した。

 そうすればいつもの自分の部屋だということがわかった。


「……はぁぁぁぁ……良かった、夢か……」


 夢で良かった……! アッシュは心の底からそう思えていた。

 だがそれと同時に夢の中での出来事と、ルキから与えられた快楽の全てを思い出して珍しいことに耳まで赤くなって両手で顔を覆った。


「あー……くっそ、変な扉をこじ開けられた気分だ……」


 言葉の通りに夢の中でルキに新しい扉をこじ開けられたアッシュはこれからどんな顔をしてルキに接したら良いのか、と頭を悩ませていた。


「んー……」


 と、そこで隣からルキの声がしてビクッと小さく肩が跳ねた。

 そしてアッシュがもぞもぞと動き出したルキを見ると丁度目を覚ましたようで寝ぼけたままルキは体を起こしていた。


「えっと、おはよう、ルキ」


 とりあえず平常心が大事だ。

 あくまでもあれは夢なんだからいちいち気にしてもしかたないよな!

 そんな風にアッシュが自分を言い聞かせているとルキはアッシュの首に腕を回し、自然な動きで唇を重ねる。更に言えば間髪入れずに舌を差し込んだ。


「んんっ!?」


 突然のことにアッシュは驚きつつも、侵入してきたルキの舌を自身の舌で押し返すのだがそれを自分の行為に応えてくれた。と判断したルキが絶対に逃がさない。とでもいうように絡みつく。

 そして夢と同じようにルキがアッシュの口内を蹂躙し始めるが、これは流石に良くない! っていうかヤバイ! とアッシュはルキの舌を噛んで動きを止めた。


「ん、うん?」


 そうすると流石に、というかどうして? とでも言いたげにルキは蹂躙をやめて疑問符を浮かべながら動きを止めた。

 その隙にアッシュはルキの腕を解き、どうにか引きはがしてからグッと軽く口元を拭い、口を開く。


「ルキ、寝惚けてるにしてもこれはないだろ……」


「別に寝惚けてはないんだけど……っていうか、何で止めるんだよ」


 ムッとしたようにルキがそう言ったが、アッシュは小さなため息を零すとこう答えた。


「普通は止める。だいたい何でいきなりあんなことしたんだ?」


「何でって……したかったから? それに散々してただろ?」


「いや、してないから。本当に、してないから。妙な夢でも見てたんじゃないか?」


 何言ってんだ、と言いたげなルキに対してアッシュは真顔で否定していた。

 と、同時に夢かと思ってたけどあれってもしかして夢じゃなかった? いや、夢だった、あれは夢だったんだ! と内心では混乱していた。


「……え? い、いや、だってあんなに……」


 またルキはルキでアッシュの言葉を聞いて夢を見ていた? いや、あれは現実のはず! っていうか現実であってくれ!! と考えていた。


「ったく……まだ寝惚けてるみたいだな。ちゃんと起きないとダメだぞ?」


「え、嘘だろ!? 最後までしたんだぞ!? っていうか何回もしたんだぞ!?」


「何を最後までしたか知らないけど……ちゃんと目を覚ませよ」


「何だよぉ……!! せっかくアッシュが手に入ったと思ったのに……!!」


 不満そうに言いながらルキはアッシュの腹部にぐりぐりと顔を押し付けた。。

 その姿を見て、何故かアッシュは自身の上で動く夢の中で見たルキの姿を思い出して目を逸らす。

 あれは夢。あれは夢! あれは夢ったら夢!!

 でもルキも同じ夢を見たってことは夢じゃ可能性も? っていうかイシュタリアが絡んでる以上は現実の可能性の方が高いんじゃ……?

 その可能性に行き着いたアッシュが天を仰いだ。

 と、同時にあれが現実か……と思い出して、本気でこれからルキとどう接したら良いんだよ……と頭が痛くなるのを感じていた。


「……あれが夢なら、現実でもやれば良いだけだよな……」


 だからだろうか。ルキが呟いた不穏な言葉に気づくことが出来なかったのは。

 とはいえ、既に捕食者と被食者の立場になっている以上、アッシュがその呟きに気づいていたとしても意味などないのかもしれない。

ヤりました。っていうか、食べられました。尚そのシーンはカットな模様。

とりあえずこれくらいしないとアッシュがルキのヒロイン(ガチ)にはなれないかなと。

ルキは何をしてもアッシュがほぼ怒らない、拒絶しない、ということもあって強硬手段に出る可能性も充分あるので、気を付けないとまた食べられる可能性があったりなかったり。

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