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異性が集団でいるところに一人は怖いよね

 最近、頭のネジが飛んでいるんです。

 昔の特撮、『秘密戦隊ゴレンジ〇ー』のモモレンジャ〇、男性ばかりの職場で苦労があったかと思います。スナックゴンの従業員こと秘密基地の通信員が女性で、隔絶された土地に配属されていた訳ではないとはいえ、実働部隊で女性は自分一人、「いいわね、いくわよ!」と爆薬を投げつけたくなるのも解るような気がします。

 冗談はさておき、「紅一点」なんて言葉がありますが、楽しいものではありません。歴史上の出来事でも、「バウンティ号の叛乱事件」、「アナタハン島の女王事件」とか、隔絶された場所で男性の人数が女性よりも多い場合の陰惨な話が伝わっているので、モテて嬉しいなんて有り得ないとしか言えません。完全に女性が所有物扱い。

 一応「紅一点」の対義語で「黒一点」なる言葉があるそうですが、一般的ではないようです。後宮でも大奥でもハレムでもいいですけど、男性一人、または少数に女性が多数ったって、大変ですよ。だいたい人間は男女ほぼ一対一の比率で生まれてきて、男性が少し多い、――これは病気や不慮の事故での男児の死亡率が自然に組み入れられてのことらしく――、特定の男性が女性を大勢独占したら、あぶれる男性の方が圧倒的に多くなります。一夫多妻と聞いて、男性(LGBTQの方は除く)は自分があぶれる側になるとは誰も想像しないのかしら? だいたい女性は莫迦々々しいと感じるものです。わたしみたいに無気力なのは、皇帝のお眼鏡に適う必要はないから、衣食住を保証されて、毎日本を読んだり、女官仲間と茶飲み話して呑気に暮らせるなら、後宮の端っこで暮らすのも悪くないかもと思っちゃいます。あぶれるどころか、まともに皇帝の顔も拝めない女官が沢山いるくらいの規模の後宮に限りますけど。

 クリント・イーストウッドがアラフォーの頃の映画、ヘンチクリンな邦題を付けられている『白い肌の異常な夜』を観ました。南北戦争中のアメリカ合衆国で、南部の女子寄宿学校が舞台です。女の子が森で茸を採っている場面から始まります。その女の子が木に血塗れの兵隊が立っているのを見付けて悲鳴を上げます。女の子はその兵隊を引きずるようにして一旦身を隠します。南部軍が通り過ぎていき、兵隊は女の子の年齢や名前を訊き、お礼だとキスをします。

 クリント・イーストウッド、十三の女の子にキスしちゃいけないわよ、なんて心の中で呟きつつ、北軍のジョン・マクバーニー伍長、アメリアことエイミーに引きずられながら、森の側のファーンズワース女学校へ連れていかれます。ファーンズワース女学校は南部の農場主の娘が土地を引き継ぎ、寄宿舎付きの学校を始めて、戦争で親元に戻れなかった娘たちとごく少人数で暮らしているのが映像から察せられます。園長先生のマーサ・ファーンズワース、生徒から先生になったエドウィナ、黒人の女中のハリー、生徒の少女たちと女性ばかり。生徒は生真面目そうな子ばかりですが、森に勝手に出掛けたエイミーと一人だけ髪を結わずに下ろしているキャロルが目立ちます。

 エイミーが女の園にいきなり血塗れでヨレヨレの北軍兵士を連れて帰ってきたから、さあ大変。ここは南部、敵兵を匿えない、しかし怪我人を無慈悲に放り出したら神の教えに反するとか、言い争いますが、ここはマーサの判断で怪我の治療を施すことになります。音楽室に寝かせて、傷の応急処置や着替え、清拭なんぞしてやります。マクバーニー伍長は足に銃創、手には火傷と完治に時間が掛かりそうですが、元気になったら出て行ってもらうからと、窓に板を打ち付け、扉には鍵を掛けて隔離状態にします。

 マーサ先生、マクバーニー伍長に触れて、女の感覚が蘇ります。また、一人だけ髪を結わないキャロルは男性に興味津々。学校のベランダだか屋上だったか記憶が曖昧ですが、烏が止まっています。エイミーが「ミスタークロウ」なんて声を掛けても飛び立ちません。どうやら羽を痛めているようだし、足が紐で繋いであります。エイミーは森に入って茸を採ってくるだけじゃなくて、生き物を拾ってきて飼うのが好きなのが解ってきます。亀まで部屋の中に持ち込んでいます。

 ほかの生徒はマクバーニー伍長を迷惑そうに感じていますが、エイミーは何かと伍長に近付こうとします。またキャロルも男性と大人な体験をしたくてちょろちょろしています。

 マーサ先生とエドウィナ先生とハリーが代わる代わる世話をします。伍長は南軍に突き出されるのは嫌だし、治療を受けていて、この学校は居心地が良さそうだと、愛想よい顔をします。皆悪い気はしません。半ば本気にしていきます。

 回復が早くて退屈している伍長にエイミーが勝手に松葉杖を物置から持ち出して、渡しました。マーサ先生、追認するしかありません。キャロルが迫ったり、エドウィナ先生と語り合ったり、伍長は忙しいです。

 南部で残った男性たちが自警団として見回りをしていて、伍長が捕まえられそうになりますが、マーサ先生は庇います。自警団は親の代から知っているし、学校の先生だしと、引き下がります。

 通り掛かりの南軍は女所帯と甘く見て、泊まり込みで護衛をしてやろうとにやつきながら、迫ってきますが、マーサ先生は断固として追い返します。実に肝が据わっていますが、マーサ先生には過去に過ちがありました。

 怪我が治っても、ファーンズワースの農場の管理を手伝う為にここに残ろうと伍長は言い、マーサ先生はそれを受け入れます。申し出順が逆だったような気もします。マーサ先生は病室の鍵を閉めません。

 さて、マクバーニー伍長、エイミーともエドウィナ先生ともキャロルともマーサ先生とも「キス」をしました。キャロルはともかく、三人は自分こそが伍長から愛されていると思い込んでいます。どーすんだ。夜中、生徒たちが寝静まった頃を見澄まして、伍長は部屋を出ます。廊下にいたのはキャロルです。伍長はほかのだれかの部屋に行きたかったのかどうか、でも小娘に騒がれても困ると思ったのか、キャロルの部屋は屋根裏の個室なので、そこに上がっていきます。

 寝付かれないエドウィナ先生、階上で物音がするのに気付いて、キャロルの部屋に行きます。そこで当然展開していた姿を見て半狂乱になり、宥めようと出てきた伍長を突き飛ばします。折角治りかけていたのに階段から落っこちて、伍長は更に大怪我を負います。全員出てきて、またヨレヨレになった伍長を運びます。脛から骨が出ているようで、マーサ先生は右足を切断するしかないと診断し、アヘンチンキで眠らせているうちに実行します。

 目が覚めて、自分の右足がないと気付き、荒れる伍長。マーサ先生の個室に入り、銃と若き日の書簡なんぞ持ち出して、マーサ先生たちを脅します。

「部屋に鍵を掛けなかったのはあんただ。夜にあんたの部屋に行かなかったから俺の足を切ったんだろう!

 今日から俺が支配者だ!」

 暴言を吐き、激した感情のまま、エイミーが見せる亀を床に投げつけ死なせてしまいます。エドウィナ先生が伍長の後を追います。

 二人のいない台所で、マーサ先生は提案します。仲直りの食事会をしましょう、マクバーニー伍長は茸料理が好きだからエイミーが茸を採ってきてと言い、エイミーは肯きます。

「酷いことを言って済みませんでした。

 エドウィナと一緒に出ていきます」

 マクバーニー伍長は言い、盛り付けてある茸を自分の皿に取り、食べます。誰も茸を取りません。エドウィナが茸料理を口に入れようとすると、マーサ先生が食べないで! と警告します。エドウィナ、茸を吐き出します。

 その様子から伍長は……。

 エイミーが飼っていたはずのミスタークロウ、いつの間にか死んでいて、木枠からぶら下がっています。エドウィナは涙に暮れながら、教師に戻るのでしょう。

 モテてたからって調子に乗っちゃいけない、いい顔をするのは本命だけにしておけ、という話ではないですね。『ダーティーハリー』の一作目のちょこっと前のこの作品、伍長さんというにはちと歳食ってるかも知れませんが、充分に男性的な魅力を振り撒くクリント・イーストウッドを文字通り「飼う」のを鑑賞する映画でした。

 図書館でこの映画の原作小説を見付けたので、読むことにしました。

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