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サイコキラー探偵  作者: 三鷹 キシュン
第2話「プライマリー・アシスト」
43/63

#020 親切心

その一方で神崎忍は、

次の目的地である3高区『銀座ホール』の

酒場『bar Artemis』に徒歩で向かっていた。


正午を過ぎた平日の午後は、神崎に容赦ない直射日光を浴びさせる。

いくら植樹帯のある歩道を歩いているとはいえ、

植樹帯の本来の役割は、

環境問題となっている排気ガスと事故から人を守るに植えられている。

歩道の幅が2m以上の所、

もしくは車の交通量が多いところに設置されているために

日光や暑さまでも防ぐことはできない。


神崎のいまの幸せは、2つ。

―――ひとつは、気持ちいい風が吹いてくれることを願い。

―――もうひとつは、

一刻も早く目的地に到着してごはん・・・じゃなくて、

依頼人のケイタイを見つけること・・・なのだが、

神崎忍の頭には幸せなんてどうでも良かった。

ただただ、この暑さを凌げれば。


ハンカチで額や頬の汗を(ぬぐ)うが、

一向に止まらない汗で白いワンピースが透けはじめていた。

別に勝負下着のような色気のある物ではないが、やっぱり少し恥ずかしい。

暑さから来るものではないが頬を紅潮させ恥じらいながら、

歩き出そうと一歩前へ踏み出そうとした時だった。

神崎の視界の前に白い壁、

―――正確には白いフードコートが塞いだ。


「これ、貸したげるよ。そのままじゃあ、風邪ひくよ」

神崎は内心はまだ、都会人を信用していない。

しかし、せっかくの親切心を無駄にしたくはなかった彼女は受け取った。

全身に刻み込まれた刺青に青いサングラスを掛けた、

この景色、

―――2高区『緑町タウン』とは不釣り合い。

どちらかと言えば、危険地帯と呼ばれる低俗区『スラム街』で見る

ガラの悪い男から受け取ってしまった。


人は外見から判断してはいけない、

これは一般常識の範囲内であると同時によく母が言っていた。

神崎は外見の怖さから内心震えながら、感謝の言葉を口にした。

「あ・・あの、ありがとうございます」

「いいよ、お礼なんて。

「そうだ、その服あげるよ。僕にはもう必要ないからね。


それじゃあ、と一言。

彼は神崎とは反対・・・来た道を歩いて行った。

都会人も捨てたもんじゃないと、感心するがハッと我に返る。

危うく、当初の目的を忘れることだった神崎は漸く・・・、

・・・・・・、

1時間ほどかけて目的地に到着したのだが、

目に映ったのは『準備中』の札だった。


汗が零れ落ち、ガッカリしているところに買い物帰りの通行人だろうか。

一人の女性が現れた。

年齢的には神崎よりも下と思われる彼女は、

右手に黄緑色の行書体で書かれた『玉露屋』

白いビニール袋を提げていた。

「あの~、お客さんですか。

「まだ、開店時間ではないですけど入りますか?


神崎は誤解していたことに気付いた。

都会人は冷たいという印象がここに来た時は確かにあったが、

先程のガラの悪い彼といい、この彼女といい。

親切心で溢れていた彼女の言葉に神崎は喜んで乗ることにした。

「ありがとう。

「―――お願いします。


カチャガチャ、とお店の鍵を開ける。

どうぞ、と先に神崎を上がらせると

ボタン操作もなく自動的にLED電灯と冷房機器の電源が入った。

「適当に腰掛けてて、いまお茶淹れるから」


彼女に勧まれて神崎は、

バーカウンターに設置されている木製のイスに腰掛けた。


 「投稿の気持ち」

 まだまだこれから、夏の本番ですね。

 次回も読んで戴ければ幸いです。

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