4/5
【第三話】……夢の職業の巻
「軍曹! ミラクルの為のお酒買ってきて!」
「わかりました!」
このミラクルという符号、大変に特殊なお酒で他所では飲めないのである。
それもそのはず、ここの厨房責任者が調合したお酒なのだ。
……密造ではない。
ただ単に勝手に買ってきたお酒を混ぜるだけである。
夜の飲食では調合師なる都市伝説的な職業がある。
空の瓶に安酒を混ぜ込んだのを詰め込み、ラベル通りの高いお酒として仕上げるのだ。
「軍曹! ミラクルの注文ない?」
「まだ、ありません!」
勿論、大事なお客様に、調理場の主の怪しい趣味酒を飲ませる店員はいない。
飲んだことは無いがきっと不味かったのだろう……(´・ω・`)
夜の街の夢は幻か?
空高く舞い上がれ、夢の調合師への夢。
「ミラクルの為のお酒買ってきて!」
……懐かしい厨房の声が今日も鳴り響く。




