表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伝説の木の棒 後編  作者: 木の棒
第5章 世界樹
45/56

第44話 戦神と堕天使

 オーディン


 彼は“一の時”より神に創られた。

 神より“好きに戦え”と意思を受け、彼は好きに戦い、好きに生きた。


 傍若無人で好き勝手に生きた彼ではあったが、誰よりも命の尊さを感じていたのも、また彼であった。


 アルフによって地下世界に堕とされた悪魔の王達と戦うために、彼は何度も地下世界に行った。

 愛馬スレイプニールに跨り、黄金の鎧を身につけ、グングニルを振り回し、雷のように駆け抜ける。

 彼は戦神と呼ばれた。

 その他にも彼は多くの呼び名を持つことになる。


 彼は決して己より弱い者と進んで戦おうとはしなかった。

 もちろん、気に入らなければ問答無用で倒したが。


 彼にとって大罪により地上世界で暮らす人間とは、か弱い生き物であり、特に興味を引くこともなかった。


 そんな人間のことを常に想っていた彼女のことを、彼は不思議に感じていた。


 なんでこんなか弱い人間のために、己の時間を費やしているんだ?


 彼女は同じ一の時より生きる者達の中で、最も美しく、最も清らかで、最も強がりな存在に見えた。

 氷で出来た美しい彫刻。

 どこかが崩れたら、一瞬で全てが崩れそうな、そんな存在に見えた。



 彼女は鍛え上げた己の力を人間のために使った。

 そして眠りについた。


 彼は彼女を守り続けた。


 彼女が眠る間、アルフの差金か……それともサタンの遊びか、彼女を狙いやってくる者達がいた。


 オーディンは彼女を守り通した。

 そして眠りから覚めた彼女は、眠っていた間、自分を守り続けてくれた彼の存在を感じ知っていた。


 2人は愛を深めていった。



 しばらく幸せな生活を送る2人であったが、神酒をオーディンが盗み飲んだことをアルフが罪とした。

 今までもさんざん盗み飲んできたし、アルフもそれを知っていたのに。

 何を今さら。


 彼にとってはどうでもいいことだった。


 彼女と天界で会えなくなっても、地下世界に彼女が来てくれれば会える。

 特に問題は何もなかった。


 だが、罪人とされたオーディンの前に、神の守護獣フェンリルが現れた。

 そして有無を言わさず、オーディンに襲いかかった。


 オーディンにとっては、これがフェンリルの意思なのか、アルフの意思なのか、神の意思なのか……どれでもよかった。


 楽しい戦いが出来れば彼は満足だから。


 壮絶な戦いは1日中続いた。

 オーディンは片目を裂かれ、フェンリルは足の指を何本か斬り落とされた。


 彼女が戦いに介入してフェンリルを退け、オーディンと共に地下世界に逃げた。



 その後、彼女との間に愛娘を授かるものの、女癖がよくなかった彼は彼女に振られることになるのだが……。


 彼女に振られた以後、彼が他の女にいつもの調子で仲良くしても、一切手を出していないことを彼女は知っているが、素直でない彼を許すきっかけを得られずにいるのだが……。








 ルシファー

 またの名をサタン



 かつて天界でアルフの上に位置した存在であった。

 世界を調整するアルフですら、彼に命令することは許されていなかった。


 だがある日、彼はその地位を捨てた。


 その時から彼は、自分の思うがまま、好きに遊ぶために生きていった。


 彼にとっては最初から全てが遊びだった。

 遊びだったが、全てが彼にとって命そのものだった。



 神の理解者



 アルフは友人をこう表現したことがあった。


 アルフも本当のところは分からないが、彼は神と話すことが出来る唯一の存在だとか。

 それが真実なのか、彼はいつもふざけて答えるのでアルフも分からないのだ。


 だがアルフは、彼は本当に神と話すことが出来ると思っている。


 10年前、一の時より1度たりとも応えなかった神が、“何かした”と感じた。


 アルフは神にそれを問うたが、神は何も答えない。

 代わりにルシファーが姿を見せた。


 ルシファーはアルフに言った。


 神もちょっと遊びたかっただけだよ



 アルフは友人を初めて疑った。

 神ではなく、君が何かしたのではないかと。


 ルシファーは答える。

 仮に僕がしたことでも、それは神がしたことだよ。


 アルフは己の計画に支障が無ければどのようなことでも構わなかった。

 友人である彼には、そのことを伝えていたのだ。


 彼は何も問題ないよとアルフに伝えた。



 そして再び神は動いた。

 神は彼にお願いをした。

 彼はその願いを受け、地下世界の聖樹王の木の棒に10年前と同じ意思を宿した。



 彼は、アルフに地下世界の木の棒のことを話した。

 神が所望した木の棒だと。

 ちょっとした手違いで、いまその木の棒はオーディンの娘が持っていると。


 アルフはそれがルシファーの遊びの結果だろうとすぐに分かった。

 既に世界は終わりに近づいている。

 今さら、その木の棒が自分の終わりを妨げるとは思えなかった。


 神が所望したのであれば、神の前に持ってくるべきだろう。

 それが自分を創った神のためにするべきことだと思った。



 ルシファーがオーディンの娘と木の棒を、地下世界の聖樹王の根の中に連れ込むので、天界にその意思を引っ張ることにした。


 天界にある真っ白な神樹の木の棒を作り、器として用意した。




 ルシファーは神の理解者である。


 神の理解者とは、己を理解することである。


 そして己を受け入れることである。


 己を受け入れれば、他人に優しく出来る。


 己を受け入れれば、他人に気を使うこともなくなる。


 己を受け入れれば、他人の存在を消すことが出来る。


 己を受け入れれば、世界は自分のものである。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ