幼馴染
「よぉ」
家を出た俺が、声を掛けると、隣の家の敷地で暇そうに地面をいじっていた女の子が顔を上げた。
「何?」
無表情気味で、首を傾げた彼女の蒼い髪がさらりと零れる。
彼女の名前はアリア。
この世界での、俺の幼馴染だ。
一年違いで生まれ、しかも家が隣同士ときたもんだ。
ある程度大きくなった子供や大人たちは老人を除き日中働き通しの為、幼い子供たちは子供たちだけで集団を作る。
俺はその集団に参加していない。
必要があれば参加するが、基本的に大人たちは子供のことを放任にしている。
なら、演技をしてまで子供たちの中に入る必要もあるまいという判断だ。
「いや、暇かなーって」
「まぁ、そうね」
そして、この子もほとんど参加しない。
アリアは俺の一歳上の六歳。
年の割に随分と大人びている。妹がいるというのもあるだろうが、それにしたって、大したものだ。
アリアはやや横にずれて座り直し、俺は彼女の隣に座った。
彼女が先ほどいじっていた地面を見ると、そこには明らかに絵心を感じる景色が描かれていた。
……うま。
「良かった」
再び地面に景色を描き始めていたアリアの手がしばらくして止まる。
「……もしかして、アイシャのことをききにきたの?」
勘が鋭い。
アリアは筆代わりにしていた木の枝を置いて、頭を下げた。
「……ありがとう。私の家は今は貧乏だけど、いつかは何かお礼を……」
俺はデコピンをした。
勿論、加護の力を込めていない普通の五歳児のデコピンだ。
「いたっ」
顔を上げて額を抑え、不満気にこちらを見たアリアの頭を撫でる。
「良いんだよ、そんなこと気にしなくて」
「でも」
「でもじゃない。たまたま生えてたから、拾っただけだ」
「そんなわけっ」
「あるよ」
「…………むぅ」
どうやら、彼女は六歳にしてうちの母親よりも騙されにくいみたいだった。




