第45話 俺の勝ち
アーシュ達が広場を抜け、神の神殿に向かっていく。
広場に残った4つの規格外の力が、解放される。
「雷神の血の契約により命ずる!舞え!サンダーバード!」
「アルフヘイムよりきたれ、ニブルヘイムにかえれ、ライトニングアロー!」
オーディンより放れた雷鳥を、フェンリルが放った光の矢が撃ち落とす。
「12の時を刻み、13番目の罪を解き放つ鍵をここに!いでよロキ!」
「十拳剣をここに! オロチを狩れ! スサノオ!!」
ルシファーが黒い影のようなロキを、アマテラスが白い影のようなスサノオを。
2つの影が衝突すると、膨大なエネルギーの爆発が起こる。
「飛ばしてるな~。息切れするなよ?」
「貴方こそ、戦いに夢中になってこっちに力を飛ばさないでくださいね」
「おぅよ!」
オーディンがグングニルを構える。
「俺の“聖樹の槍”も、アーシュに負けちゃいないぜ! グングニル!!」
投げつけた槍はエネルギーの塊となり、フェンリルとルシファーを襲う。
「暑いな……太陽の前に立ち、輝く神の前に立つ楯よ! スヴェル!」
フェンリルが氷の楯でグングニルを弾く。
マリアが膨大な詠唱と、己の血の魔法陣で発動させた魔法をいとも簡単に唱える。
「黎明の光よ。明けの明星よ。天から落ち、地を滅ぼせ!メテオ!!」
ルシファーが詠唱すると、無数の流星がオーディン達を襲う。
「樹木の力よ、あらゆる万物を包容したまえ!森羅万象!!」
アマテラスが作りし樹木の楯が、流星を受け止め吸収するかのように、存在を消していく。
「黒点より舞いあがる嵐よ!我が雷と共に!!フレア!!!」
オーディンの放った黒球から真っ黒な炎の爆発が起きる。
「うわ。あれスヴェルじゃ無理だね」
「……天空と雷の神よ。雲より全てを防ぐ楯を我に!アイギス!」
オーディンの詠唱に合わせて、フェンリルが新たな楯を作り爆発を防ぐ。
「楽しいな! お前らと本気でやり合う日が来るとは思わなかったからな!」
「まったく貴方は……それでルシファーとフェンリル。貴方達はこの世界を滅びるのを受け入れるのですか?」
「……我は神の守護獣。我は神の意思を受け入れるだけだ」
「お前はあいかわらず硬いな。お前の頭の中はいったい何で出来てるんだ? 神の意思を受け入れるだって? お前本当にそんなものがあると思っているのか? 神の意思とは、己の意思だろうがよ!」
「まったくオーディンの言う通りだね。フェンリル、君はもっと自分に素直になるべきだよ」
「おいおい、サタンお前はどっちの味方なんだよ。お前はどうなんだ?世界が終わっていいのか?」
「世界が終わることなんてないよ。“世界”という言葉は、僕と君達では意味が違うからだけど」
「それでは、私達がいるこの世界が終わってもいいのかしら?」
「本当に終わるならね。それは子供達に託したんでしょ? 老人の僕達の答えなんていらないさ」
「なら、いま私達が戦っていることに意味なんてないのなら……子供達の答えを待ちましょうか?」
「僕はそれでもいいけどね。フェンリル、君はどうする?」
「我は……」
「けっ!神の守護獣なら、神に聞いてきたらどうだ?」
子供達の答えを待つ……規格外の力を見せ合い、この場での戦いは終わり。
後方のリンランディア達の支援に……アマテラスの意識が一瞬、目の前の敵からそれた。
「くすくす」
いつからそれは潜んでいたのか。
アマテラスの影から、一振りの剣を持つロキが現れた。
ロキの持つ剣「レーヴァテイン」は、美しい天女の肌に届くかと思われた。
だが、その剣が貫いたのは、天女ではなく戦神だった。
「ぐっ……なに油断しているんだ……馬鹿やろう」
オーディンの腹を剣が貫通している。
影のロキは、アマテラスが一瞬で斬り捨てたが……。
「オ、オーディン!」
「くるぞ!」
「東より龍よ、西より虎よ、南より鳥よ、北より亀よ!」
ルシファーの詠唱により、広場の東西南北を守る守護獣が召喚される。
4匹は共鳴し、その力がアマテラスを襲う。
「フェンリル、オーディンを任せたよ」
ルシファーは黄金の剣を抜き、アマテラスに斬りかかる。
フェンリルは迷いの中にいたが、オーディンを倒すことに迷いはない。
腹を剣で突きぬかれたオーディンに向かって襲いかかる。
「チッ……まずいな……」
この状況で、フェンリルを抑えることは難しい。
かといって、自分が倒されたら、アマテラスは1対2の状況に。
オーディンは迷いなく動き出した。
「決着といこうか、フェンリル」
「その身体で何を言うか!」
フェンリルは目と鼻から炎を噴く。
そして、開けば天にも届きそうな巨大な口で、オーディンを飲み込もうとする。
フェンリルから、それは見えていなかった。
傷ついたオーディンから放たれる力は全て見えていると思った。
オーディンを飲み込もうとした時、それは、オーディンの背中から自らの心臓を貫きやってきた。
黄金の雷龍を纏ったグングニル
「ばーか。俺の勝ちだ」
「終わったようだね」
ルシファーが斬り合う剣を弾き、後方に距離を取った時。
アマテラスの目に映ったのは
己の心臓と共に、フェンリルをグングニルで貫いた
戦神オーディンの姿であった。




