お名前に関して
ケン・ラッセルの映画『サロメ』は、上演禁止になったオスカー・ワイルドの戯曲『サロメ』を、ワイルドを励ます為に知り合いたちが上演して見せるという構造になっています。場所の提供をし、自らヘロデ王を演ずる娼館の主人は、「舞台装置の不足は君の想像力で補ってくれ。演技の拙さは我々の情熱で補おう」とか言って、『サロメ』のお芝居は始まります。幻想的で、猥雑で、ワイルドは楽しみます。シュトラウスじゃなくてグリーグのペール・ギュントが劇中流れ、七つのヴェールの踊りもそれで踊ってました。
サロメが踊りのご褒美に求めるのは洗礼者ヨハネの首。
“Give me head John of Baptist.”
強い語調でゆっくりと、何回も繰り返しますので、字幕が無くても解るし、英語が得意でなくても聞き取れます。ヘロデ王が願いを取り下げさせようと何回も説得し、その度に答えは決まって、“Give me head John of Baptist.”なので、聴覚の方でゲシュタルト崩壊起こしそうになります。
「ヨハネ」の英語読みというか英語表記がジョンなのは知識として知っているのですが、繰り返されていると、なんか安っぽくなってしまって、困っちゃった次第です。
人の名前で時代の類推ができるなんて研究があるらしいのですが、わたし、よく知りません。しかし、ジョン(John)はシェイクスピアの戯曲にもあるし、現代の有名人にも見掛けるしで、ヨーロッパ語圏ではお名前はどうなっているのかしらん、とふと思いました。
ビートルズにジョンがいて、ポールがいて、これはキリスト教の聖人に因むのがすぐに解ります。ジョージはイギリスの守護聖人聖ゲオルギオスの英語名から。リンゴ・スターことリチャード・スターキーのリチャードはイギリス中世に獅子心王なんて呼ばれる人がいて、シェイクスピアの戯曲にも二世とか三世がいるので、由緒あるんだなあなんて。
ヨーロッパも日本も、中華帝国みたいに皇帝や尊属の名前を命名に避ける慣習はないので、偉い人や先祖にあやかる名付けは珍しくないですね。でも古代や中世の人の名前をそのまま付けるのは、男性名はままあるようですが、女性名は日本には少ないように感じます。
ヨーロッパの名付けの特徴としてのキリスト教の聖人、先祖からという伝統があるよというのはよく聞きましたが、現在もそうなのかは調べていません。
学校で自分の名前がどうやって決められたか親に聞く課題、自分もあったし、子どもたちにもありました。色々悩んだし、画数を数えたなあと思い出します。
よそで聞いたり見たりした話で、女の子は結婚で姓が変わるから画数で凝らない、子沢山ゆえに生まれた順に○○男、〇〇子と名付けられた例があるのを知ると、ご本人が由来を知ったら落ち込みそうな気がしました。命名にもドラマがあります。
わたし、結婚後の姓名が「同姓同名注意」って医院(しかも一ヶ所じゃない)のカルテに朱書きされるくらいですが、愛着を持っています。諸手続きの書類などで署名する必要がある時、記名してフリガナの欄に読み仮名を記入しつつ、日本語ができる人でこの名前の読みを間違える奴ぁいねぇといつも胸中で毒づいてますけど。




