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サイコキラー探偵  作者: 三鷹 キシュン
第3話「ホロウ・ゴースト」
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#007 検視とプロファイル

赤刃陣瑛は、一般的に準キャリア組のひとりである。

「巡査部長」という階級から始まると、僅か2年で昇格試験をクリアし

「警部補」へ昇進した後、彼の活躍はヒートアップしていった。


低俗区『スラム街』に隣接する6等区『ミスト街』

河崎署刑事課「強行犯捜査係」管轄区域で発生した4つの難事件を

快速に解決へ導いた突出した頭脳や身体能力が買われ始めたことを機に。

2カ月ほど前の『詐欺事件』、

警視庁との合同捜査にて彼がとった行動によって

詐欺グループ首領の高飛びを阻止。

さらに横流ししていた当時の捜査二課課長を緊急逮捕という快挙を為した。

そこへ本庁捜査一課への人事異動となれば、

―――怪物ルーキーと噂されるのは必然的と言ってもいいだろう。


ここからは補足。

怪物ルーキーと噂されるのは『表=警察官』としてだけではなく、

裏の稼業でも気にしなくとも自然と耳に入ってくる。

表ではあの詐欺事件で一役買った敏腕刑事とされてはいるが、実際は違う。

『掃除屋』として、

とある依頼を請け負った赤羽はひとりの犯罪者を殺害した。

結果からいえばそれが事件の引き金になってしまったが、

犯罪者の所有していた資料からすべてを認識した赤羽は

捜査と詐欺グループの裏をかいたに過ぎないのだから。


すべての刑事を敵に回す、なんていうことは出来ればしたくはない。

しかし、女学生の遺体を視認して赤羽はあることに気付いていた。

現状から見てほぼ間違いなく死因は溺死と推測されるが、

―――これは傷跡か?


首筋をぐるりと一回転させた薄い傷跡、

―――すでに治り掛けているが傷跡の上にまだ新しい傷跡アリ。

左手首に巻かれた壊れた腕時計、

―――重量物に接触した可能性アリ、

時間帯は読み取ることが出来ないほど粉砕し時計の下に擦れた痕あり、

手首の骨だけが折れている。

右手首から肩までにかけて巻かれた包帯、

―――当然の如く包帯は水で濡れているが

問題なのは骨折していることにある。

包帯を取ると、

先程突っ掛って来た青年風の刑事が口元を両手で塞ぎ去っていった。

それほど醜いモノだった。

青年風の刑事だけではなく、

他の人間も見ぬに堪えない表情をあらわにするが

ひとりだけ表情を全く変えていなかった。

―――赤刃だけが、もくもくと遺体を調査していた。



もう、これは虐待ではない。

一種の拷問だ。

数十回、叩いた程度でここまで原型のない腕にはならない。

掃除屋としての経験上から推測すると、

数百回以上、時間をかけて鈍器で殴りつけ深い傷に治療の痕跡から見て

犯人はこの女学生を十数時間以上拘束した上拷問にかけて

右腕の神経を切断後にぐるぐると包帯を巻いていたのか。


他の箇所に外傷は見当たらない点から見て、

赤刃は即席ではあるものの犯人像のプロファイルを作成した。

傷口の治療痕や醜い腕を隠す行為から、

犯行の準備段階から徹底していている。

学生服に濡れた後以外に染み汚れがないことを含めると、

殺害したあと服を着せ直した可能性が高い。

―――秩序型の犯人と考えていいだろう。


女学生の制服を事前に準備しての犯行、

―――被害者のごく親しい人間の犯行と見れば、すべてスッキリする。


問題があるとすれば、壊れた腕時計だな。

粉砕具合から見て腕を叩いた凶器よりも重いモノ・・・、

こればっかりはオレにもわからない。


検視官に見てもらった方がいい、と判断した赤刃は立ち上がって一言。

「それじゃ、あとはお任せします」


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