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サイコキラー探偵  作者: 三鷹 キシュン
第2話「プライマリー・アシスト」
33/63

#011 慎重主義

「随分と気前のいい客だったみたいですね」

営業時間外の仕事には、『時間外手当』という名目で給料が増額される。

しかしながら、

ウチの会社は大きくもない上にほとんどがボランティア活動に近い。

故に『手当』がなく、

『保険』の加入で減額された『月給』のみで生活を強いられている。


「倍額もくれるなんて」

時間外の仕事でも働いた分のお金

―――物品回収・引き取り額は会社預かりとなるが

客がくれるチップは自分たちのものになる。


「・・・・・・あの客、様子が変じゃなかったか?」

安全に運転をしながら、バックミラーを片手で動かし積んだ荷物を見る。

運転手は引き取りの際、

彼の様子がよそよそしいというか何か妙なものを感じ取っていた。

普通、屋内でフードを被ってサングラスをかけるだろうか・・・と。


「そうか?」

何もなかったように相棒はあしらって、タバコを噴かしている。

溜め息をついて、

運転手はサイドブレーキを引きガス化溶融炉施設へ搬入した。


ガス化溶融炉とは、焼却炉の一種でガス化炉と溶融炉を組み合わせたもの。

ごみをガス化炉により低酸素状態で加熱することで、

可燃性のガスと炭に分解。

発生したガスと炭を溶融炉に投入し、

1,300℃以上の高温で燃焼、炭を溶融することで

建設・土木資材として有効活用されている『溶融スラグ』を生成する。


わが社が掲げる『ゴミのない世界をつくろう』に大きく貢献できる誇り。

契約を済ませているためもあって、

手際よく引き取った冷蔵庫は直ぐに処分場に運ばれた。




コツン・・・カツン・・・、と螺旋階段を降りていく赤髪の男は、

無作為に頭の中で思い浮かぶ(うた)を奏でる様に口笛を吹き口ずさむ。

「快楽とは、一瞬の僥倖(ぎょうこう)―――。

「駆け引きは、いつも単調にことを成す・・・。

「逃亡は、焦らずに慎重な選択が自分の命を救う。


中間、5,6階あたりでジャケットのポケットに入れていた

薄型スマートフォンが着信によるバイブレーション機能で振動する。

フードを被ったままの状態で男は、降りながら電話に出る。


「もしもし?

「・・・・・・ああ、はい。

「問題の件ならいまごろガスと炭になっているころです。

「・・・・・・。

「それよりも随分と慎重主義なんですね。

「もっと大胆な方と思っていましたが。

「・・・・・・ええ、ではそちらの件は貴方にお任せしますよ。

「これ以上、自分が加担して負を背負うのは良いとは言えない。

「・・・・・・。

「では、失礼しますよ。


電話を切った私は近場の公園に止めておいたスポーツカーに乗り込む。

サングラスを取って、フードを脱いだ彼はカーステレオに手を掛ける。

衛星ラジオの電源を入れて、

正午から始まる『#音の救済者#』に耳を傾ける。

疲れた時に聴くと、

非常に癒されてリラックスできるショパンのノクターンが流れ、

女性ナレーションが正午の挨拶をしてラジオ番組が始まった。


『こんにちは、松本レナが送る。#音の救済者#の時間です。

『―――今日、皆様に贈るのは、「風のように」です。


ハンドルを握った彼は、

ヒーリング音楽を楽しむために静かにエンジンをかけ、

徐行運転から左右を確認して、

アクセルペダルをゆっくりと触れ発進させた。

GPS機能で、目的地を『警視庁』に変えた彼はにっこりと笑って独り言。


「悪は悪を成してこそ、正義を真剣に考えることが出来る。

「罪は根元から削除してこそ、本物の『悪』を語れるものだ。

「そう、思はないか――――大嶽さん。

助手席に座る細身体系の男に、赤髪の男は問い掛けた。


 「投稿の気持ち」

 頭の中で貯まったものを一気に消化した気分です。

 この3連休でどこまで執筆出来るかは不明ですが、

 読んで戴ければ幸いです。

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