#005 アグレッシブ
ペラペラ、と次々と
お札を捲って確認し終えた古賀は元入っていた封筒に収める。
・・・それにしても前金で50万もくれるとは。
さて、どうしたものか。
この遺書を読んだ限りでは、
死亡した理由は百歩譲っていじめが原因だろう。
しかしだ。
この文章の何処にも自殺を仄めかす言葉はない。
木更津の放った言葉も気になる。
『彼の自殺には奇妙な点が多く見つかっています』とは言っていたが、
そういった報道記述はなかった筈にも関わらず、どうして知っていた。
いくら葬儀の場で亡くなった人間に会えるとはいえ、
親戚関係でもない者が遺体の身体すべてを隈なく視認する立場にない。
視認できるとすれば、顔だけだ。
そう推論付けるなら、どういった経歴で身体を見ることが出来た?
木更津自身が死の真相を調査した結果またはその過程で、
映像もしくは画像を見たと判断した方がいい。
問題はそれを見つけた場所だが彼の言動からいって間違いなく、
―――『アグレス・クラブ』。
はぐらかされた理由は恐らくそこにあるのだろう。
アグレス・クラブねぇ~、
名前から察すれば
・・・察する必要性はないが『クラブ』は一般的な認識では、
共通の趣味・興味を持つ仲間が
定期的に集まって形成する団体のことをいう。
聞き覚えがないのは『アグレス』という単語だが、
恐らくは略語の可能性が高い。
最もこの単語に近いのはアグレッシブ、
相手を常に攻め続けること、勢いよく攻めかかる『攻撃的』とか
思い切りよく、物事を次々と行う『積極的』そういう意味から推測して、
アグレス・クラブとは、攻撃的な複数人の集団組織と考えるのが一般論。
そこへ一歩、二歩わたしなりに手を加えると
クラブなんて名前を付けている幼稚性と事件概要からして、
―――学校の闇サイトの中で暗躍する子供たちを集めた攻撃的な集団。
「・・・取り敢えず、事件の現場にでも行くか」
自殺をしたとされる男子学生K・Dではなく、
池で溺死した女子学生の方の現場だ。
遺体が既に火葬されて現物がないものよりも、事件の関連性が強い上に
現物が存在する現場なら記者や刑事がいる。
自殺をしたとされる男子学生の母親に、事情を訊こうにも渋られては
話にならないが、雑誌記者なら多少懐が心配になるが
金をチラつかせるなりすれば問題はない。
刑事の方は知り合いの巌城あたり本庁の人間が一人でもいれば、
事情ぐらいは聴けるだろうと出掛ける準備を終えたところで
ひとりのお客が尋ねてきた。
ただ客人というよりただならぬ気配を身に纏った、
―――堅気ではない赤髪の不良交じりのある青年だった。




