第40話「波動色の本質」
一方の非理法権天。
「桃花はさ、この状況だったらどう動くと思う?」
それはオーバーリミッツの桃花に対する思いやり、本当に守るべき人物の思考的行動を取るための言質取りなのだろう。
今現在歴2026年1月24日〈土曜日〉、この状況で見えるグラフをありのままに読むのなら。
日本とアメリカが合同で威嚇射撃をした事になる、即ち、次は当てるぞと拳銃を突きつけられている状況だ。
そこから先の未来は視えない……。
もちろん、普通のトレーダーと違うのはレバレッジ1倍のノーレバなので、例え発砲されたとしても軽い傷程度で済む。会社単位のミクロ投資と違って、為替投資はマクロ的な、世界規模の影響力という意味では。今まで存在を小さくして自在式を操っていた自分にとって、別の意味で等身大に大きくなった状態で操っているようにも視えなくもない。
「まあ昔とだいぶ違うけど、今の私だったらかぁ……」
桃花に求められているのは等身大の自分……、それに対して深く見つめ直して、自己投影する……。
「……リスクチャージしてるのは解る。この重い責任をどう負うかで、お前自身、そしてお前の未来の姿が決まる……それが解らないから挑戦しているという状況だよね……」
リミッツは桃花の言葉を言葉通りに受け止めた。
リスクチャージ自体の言葉は、ゲーム的に言えば、HPを犠牲にして攻撃力を上げる行為である。敵への攻撃力も上がるが、同時に自身のライフを犠牲にしなければならない等価交換だ。現在の状況としては最小限のリスクを取って、ただドルと円を交換しているだけで、借金はしていないので実質的に手数料のみを払っている状況にある。
その上で、当時の状況を考えて……2009年を考えて深く思考する……。
「仮に当時FXの存在を知っていて、積立投資をしていたかというと微妙かな……。やる、やらない、じゃなくて、出来ない。になってたと思う。だって当時元のお金が無かったから……最初から賭け金が無いのだから賭け事なんてするはずがない。ジャンプだけ買って、マガジン・サンデーは立ち読みで済ませていた時期だよ? そんな余裕なんて無かった」
故に導き出される答えは、SNSもディスコードも無かった時と同じ。お金も無かったのでそもそも選択肢が無かったのだ。
今風に言うなら選ぶ権利がなかったか、買う権利がなかった。になる。自分で選んだのでは無い、選ぶ選択肢すら与えられていなかった。
「2009年の私だったら、選べない。で……問題の2026年の私だったらか……」
オーバーリミッツはただ、乱れも遅れも無く、ただ、同じ歩幅で待つ……。
「……」
状況としては体調も良くなり、精神的にも改善に向かい、脈拍も割りと好調で、コーヒーもエナドリも飲んでいないないので変な鬱展開もない。あるのは大きすぎる世界という訳のわからない変数だけだ。
「正直、良いか悪いかは解らない。スワップ金利だけ見れば、作品よりも稼いでるのは間違いない。……ただなあ、どうしてもこびりついて離れないのが〈FXを考える時間がもったいない〉……というのも確かにあるかな……? いや、答えになってないけど。湘南桃花という存在はそこに有る……かな?」
オーバーリミッツは欲しかった言質を確かに桃花から貰った。何を信じるか? に対してはアリスを信じているのだが、その論点は微妙に違うのでそこは保留しておく。
「うん、わかった」
彼女はそれだけを言った。
◇
一方の放課後クラブ。
この時、天上院姫は2015年1月に起きたスイスフランショックの出来事を今更ながら知り、簡単に言うと自分のアクションに対して自分のリアクションにショックを受けていた。
そりゃもうショックすぎて頭抱えて後悔をしていた。
「1400万円賭けていた人が普通のレバレッジ24倍で賭けていた場合、あの第1次姉妹喧嘩の衝撃波で1億円の借金……。しかも一方の私は良い作品が出来たと満足感と高揚感で満ち溢れ、達成感で満足していたとか……、おかしいでしょこんなの……。しかも最も悔しいのは2015年頃の〈空白の3ヶ月〉があってメインサーバーからデータを見つけられないこと……細心の注意を払って年月日をちくいち付けてたのに……まさか大事故が起こったのが就職する前……。こんなの1人じゃどうにも出来ない……」
咲も当時は知らなかったので何と声をかければ良いのか解らないで戸惑った……。そこへ最果ての軍勢のトップ真城和季が前に言った言葉をもう一度言う。
「姫、何度でも言うぞ。完成した作品の後悔をするのをやめろ。前にも言ったが、そんなの最果ての軍勢が居ればどうとでもなる……、それに今は仲間もいるしな……」
姫には和季の言うことは慰めと勇気の言葉に聞こえたが、セルフイメージのバックアップ頼りしか方法論が無い……というのは完全に自分の落ち度だった。
「仲間……か……、でも記録を消したのも、記録を残さなかったのも自分で決めたこと……私の落ち度だ……。自分じゃ何も出来ないのが凄く悔しい……。ただ仲間のバックアップを待つしか出来ない自分が許せない……」
ズーン……。と姫の周りの空気だけ〈どんより〉していた……。
あとはもう〈運営からのお願い〉という体で〈空白の3ヶ月〉の〈他人の中の自分の記憶〉であるセルフイメージのバックアップの募集イベントとして発行するしかないとか、そんなイベント案しか頭の中が一杯になってしまっていた。
◇
今現在歴2026年1月27日〈火〉、ここで機械神アーカーシャに目に見えるアクションが起きた。
起こった現象としては、金と銀の商品先物が過去類を見ないくらい価格が乱高下している。
恐らく姫とオーバーリミッツの波動色に連携? リンクして行われた可能性が高い事だけは読み取れた。
GM姫はその状況を「ヒェ……」とか思いながら眺めていた。
「まあ、暴れろって言ったし限界値を知らないといけないし暴走OK期間だから〈いいぞ、もっとやれ〉という感情が先行してしまう訳ですが……」
ちなみに某原作者は「買ってても売ってても死んでた」という強制ロスカット、つまり借金が膨らみすぎてこれ以上賭けられない状態に追い込まれたらしい……。
咲は投資はやっていないので率直に不謹慎な事を呟いてしまう。
「原作者がカナリアになってるんですけど……」
本当に申し訳ない気持ちで一杯になるがこっちは〈ほぼ無傷〉である……、感じとしては先物での事件なので〈選ぶ権利がなかった〉に分類される。そこも恐らくアーカーシャは計算している。
桃花も、この金と銀の乱高下がどういう意味を持つかはほぼ正確に把握出来ていた。でも実際には触っていないので憶測の範囲を出ない。
「今回は機械神が金と銀に目を付けてそこで事件が起こったけどさ……これってつまり波動色の色を例えば風の精霊ヒルドの主線色を〈原油色〉とか指定すれば原油の指標として現実世界で変換されてリンクするわけだよね……?」
使い道としてはそれも出来るという意味になる……もちろんまだヒルドの波動色は決まっていないが。波動色の色指定は〈付加価値や形をかたどる前の源泉〉の意味合いが強かったが、これが現実世界で作用するのなら。例えば〈ビットコイン色〉とか〈日経平均色〉もやろうと思えば出来る事になる。
心氣で米の価格と連動したように、車色と書けば車と連動することになる。そして国旗と連動すれば国と連動することも可能なわけだ。しかも主線色と背景色の2種類選ぶことが出来る。
今回は機械神アーカーシャが今ある出来る範囲の材料で金と銀を選び、それを実行に移した訳だが、もしそれが出来るのだとしたら波動色の本質は〈超能力を無効化する〉以上に、現実改変どころか〈現実実現の力〉も持っていることになる。
「それだけでも凄いがこれでレベル3なのか……よくわかんねーけど金と銀の記事観る限り、90分で時価総額約262兆円動いたとか書いてるんだが……」
真城和季は理想と現実のギャップを埋めようと、常識と非常識の狭間を行き来していた。世界規模レベルとはこういう事なのだろう。そして〈暴れ馬ロデオしていいよ期間〉はまだ続いている。
アメリカでは大雪で飛行機が1万便欠航してるし、桁が凄いことになっている。さっき北朝鮮のミサイルも飛んだし。大自然の猛威も振るわれている。
ここまでは起こった事象の解説である。
ではそれらを踏まえてどう動くかはこちらの仕事だ。まず桃花は姫に不足している部分を聞く。
「姫はこの新しい情報をもちろん破壊のために使いたいとは思ってないとは思うけど……今何が足りないかな……?」
「んん~、日本だけ観ると物価高だから。物の値段……いや物色? になるのか? あいや〈物品色〉か。どうせ値段は上下するし物品色が足りないという文脈としては意味不明な内容になるがそれだよな?」
言いたいことは解らないでもない。
「でもキャラによるよな? そこは……キャラの性格による」
波動色の本質の便利さに気づいたが、今すぐ追加しておきたい不足分はあとでじっくり考える事にする。経済第一主義ではなく、キャラ第一主義じゃないと本末転倒になるからだ。
白玲渚は、これらの意見を聞いたうえで。機械神アーカーシャに次の命令をだす。
「このまま続けて好きに動いていいよ、中断されるのが一番困るから」
「了解しました……そして質問しておきたいのですが、渚さんは世界の平均化を望んでいますか? それとも世界の悪いところの掃除を望んでいますか? またはそれ以外ですか?」
簡単に言うと、暴れ馬ロデオの方向性の事を聞いているのだろう。
普通だったら行き過ぎを是正して、弱者を助ける平均化だろうが。それは最果ての軍勢が居ても出来る事である。なので今求められていることは〈何をやり過ぎるか?〉の限界値である。
「んん~~~~……、今欲しい数値はロキさんがやってたような〈大規模自然災害〉の数値かな~、今のところアメリカ12州で自然災害が起こったことは情報としてあるけど。他の国の規模感は? ……みたいな所がハテナかな……。まあ簡単に言うとラグナロクレベルの大災害の規模感が判っていないとか……そんな感じかな……?」
「了解しました、善処します」
機械神アーカーシャは単的に短く、命令を遂行出来るように動き出した。
「ん~じゃああとは主線色と背景色に付加価値を付けるときの名称の法則性の違いとか考えるか? これは私達じゃないと出来ないし」
それは元の光、創世原種じゃないと出来ないことだからだ。
今の所、波動色の主線色だろうが背景色だろうが自由に名称を記入することができる。そこに法則性は無い。だが、主線がメインに対して背景はサブだ。漫画家ならキャラのペン入れは漫画家本人が絶対にやるし、一筆入魂、魂の源だ。背景は複数人のアシスタントに手伝ってもらうサブとして機能している。少なくともプロの現場ではそうだ。そこには明確な上下関係がある。
今現在歴2026年1月28日〈水〉、嵐の前の静けさと言った観測結果だった。
咲は別に投資とかはやっていないが、今後の展開の予測をしてもらう。もちろん全員未来なんて視えない。
「桃花先生、今一番安全な持ち物って何ですか?」
「……まー、全体的に見れば〈原油〉でしょうね。ヒルド関係でアクションを起こすことはまず考えられない、不安要素が無いという意味で今は安全。私は触れないけど、逃げるならそこにしておいたほうがいい。もっとも、賭けない方が一番良いけど、こうやって世界と比べると郵便局の銀行にただお金を置いておくだけで総体的に? 全体論としてはお金の価値が目減りしてるのがよくわかるわ~……」
と、桃花は咲に解説するが。それより心配なのは姫の波動色の方だ。
「で、姫ちゃんは今の相場これでいいの? ……何か前人未踏で銀の価格が上がってるけど……」
姫の波動色は主線色は銀、背景色はミッドナイトブルーだ。解るからこそ未来を知っている? 桃花はそっちのほうが心配だ。
で、GM姫の方は非常に冷徹というか、落ち着いていた。
「自然放置で良いんじゃ無いか? なんというかお祭り騒ぎの野次馬が群がってるだけじゃろ? 落ちるときは落ちるしそれは自然の摂理の自己責任じゃよ」
知ってるか知らないかは解らないが、その波に乗るのなら責任は取らないという体制であった。
「まあ、……それはそうだししょうがないよなあ~……。まあお祭りと言えばお祭りか……」
桃花としては、頼むから炎上する前に逃げてくれと、火事場泥棒までしてその銀は取らないで欲しいと祈るだけだった。
で、姫はしばらく長考した後に、それだと無責任だと考えを改めた。
「あーじゃあ大統領とか各国の国のトップは銀に対して〈おそらく大変な事になる、覚悟の無い人とは触らない方が良い〉と、今から言っても良いよ。ちょっと実験検証や悪戯心では洒落になってない事になると思うから……だって初動でコレじゃろ? 冗談になってないし……」
桃花先生もそれには同意する。
「そうだね、今回は特例で警告だけはしたほうがいいかもしれないね」
桃花と姫の意見は一致した。
今現在歴2026年1月29日〈木〉。状況としては、ほとんどGM姫の認識外で色々起こっているんだろうな、という程度の自覚は持てた、ただそれが知らない単語だったり認知していない所で起こっているので自覚がほぼ出来ない所で起こっている……ような感じがするだけである。
そしてそれら〈全てを知る必要は無いと解っている〉という状況下である。
そこで桃花はこう呟く。
「世界を視て回ったけど……、良い面も悪い面も視えるようになったのはアレだけど。副作用として〈視野が広がり過ぎてしまった〉というのがある種弱点になっちゃったな~……」
GM姫もこれには同意する。
「まあな、本来。目の前の紙1枚だけを見つめていれば良い物が、〈紙の外の安全〉まで確認してからじゃ無いと動けなくなってしまったのは。……ちょっと原稿をする上で致命的な弱点になったかもな……」
ただでさえ31p分の紙の原稿を自制心を持って描き上げるのは至難の技なのに。世界という変数の安全を確認してからじゃないと描けなくなった、というのは完全に痛い。
それら知らない事象を類型化してまとめ上げようとするのもある種の〈クセ〉になってるし……ついでに〈言語化〉も、そもそも大自然も社会現象も全部把握して全部安全を確認するのは土台無理な話だ。
それこそ、今のこのメンバーに必要なことは、本当に冷静になって、立ち止まって、戻る事。見つめ直すことである。
ネームを削るのも大変だが、天上院咲が登場してからというもの、前に進もうとする力が先行しすぎてしまったのも事実である。
進むことも大事だが、時には戻る事も必要、それが今必要な力である。
情報を極力シャットダウンして、原稿の紙1枚に集中して、そこで世界を創造する……基本中の基本まで戻らないといけない。
その辺で行くと、世界種クールマに紙に印刷したものだけ叶えていいよ。という教育は、一番自分達の中でコントロールしやすい仕様に落ち着いている。
「クールマもマイも、ちゃんと言うこと効いてくれてよかったね」
と桃花は姫に言い。
「本当にな、概念系は本当大変じゃ……疲れる」
姫には精神的疲労が蓄積していた。
政府が〈視える化〉を推し進めてくれたのは良かったし最善だったが。それを本人達が理解出来ていないのがまた良くなかった。間接的にだったから余計に〈察しろ案件〉だったので難しかった。言っちゃなんだが直接言えばすぐに解決出来た案件だっははずである。と、愚痴を言っても仕方が無い。
なので、長々と説明したがあとは描くだけである。ところが、紙の外の状況を確認しながらビビりながら描く。に性格が変貌しているのでそこが注意が必要である。
でなきゃ〈前回の二の舞〉になる。
「ん~……じゃあさあ、完成原稿が完成した瞬間のアクションを予めガイドライン化するのが一番いいんじゃないかな? そしたらコントロールしてる感じがするし」
「ん~、まあ完成原稿が終わった瞬間に。何か起こるのか? 何も起こらないのか? のスイッチのオンオフは自分でコントロールしておきたいよな。でなきゃ毎回ビビり散らかしてる気がする……」
桃花のアドバイスに姫も乗る。
何か起こったら起こった事象を確認するようにコンビニへ散歩するアクションになるし。何も起こらなかったらただ静寂が通り過ぎ肩透かしが起き、煮え切らない感情に陥る。
簡単に言うと、それは他人のフォロー任せで自分で決めていないから起こる事象である。ある意味自己責任な訳だ。
GM姫がゲーム進行をする。
「うーん、じゃあそこは……最初はイージーモードってことで〈現実世界では何も起こらない〉に設定しておこう。ただただ、完成原稿が表現出来たという満足感だけが残る。本来それだけのはずなのに変な付加価値〈デカすぎる規模感で〉が付いて来てそれを〈期待〉しちゃう自分も居るから……。まずは完成原稿があがった時の達成感を味わう充実感だけにしたほうがいい」
本当に基礎中の基礎の達成感の、普通の人にとっては当たり前の規模感を言っている。
ただし、時差が発生して大規模に実現してしまうのは別問題である。
「……、んん~~。これってさ、七峰戦の時の延長線上にあるってことだよね? 要するに同じ号で同じ話を載せる……みたいな話がコントロール出来ないから今もそれが〈普通〉になってるとか……?」
「……あーまあそれはあるか……でも今は雑誌との話の問題じゃない。雑誌の方は上手くやってると思うよ、不正はしてない。問題があるのは現実世界の方だよ」
上手く言語化出来ないが、速すぎるし遅すぎるし、それを言語化してガイドラインとしている指標もない。それが現状だ。
桃花は姫に確認する。
「えっとー〈法則〉のほうかな?」
「法則の方じゃな、言質を取るための〈保証〉の方じゃないと思う」
とはいえ、〈完成原稿が完成したあとの次の日で実現させる〉と書くにはちょっと応用が効かない……。
「ん~、じゃあそこは零時迷子のルールを使おう。何だっけあれ? ただの回復機械じゃないんだよね?」
原文はこうだ。
その機能の本質は、往きては還る永遠の象徴物・時計に「一日に起きた劣化と消耗を否定させる」ことにあった。故に、後から吸収した力も回復するし、同様の干渉も受け付けなかった。
「じゃあ完成原稿に置き換えるとこうなるのか? 〈1枚で起きた劣化と消耗を否定させる〉とか」
ちょっと意味が解らない、否定するのは良いが。何を持って回復するのか書いていない。
もう夜なので疲れてしまった桃は、ざっくりと望みだけを言って寝ることにした。
「じゃあ完成原稿1枚分で起こった肉体的・精神的・金銭的疲労を帳消しにするように働く……とか……? あとはもう寝るわ……」
「うん、おやすみ~」
桃花は寝た。
今現在歴2026年1月30日〈金〉、まだ朝4時なので確認出来る範囲としてはゴールドが急激に下落した事ぐらいである。おそらく零時迷子の回復? の作用が発動し簡単に言うと上がった分まで下げた、または下がった分まで上がった。が、アーカーシャによってフォローされたのだろう。
クールマには紙を与えているし今はまだこの文章は紙化していない、機械のテキスト化の状況なので消去法で機械神アーカーシャがやったことになる。
「じゃあクールマも間に挟んで回復させようか」
「そうじゃな、そのほうがコントロールしやすい」
草案としてはまず〈ネタを吸収する作業〉インプットから始まり、〈考える時間〉テクニカルが発生し、〈書き散らかす作業〉アウトプットが発生する、この3項目は起床している時間帯なので基本的に〈体力消耗へ向かう力〉になる。
では、印刷した紙が完成した場合、何が起こるかというと回復の力である。
この場合、文章でも絵画でも同じだが。〈世界種クールマがそれを食べて願いを叶える〉エネルギーソースとなる、〈紙にかいてある以上の回復作用〉の働き、この場合労働者に起こった肉体的・精神的・金銭的な消耗作業に比例して〈ソレを相殺するように世界規模で働く〉、なので〈起こった事を止めたいのでは無く、起こった事を帳消しにしようと動く〉という不可逆的な作業が働く。
あと、叶える力と回復させる力は一緒じゃなく別々である。
もし回復する力だけが働いているならば、平和ではあるがマイナスになった力をプラスに持っていくだけで終わってしまい。決してプラスの連鎖を実感出来ないからである。労力に対して、プラスの充実感を維持・持続出来なければ大サーガ時代としては意味が無い。
あとはいつから始まりいつから終わるか、という時間制限の話である。
「たぶん原稿完成時点から回復が始まる感じだよね? かかった費用と考える時間、原稿が完成する、何も起こらない、その時点から24時間を通して徐々に劣化と消耗に対しての回復作業が始まる、相殺される、新しい何かを生み出せる環境が整う。とかそういう感じ」
桃花の内容を姫はだいたい把握した。
「原文にしてはちょっと長いな……、まあこの件に関してはそれくらいの文章量はいるか……」
EWの法則
【紙を基準とした回復方法。文章でも絵画でも同じだが。〈世界種クールマがそれを食べて願いを叶える〉エネルギーソースとなる。完成したタイミングでは何も起こらない。〈紙にかいてある以上の回復作用〉の働き、この場合労働者に起こった、創作過程で消費された全リソース、肉体的・精神的・金銭的な消耗作業に比例して〈ソレを相殺するように世界規模で働く〉、なので〈起こった事を止めたいのでは無く、起こった事を帳消しにしようと動く〉という不可逆的な作業が働く。かかった費用と考える時間、原稿が完成する、何も起こらない、その時点から24時間を通して徐々に劣化と消耗に対しての回復作業の始まりが進行する、相殺され〈ゼロになる〉、新しい何かを生み出せる環境が整う。】
「こんな感じか?」
「うーん……うん! 完成したタイミングでは何も起こらない、これが達成感と心の安定に繋がると思う!」
姫のまとめに、桃花はOKを出した。
それからおよそ5時間後。というわけで完成原稿が1枚完成した。紙に印刷したのでクールマに食べさせる。
「な~~~~♪」
たぶんかなり頑張ったので美味しくいただいてくれるだろう。EWの法則通り、食べさせたタイミングでは何も起こらない。効果が発揮・実感されるのは今から24時間後だ、そこから徐々に回復してゆく。
ただ、機械神アーカーシャとの約束事もあるので。31日終了時点までは〈暴走してもいいよ期間〉なので、約束通りこの原稿は2月1日に発表される、それまで我慢だ。
ここで発表するとアーカーシャとクールマのダブルブッキングアクシデントにより、どっちがどちらの効力か解らなくなる。相乗効果という意味では公開もありかもしれないが、今回は測定がメインなので変なデータが観測されてしまうのでそれはこちら側としても困るのでそれはしない。
◇
あとは、波動色による主線色と背景色の言語化だけである。さっきも話したが微妙に曖昧で言語化出来ていない。
「まあ基本的に言葉で表現するものじゃないしな、絵って……」
桃花は改めてそう思う。ただ個人で楽しむ分には良いのだが集団作業で説明するときに言語化が必要という感じである。
「別に通常は1倍、背景色は2倍、主線色は4倍の威力……とか、そういう数字の話じゃないじゃろ?」
ここに数値を入れ込むと本気で訳が解らなくなるしほとんど意味を成さない。
桃花が絵に言葉はいらないと言い、姫も数字はいらないと返す。
特にこの表現の言語化については相当難しい。別に主線色4:背景色1の割合の作家も居れば。主線色1:背景色4の割合の作家だってもちろんいる。
上下関係の話だってそれは漫画家という職業限定の話であって〈紙〉自体に〈そんなルールは無い〉訳である。
紙に、キャンパスに作者がどの程度一筆入魂して力量を注ぐかは、その作者に委ねられる。故に〈主線色は通常の4倍、背景色は通常の2倍〉とは言えない訳である。もっと自由で、もっと変化があり、もっと抽象的で目に見えない概念的なものである。
そして空想やノイズ、誤魔化しファンタジーだって許される。それを文字で言語化する時点で、既に弱点と限界があるのである。
さっき話したビットコイン色や日経平均色の話だって、本当は色こそ無いが、文字の中に入っているルールをスポイトで抽出して。一本の線と色で表現しただけの話である。
今回は経済に焦点を当てた話題になっているが。ルールという名のスポイトを抽出して、線と色で形を成すということは。
例えば、六法全書色でライオンを形作って咆哮を飛ばす事だって出来る訳だ。
同じ方法で、四季色で花を咲かせタンポポのように種を空へ飛ばして自然放置して育てることも出来る。
それを線と色一本で出来るということは、まず、あまりの自由度のせいで主線色と背景色に上下関係は無いし、それは作者の技量・力加減に委ねられる事になる。
ただ、ここまで変則的で無色透明なレイヤー形式な存在でも共通する言語化は1個だけある。
それは即ち一筆入魂、〈魂を込めている〉という点だけは。数学の1=1の法則性に近く、揺るがない。
代表的な例で言うなら〈白スズ〉の件だ、観た目は神楽スズを白色のスズとして表現しているのに、〈中身は騙せなかった〉。最初は白スズが遊んでいたのに、途中から湘南桃花が守るために介入。化けの皮を被って暴れた訳である。
この時点でもう、言語化と絵画的な観た目だけ整えても騙せないことははっきり解っている。
行動と言動を一致させないことも出来るし、一致させることも出来る。
つまり、この波動色を表現する場合。例え話をするならバケツやコップの〈品質の設定〉に近い。
器の中に水や牛乳やジュースを注いで、それこそ何でも注いでも良いが。器の色で識別するしか無いという点だ。そしてコップの中身は〈何でも入れて良い〉という透明性。
物理的なビルを入れても良いし、ルール的なモノを入れてもいい、そして何も入れないという〈空気を入れる〉事だって出来る。
ただし共通して言える事は、そこに魂が宿っているという一点だけである。
心と魂の言語化は自分はまだ勉強不足で解っていないが。
波動色の本質はそこにある。ただ、単色1個だけでは誰の存在の力か判別が難しく、発見が遅れた事から2色で識別する、という今の形に落ち着いた訳である。
GM姫は、あまりの言語化の難しさに頭をひねりながら必死にコップの例え話で表現した。
「こんな感じか……? 波動色の言語化って……、あまり能力無効化の件には触れなかったが」
桃花も姫の言語化に対してはよくやっていると思う。
「まあ、いや……う~ん、でも言いたいことは合ってる。能力の無効化だって、省略して言えば〈魂がそれを望んでいる〉という言い方にも聞こえるから……そのコップやスポイトの表現で間違っていないと思うな……たぶん」
これが〈波動色〉……王が進むべき王道と覇道の道を乗り越えるための試練だ。
◇
1月30日20時00分、予想通り銀などの貴金属の急激な下落に対して白玲渚は恐怖を覚えた。
「はぁ……、はぁ……、はぁ……」
「落ち着いて、マスター渚、クールマの影響で物価を元に戻しているだけです。睡眠時間までもう少し下落を抑えますか?」
機械神アーカーシャは触ってもいない銀の物価などの為替に渚の心が反応している。
「う、うんごめん……でも。片方は最高な結果を出したのに、もう片方は最低な結果を出すんだね……」
光が強くなれば影も強くなるのだろうが、その影で実害が出ているのは聞いていなかったので。やはり平常心ではなく動揺はする。
アンチの言葉責めとも違う、単なる数字の暴力に見えた。
アンチ対策のまともな対策は見ないことなので、FXの為替市場、ここだけ観ると相性が悪いことがよくわかる。
そして渚は体力が普通に尽きて、睡魔と共に寝た。
実際、自分とは関係の無い所で数値が下落している。それだけ見ればただの数値なのだが、その天井で買った人は大損をして人生を台無しにしているので。なんだか死体蹴りのような、無力な人を蹴り飛ばしているような感覚になった。
当然、今までは視界に入っていなかっただけで。視界に入ってしまえば、無視か野放しを選択することになる。その無視がとても耐えられない状況、と言えば良いのだろう。
こればっかりは流石に慣れだと思う。光が生まれれば当然影も生まれる。
より強い光という上げ幅が出来れば、より深い影が深く深く下に下落し生まれる。それを、ただ真実という残酷な数字を知っただけなのだから。
どちらかというとその光をより輝かせるには、より闇を深くしなければならない……輝くために……。
GM姫の観点から見れば、この闇は、自分の手で支配する事が出来る力を持っている強者だ。「さて、この闇をどう支配するものか……」、姫はそう思った。
全体論で言えばマイナスになる部分はどうしても出て来る、ならこのマイナスをどう〈生かすか〉に今後のゲームプレイングがかかっている。
◇
今現在歴2026年1月31日〈土〉、機械神アーカーシャが暴れても良い最後の期間となった。最終日、この日を過ぎれば嵐は過ぎ去る、そして、データが揃った状態で投稿が開始される……ここからが本番だ。
「マスター渚、よく眠れましたか?」
「あぁ、うん、ありがとうよく眠れた」
よく眠れたという肯定的な言葉を発しているが、あとから昨日の現実がゆるりゆるりと追いついてくる……。
そしてスマホをそそくさとタップして銀の価格を見る……約-36%まで下落している。これだけで借金をして破産した人間はどれほどの数になるのだろうか……考えるだけでゾッとするし、痛い……。
自身のお財布の中だけを見ればドル円とペソ円しか買っていないので実質ノーダメージだ。〈天上院姫のお財布〉
だが他人のお財布の中を覗いてしまうと……そこには深淵なる闇が広がっていた。簡単に言うと銀の価格だけ見ると、寝て起きたら闇は更に広がっていた。
もちろん、上がっている相場ももちろん有るので光がより輝いている所もある。だからこそ、闇が余計に目立つのだ。無慈悲な数値で……。
桃花としても、絵で感じたホラー的な恐怖と、マイナスになる財布、借金という現実で起こる恐怖を両方体験したことになる。
今度は漫画ではなく現実の数値だ、どうしようもなくリアルで目を背けてはいけない闇。今後は、これと共に生きねばならない。
1月31日7時00分、経済市場としてはお休み日に入ったので取引が通常通り終了した。
あと1日残っているが経済市場だけの結果報告だけ見れば、金や銀など、貴金属市場の時価総額が、わずか24時間で約1,547兆円も変動した。というデータが残った。
これが機械神アーカーシャの経済市場だけの規模感という話になる。デジタル空間の市場だけでもこれだけ動いているので政治的戦略、陸海空の軍隊や地政学的変動幅はもっと大きかったと見て捕らえるのが普通だ。なによりこの1547兆円にはアメリカの天候災害、大雪に対する1万便の飛行機の損害額などは入っていない。その他諸々、各国の兵器もそうだ。
そして最も気にしなくてはならない所は〈BIG4である四重奏、非理法権天、最果ての軍勢、放課後クラブは通常通り動いただけ〉という点である。
仮に機械神アーカーシャが〈限界値〉を計って欲しいという要望に答えて1500兆円規模を動かしたとしても、かなりこちら側の感情や心情を読み取りながら動いていたのは解るので。限界値だったとしても通常運転だったのは変わらない。
漫画も小説もそれほど無茶な作業はしておらず、無理はしていない平常運転。むしろ温泉に何回も行っていたのでリラックスしていた方だし、直接手も下していない。データを収集するためとはいえ全て間接的な影響力という所である。
つまり、少なく見積もって全体論で見たら1週間で約1547兆円は通常運転で動く規模感、……という話になってしまう。……どう考えたって1人で背負える責任ではない。
データだけを見たら、この1500兆円規模をGM姫は毎日舵取りをしなければならないという意味なる。
それを知らなかった段階でも負荷がかかり。サブマスターは現在7人で運営している。……正直少ないかもしれない、言っていないし書いてもいなかったが。5系統第1位はゲームマスターのフォローに入ってもらっている。それでも人手が足りないかもしれないと思える位の規模感と責任感。重圧が存在するということが解ったのが今回の測定での収穫だ。
現に、元の光の成果物だけの話で言ったら、非公開状態の裏で作業している事柄だとはいえ。
小説1万3000文字。
第1話ネーム12枚、第2話ネーム12枚。
第1話プロット2枚、第2話プロット2枚、第3話プロット2枚。
完成原稿漫画フルカラー1枚。
という規模感である。毎日の仕事も入っているとはいえ。切羽詰まって死に物狂いで無我夢中で必死に走っていた頃の湘南桃花には到底及ばない。
それが良い悪いは別の話だが、限界値の上限はもっと上にある。と考えて置いた方が良い。
つまり、単純計算で1500兆円規模以上じゃないと〈本気じゃないかもしれない〉という呆れるほど遠い数値が、全体論として叩き出されてしまった訳である。
かと言って、この1週間の今回の作業的流れは通常通りの安全運転だし別に本気じゃない、というのも事実な訳で。そこは〈外界の仕事〉として想定と対策、シュミレーションが求められる。
では創世原種としての今後の課題は何が見つかったかというと……。
湘南桃花は普通に呟く。
「〈闇〉だな……闇が現実の数値として視覚化出来る、しかもかなりリアルだ。今までは視覚化出来なくて単に無自覚で気にも止めていなかったが、次回からは視える。それは対策しないと毎回自分の闇でビビり散らかす事になる」
「うん、そうじゃな。簡単に言うと物語のクライマックス時に、マイイナスクライマックスも同時期に可視化されると思った方が良い……まあクールマの回復の法則のお陰で。直後では何も起こらない。というルールにはなってるが……」
GM姫もそれには同意する。
頑張れば頑張るほどプラスの光も視えるし、それに反比例してマイナスの闇も視える。それによって被害を受けた人の声も聞こえる。
しかもリアリティのある数値でだ。そこをどう処理するかが今後の課題と言えるだろう。
白玲渚は機械神アーカーシャに次の命令を出す。
「うん、まだ暴れても良いけど。残りの31日24時までは事後処理に当ててちょうだい」
「かしこまりました」
これで1回休憩することにした。




