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伝説の木の棒 後編  作者: 木の棒
第5章 世界樹
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第42話 アルフ王

 神の神殿


 数日前より、地下世界の悪魔達が天界へとやってきた。

 ただの悪魔ではない。

 悪魔の王達である。


 その報告を聞いたアルフ王は、顔色1つ変えず、天界を守る兵を向かわせた。

 天界に住む非戦闘民達をすぐに緊急避難させる。


 この世界が始まって以来、天界で直接の戦闘が行われるのは初めてである。

 そんな事態であっても、アルフ王に動揺は見られない。


 彼は神より創られし“一の時”より生きる者。

 創られた時から、彼は世界を調整することを神の意思として受けて生きた。


 彼は天界に妖精と人間を住ませた。

 妖精は同じく一の時より創られし者達以外は、全てアルフ王によって作られた。

 だが、人間は違った。


 アルフ王は人間がこの地にいることを知った時、戸惑いを覚えた。

 自分はこんな存在を作ってはいない。


 神より創られし一の時から生きる者でもない。

 人間とはいったいどこからやってきたのだ?


 だが、人間は存在し、それは世界の一部として生きていた。

 世界を調整する彼にとって、人間も自分が管理し調整する者達と判断した。


 神は悪魔も創られた。

 その者達は、地下世界へと堕とした。

 その姿、暴力、思想は世界を調整する上で不要だと判断したからだ。


 彼にはその力があった。

 世界を調整する自分は、まさに神の代行者である。

 彼はこの意思を自分に授けてくれた神に感謝した。


 だが、次第に彼は崩れていった。


 どんなに世界を調整しようとも、人間達も、自分が作った妖精達ですらも、自分の理想とする世界にはならなかった。


 彼と同じく一の時より生きる者達にいたっては、彼の言葉をまったく無視する者さえいた。


 彼は悩んだ。

 世界を調整するという神の意思を授かった自分は、力不足なのだろうか?

 自分ではダメなのか……もっと相応しい者がいるのではないか。


 彼は唯一、神との謁見が許された者だ。

 彼は神に問うた。


 私は世界を調整する者として相応しいのかと。


 神は何も答えない。



 彼は数百年、数千年の時の中で、繰り返される生命の営みを見て調整していった。

 自分の導きがなければ、生命は、世界は生きられないと信じていた。


 だが、ある日、彼の友人の一言で全てが壊れ始めた。



「君が世界を調整しなかったとして、何か不都合が生じるのかい?」



 彼は友人の言葉を聞いて、100年ほど世界の調整をやめた。

 そして見てしまった。


 世界は彼の調整無しでも生き続けた。

 悲しさ、不安、絶望、恐怖、憎悪といった感情は、彼が世界を調整していた頃よりも増えた。

 増えたが、世界は生き続けた。


 彼はさらに壊れていった。


 彼は再び神に問うた。


 世界を調整するとは?

 世界とは?

 生命とは?


 神は何も答えない。



 彼は気付いた。

 自分は世界を調整している。

 だが、その自分もまた世界に生きる存在の1つに過ぎない。


 自分がいなければ、世界は歯車の1つを失うが、それで世界が壊れるわけではない。

 世界は生き続ける。


 彼は世界の調整を再開した。

 再開したが、彼は壊れていた。


 いや……彼は壊れていたのか?

 彼も世界に存在する1つの生命とすれば、彼が行うこともまた世界の1つである。


 彼は世界が終わりを迎えるように調整を始めた。

 そんな彼を見て友人は言った。


「今夜、神の庭園に誰か入っていくかもしれないな~……何かを食べにくるんじゃないかな~」


 彼は友人の言葉を聞いても、何も動かなかった。

 彼は“人間”の存在が一番不安だった。

 人間に祝福が与えられていることが、最も彼の中で不安定要素だったのだ。


 その日のよる、蛇の導きによって1組の男女が神の庭園に足を踏み入れる。

 そして、知恵の果実を女性が食べてしまう。

 女性はその知恵の果実を男性にも食べさせた。


 翌日、人間は大罪により天界への道を閉ざされ、聖樹王の祝福を受けられなくなった。



 彼は世界が終わることで、自らに寿命を作った。

 人間達や、作られた妖精達には寿命がある。

 その寿命が終わる時、彼らは世界から解放される。


 自分も解放されよう。

 彼はそう思った。


 この世界を支えているのは、聖樹王。

 そしてバハムート。


 どちらも神より創られしもの。


 どのような神の意思を受けているのか不明だが、世界を調整する自分の力を使えば、聖樹王とバハムートの“命”を減らしていくことは、少しずつ出来た。


 彼はその命を自らの寿命と定め、世界を終わらせることにした。



 聖樹王とバハムートの命を減らし始めてから、神が揺らぎ始めた。

 神と繋がる一の時より生きる者達には、それが分かった。


 アルフ王に、神の揺らぎに対する問い合わせをする者達は多かった。

 その中には、アマテラスの姿もあった。


 だが、アルフ王は神に問題は何もないとした。

 最も、神と謁見することを許されているのはアルフ王だけである。

 何を言おうとも、アルフ王からそう言われれば、誰も何も言えないのだ。



 神の揺らぎに最も懸念を示したのはアマテラスであった。

 アルフ王から、自分の妻となれば神への謁見を許してやってもいいと言われたが、アルフ王のことがあまり好きでなかったアマテラスは断った。

 そもそも、彼の妻になったからといって、神との謁見が許されるとは思わなかった。

 それは彼が決めることではないのだから。



 彼女は己の力を高めることに時間を費やし、46年前に信じられないことをやってのけた。


 異なる世界からの魂の召喚


 アルフ王もそれが不可能だとは思っていない。

 自分も力を使えば可能だろう。


 だが代償があまりに大きすぎる。

 それほどの力を使えば、少なく考えても10年以上は力を失うだろう。


 事実、彼女はその後20年近く力を失い眠りについた。

 その間、1人の男性が彼女を守り続けたことも、アルフ王にとっては意外な行動ではあったが。



 彼女がなぜ人間に、そこまで力を貸すのか理解出来なかった。

 だが、理解する必要もなかった。


 世界は終わりに向かっている。

 それを止めることは出来ないだろう。



 世界が終わりを迎えた時……新しい何かが始まるのか。

 それは彼にも分からない。

 分かる必要はない。


 彼は自らの解放に向かって進んでいくだけ。


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