第39話 新旧対決?
拠点から少し離れた平地に、マリアの結界が張られた。
その中には、アーシュ、ベニ、ラミアとラインハルト、ニニ、マリアの6人、そしてアマテラスが入っている。
本気で大怪我をしては困るので、お互いの力を見ることを目的に試合は行われた。
万が一の場合には、アマテラスが介入することになっている。
「それでは、お互い大怪我がないようにね。始め!」
結界の外からは多くの見物人がこの試合を見ている。
当然、女王ティアも。
「こちらから仕掛けるぞ」
ラインハルトの言葉と共に動くニニとマリア。
聖属性を身に纏い、アーシュ達に突っ込むラインハルト。
そのまま、炎の玉をアーシュ達に降らす。
その炎の玉を何でもないかのように、ラミアの水が弾く。
ラミアの水は炎で蒸発するどころか、炎を包み込み、軌道を反らしていった。
突っ込んでくるラインハルトを迎え撃ったのはアーシュ。
マサムネとエクスカリバーが撃ち合い響き合う。
「はぁぁぁぁ!!」
アーシュと撃ち合うラインハルトを、ベニが横から殴り飛ばそうとした時、ベニそしてアーシュの足元が一瞬で凍る。
ニニの氷魔法だ。
一瞬動きが止まったアーシュをラインハルトが斬りかかるが、雷となったアーシュは一瞬で氷から抜け出し距離を取る。
ベニも氷から一瞬で抜け出すと、目標をニニに切り替えて突っ込む。
そこにマリアの振動がベニを襲う。
ベニは自分が何をされたのか分からないまま、方向感覚を失いかける。
「くっ!」
鬼神となり、マリアから距離を取るベニ。
ラミアが、マリア達の間に小さな水の玉を大量に発生させる。
すると、その小さな水の玉が揺れ動きながら、その揺れがベニに向かっているのが分かる。
「その揺れは危険だわ!」
「水で振動を見ているのね……」
電光石火のアーシュとラインハルトが斬り合う。
ベニとラミアのどちらかの意識がラインハルトに向けば、ニニかマリアの魔法が飛んでくる。
ラミアは白蛇となり、大量の水をニニとマリアに向かって放つ。
その瞬間ベニはラインハルトに向かう。
大量の水が押しよせる……だがその水がニニ達に届くことはない。
ニニがその水を全て凍らせると、逆にその氷から氷竜を作りだす。
「あらあら~困りましたわ~」
ベニが向かい2対1状態で、体勢を崩しかけていたラインハルトであったが、飛んできた氷竜がベニを襲う。
「この~~~!!!」
氷竜によって弾かれたベニは、そのまま氷竜に発勁をぶち込み粉砕する。
白蛇のラミアがニニとマリアに襲いかかる。
水蛇達を飛ばし、自らは水の鞭でマリアを狙う。
だが次の瞬間、全ての水蛇は蒸発し、ラミアの自動水防御が発生する。
マリアから放れた超魔法「メギドの火」
10年前に賢老会が使った偽のメギドの火ではなく、本物のメギドの火である。
本気ではないが、ラミアの防御を突破するだけの威力を見せる。
「なんて威力なの!!!」
アーシュ達も驚きを隠せないが、アマテラスも同じく驚く。
(これが超魔法……禁断の果実を食べた人の力。サタンやアルフが神を真似て作ったものとは違う……神のみが持っていた本当の禁断の果実の力なのね)
アーシュは電光石火の色を紫電から白銀に変える。
さらに速くなったアーシュはラインハルトを押しきろうとするが……
「おおおお!!!!」
この聖属性を身に纏う勇者を押しきれない。
そもそも、このまま打ち合っても負けるのは自分である。
ルシラがいてくれたら……。
また彼女の弱い部分が出てしまう。
その瞬間をラインハルトが逃さなかった。
「くっ!!」
ラインハルトの一撃がアーシュに入る。
一撃が入るタイミングになった瞬間、ラインハルトは剣の速度を緩めていたし、アマテラスも剣が当たる個所に軽い結界を張っていたので、アーシュは吹き飛ばされただけで済んだ。
その瞬間、ベニとラミア、そしてニニとマリアも動きを止める。
ラインハルト達の勝ちだと分かったから。
アーシュは地に倒れて空を見ながら、自分の弱さを嘆いた。
自分はどうしてもルシラに頼ってしまう。
ルシラの本当の持ち主となるために、強くなろうと誓ったはずなのに。
こんなことでは、天界にいってルシラのもとまで辿り着けても、彼を取り返すことなんて出来ないかもしれない。
私達が目指す先にいるのは、アルフ王であり、神であるのだから。
お母様達や地上世界の人々は、崩れゆく聖樹王の崩壊を止めるために天界に行こうとしている。
天界に行ってアルフ王や神に会えたとしても、聖樹王の崩壊を止めることが出来るのかどうか分からない。
例え待っているのが滅びであったとしても、自分達の生きる意思を示すために天界に行くだろう。
でも自分は……世界は救われて欲しいと思っているけど、救われた世界にルシラがいないのなら、私にとっての世界は終わってしまう。
ルシラと一緒に生きていきたい。
彼に甘えたい。
彼に頼りたい。
彼に寄り添っていきたい。
強い自分なんかいらない。
彼が側にいてくれるなら。
彼が自分を守ってくれるから。
全部自分の勝手な我儘だって分かっている。
分かっているけど、そう思ってしまう自分を否定することも出来ない。
2度とルシラが傷つかないために、ルシラを持たなくても強い自分であろうとした。
でもそれはどこかルシラを否定するような気もして、本当はちょっと嫌だった。
ベニとラミアが側にきても空を見つめているアーシュ。
アーシュが自分から起きるまで、彼女の側に座る2人であった。
「素晴らしい戦いだったわ」
「ありがとうございます。アーシュ様は大丈夫でしょうか?」
「ええ、娘は大丈夫よ。ちょっと考え事をしているだけだから。それにしてもマリアの超魔法は想像以上ね。それにニニも。リンランディアもこんなに立派に成長した娘に会えて嬉しかったでしょうね」
「ありがとうございます。みんなに支えられて、そして父がいつも守っていてくれたからここまで来れたんだと思います」
ニニは大事そうに短剣を両手で握りしめる。
「みんな本当に頼もしいわ。神の意思は……私達の意思は立派に受け継がれているのね」
アマテラスの目から涙が零れ落ちそうになる。
(神よ……貴方が創りしこの世界、そして生きる生命はこんなにも素晴らしく輝いております。貴方と繋がる私達、“一の時”から生きる者だけが分かる貴方の揺らぎ。いま何をお考えなのですか。この世界が終わることを、本当に望まれているのですか)
涙が零れるのを我慢するかのように、天を見上げるアマテラスの問いに、神は何も答えない。




